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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第3章 宿場町と怪しい商人
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第46話 専属商人

宿場町の門の前走竜車の準備は終わっていた

ノルディア領へ帰る時間だ

春の風が吹く

クロエは自分の竜車の横に立っていた

本来ならここで別れるはずだった

いつも通りまたどこかで会う、それだけの関係

だがレオンが足を止めた


「そうだ」


クロエが振り返る


「何?」


レオンは少し考えそして口を開いた


「専属商人にならないか」


クロエが固まった


「……は?」


予想外だった

レオンは続ける


「お前アイテムバッグ持ってるだろ」


「うん」


「便利だ」


「それだけ?」


「それだけだ」


レオンは即答した

クロエは半眼になる


(絶対違う)


レオンは気付いていない

物凄く怪しい


「取引も信用出来るし情報も集められる」


レオンは頬をかいた


「それに旅も出来る……まぁ便利だ」


また言った

クロエは額を押さえる


「ボクの評価それだけ?」


「優秀な商人だとは思ってる」


「最後に付け足したよね?」


レオンは視線を逸らした

図星だった

後ろでゼムが咳払いをする


「おぼっちゃま」


「何だ」


「もう少し素直に言われては?」


レオンが嫌な顔をした

クロエは嫌な予感がする

ゼムは続けた


「今回の件でクロエ殿が再び狙われる可能性があります」


クロエが固まる

ゼムは構わず続ける


「ですので辺境伯家の専属商人にして」


「ノルディア家の庇護下に置きたいのでしょう?」


数秒間沈黙が流れた

春の風だけが吹く

クロエはゆっくりレオンを見る

レオンは視線を逸らしたままだった


「レオン?」


「……」


「レオン?」


「ゼム」


レオンが低い声を出す


「はい」


「余計な事を言うな」


「失礼しました」


絶対、全く反省していない

クロエは呆然としていた

そういう事だったのかとクロエは確信した

専属商人

便利だから

信用出来るから

それも本当だろう

だが一番の理由は守るため

クロエは思わず笑った


「不器用だね」


「何がだ」


「何でもない」


レオンは本当に分かっていない顔をしていた

クロエは小さく息を吐く

辺境伯家の庇護

安定した仕事

安全な居場所

少し前の自分なら断っていた

誰とも関わらないし誰も信用しない

そう決めていたからだ

だが今は違う

クロエは小さく笑った


「断る理由が無くなっちゃったな」


そして手を差し出す


「専属商人」


レオンが顔を上げる


「引き受けるよ」


一瞬だけレオンが驚いた顔をした

そして小さく笑う


「そうか」


その手を握った


「よろしく」


「あぁよろしく」


それは契約成立だった

するとレオンが続けて言う


「じゃあ行くか」


「どこに?」


「え?領地だけど?」


クロエが固まる


「は?」


「ノルディア領!」


「聞こえてるよ!」


思わず叫んだ


レオンは不思議そうな顔をする


「専属商人だろ?」


「なったばかりだよ!?」


「なら一回来ればいい」


理屈が雑だった

ゼムが苦笑する


「おぼっちゃま」


「何だ」


「普通はもう少し段階を踏みます」


「そうなのか?」


「そうです」


クロエも何度も頷く

本当にその通りだった

結局気付けばクロエも走竜車に乗っていた

断り切れなかったのだ

走竜車が動き出す

宿場町が遠ざかる

クロエは窓の外を見る

不思議だった

少し前まで一人だった

行く場所も帰る場所も無かった

それが今は向かう先がある


ノルディア領の辺境伯家

専属商人としての仕事

クロエは小さく笑う


「変な事になったなぁ」


呟くだが嫌な気分ではなかった

むしろ少しだけ楽しみだった

新しい居場所が

どんな場所なのか

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