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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います(編集中)  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第1章覚醒と別れ

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第6話 計画と期待

自室の扉が閉まる。

先ほどの会話で、父グラニウスは既に諦めていた。

静かな夜。

窓から、冷たい風が流れ込んでくる。

レオンは、一週間前に出会った彼女のことをふと思い出した。

月明かりの下で、何度も何度も、できるようになるまで練習を続けていた女の子のことを。


「ここで俺が諦めたら……」


レオンは考えながら歩き、やがて立ち止まった。

力が抜けるように、椅子へ腰を下ろす。

余命は数日。

ゼムの言葉が、頭から離れない。


『もって数日。長くても一週間』


もう、回復薬も効かない末期の症状だ。

治療師も首を振った。

父は、もう助からない。

誰もがそう思っている。


「……ふざけるな!」


思わず声が漏れた。

グラニウス・ノルディア。

ノルディア領を守り続けた男。

そんな父が、こんな形で終わるはずがない。

レオンは頭を抱える。

ゲームのあるルートでは、バルド山脈から魔物が押し寄せ、王国北部が消滅する。

王都付近まで、魔物が押し寄せる描写があった。

父が死ねば、魔物を食い止められない。

考えろ。

前世の記憶を。

ゲームの知識を。

今は何でもいい。

父を助ける方法を。


【魔力侵食症】


その単語を思い浮かべる。

乙女ゲーム『ノルドレア・ロワイヤル』

セリオスルートでは、長年、回復魔法を使い続けたセリオスが発症する病。

治療法は存在しない。

だが、主人公エリシアの聖属性だけは効果があった。

しかし、今のエリシアは王都にいる。

王都までの往復では、到底七日以内には戻れない距離だ。

まだ、学園にすら入っていない。

魔法だって、使えるかどうかも分からない。

それでは間に合わない。


「カインルートで……」


そこで、レオンは顔を上げた。

確か、エリシアが魔力侵食症になる。

自分自身には聖属性が効かない設定だった。

だから、カインは治療法を探した。


古代文明


時空間魔法


第五のアイテムバッグ


バルド山脈


そして――


「待てよ!」


レオンが立ち上がる。

さらに思い出したこと。

それは、第五のアイテムバッグを探索する前に、必ず発生するイベント。


「商人を探せば……」


ゲームに登場する、あの商人だ。

神出鬼没、いつ現れるか分からない。

どこから来るのかも分からない。

そして、魔力侵食症の進行を抑える薬を売っている。

ゲームでは、購入しなければバッドエンドになり、購入すれば物語が続く。

プレイヤーだった頃、何度も見たイベントだ。


「ある……」


レオンの心臓が高鳴る。


「方法はある」


完全な治療ではない。

だが、時間を稼げる。

時間さえ稼げれば、第五のアイテムバッグを取りに古代遺跡へ行ける。


〝時空間魔法〟


そこへ辿り着けるかもしれない。

レオンは地図を広げた。

ノルディアから、北方にあるバルド山脈の入り口まで、馬を使えば三日。

洞窟内の最短ルートを使えば、半日。

洞窟にある無数の分岐と、転移の魔法陣の攻略方法は、しっかりと覚えている。

洞窟は、一度入れば出られない。

レオンの記憶には、そう残っている。

だが、今の自分は知っている。

第五のアイテムバッグまで続く、最短の道のりを。

そして、帰還に三日。

レオンは、地図に書かれた数字を見つめる。

医師が告げた余命は、長くても一週間。

つまり、七日。

ギリギリ間に合うという保証などない。

普通なら、無理だと言われる。

だが、レオンは昔の父の姿を思い出す。


〝帝国が恐れた男〟


魔物の群れを蹴散らした英雄。

何度死地に立っても、必ず帰ってきた男。


グラニウス・ノルディア


「薬が手に入らなくても……七日。父上なら耐えるかもしれない」


根拠などない。

それでも、今のレオンには信じるしかなかった。

レオンは勢いよく立ち上がり、時計を見る。

時間は、既に深夜だ。

だが関係ない、一刻も無駄にはできない。

レオンは、自室の扉を勢いよく開けた。


「誰かいるか! ゼムを呼んでこい!」


廊下にいた騎士が、慌てて振り返った。


「今すぐにだ! 呼べ!」


慌てふためく騎士に、さらに命じる。


「騎士団長ガレスもだ!」


こうして、ノルディアの運命を変えるための七日間が始まった。

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