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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第3章 宿場町と怪しい商人
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第43話 夢の男爵位

ブロドの膝が震えた

辺境伯

その言葉の重みを知らない者はいない。

ましてや商人なら尚更だった

北部最大の軍事貴族

北の戦神グラニウス・ノルディア

その跡継ぎ

目の前にいたのは、ただの商人の少年ではなかった


「そ、そんな……」


ブロドの声が震える

レオンは何も言わない、ただ静かに見下ろしていた

その視線が逆に恐ろしかった

怒鳴られる方がまだ良かった

ブロドは後退る

一歩、また一歩後ろに下がるうちに背後は壁だった

逃げ場など無い


「ま、待ってくれ……」


声が掠れる


「俺は知らなかったんだ……」


だがレオンは答えない

ブロドは必死に言葉を探した


「そうだ!」


何かを思い付いたように顔を上げる


「依頼主だ!」


レオンの眉が僅かに動いた


「俺は命令されただけなんだ!逆らえなかった!本当だ!」


必死だった

今さら情けも何もない

生き残るためなら何でもする

そんな顔だった


「名前は知らねぇ!だが使いの男は覚えてる!顔も!声も!全部話す!」


しばらく沈黙が続いた

やがてレオンが口を開いた


「ゼム」


「はい」


「衛兵へ引き渡せ」


ブロドの顔から血の気が引いた


「ま、待てくれ!俺は協力する!依頼主の事も話す!」


レオンは冷たく見下ろした


「なら衛兵にも同じ事を話せ」


ブロドが言葉に詰まる

レオンは続けた


「お前が何を知っているかは調べる」


静かな声だった。


「だが、クロエを攫った事実は消えない」


ブロドは崩れるように床へ座り込んだ

終わった。

男爵位も

貴族への道も

娘の夢も

何もかも

全て失った


その時だった屋敷の外から複数の足音が響く

しかもかなりの人数だ


「衛兵です!」


外から怒鳴り声が聞こえる

どうやら騒ぎを聞き付けたらしい

ゼムが小さく頷いた


「ちょうど良かったですな」


しばらくして衛兵達が部屋へ入ってくる

床に転がる傭兵達

縄を解かれたクロエ

そして青ざめたブロド

状況を見た隊長格の男が目を見開いた


「これは一体……」


ゼムが前へ出る


「誘拐事件です」


穏やかな声だった


「こちらの方が主犯となります」


ブロドを指し示す

衛兵達の表情が変わった


「連れて行け」


隊長が命じる

二人の衛兵がブロドを拘束した


「ま、待ってくれ!俺は話す!全部話すから!」


だが誰も答えない

そのまま部屋の外へ連れて行かれる

ブロドは何度も振り返った

だが、レオンは一度も視線を向けなかった

やがて声も遠ざかる

そして静寂が訪れた

終わった……長い夜が

ようやく終わったのだ

クロエは小さく息を吐く

その瞬間、身体がぐらりと揺れた


「おっと」


レオンが肩を支える

足に力が入らない

長時間拘束されていたせいだろう


「だ、大丈夫……」


「全然大丈夫そうに見えない」


即答だった

クロエが頬を膨らませる


「ボクは強いんだぞ」


「知ってる」


レオンは苦笑した


「だから今は素直に頼れ」


クロエが言葉を失う

そして小さく俯いた


「……ありがと」


か細い声だった

レオンは聞こえない振りをする

代わりにゼムへ視線を向けた


「ゼム」


「はい」


「帰ろう」


その言葉にゼムは静かに頭を下げた

窓の外では夜明けが近付いていた

長い夜が終わる

クロエはレオンの背中を見る

何度も逃げようとした

何度も距離を取ろうとした

だがこの背中からだけは目を離せなかった

夜明けの光が差し込む中

三人は屋敷を後にした

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