表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第3章 宿場町と怪しい商人
48/283

第42話 咆哮するグリフォン

レオンは縛られたクロエの前へ出る

庇うように

守るように

ブロドは二人を見つめた

先ほどまでの余裕は消えていた

だがまだ諦めてはいない


「ブロド」


レオンが静かに口を開く


「何故クロエを狙った」


怒鳴るでもない

責め立てるでもない

だがその声には怒りが滲んでいた


「商売敵だからか?ボア肉事業が邪魔になったのか?」


ブロドは鼻で笑う


「違う」


即答だった。


「商売敵?はっ!そんな小せぇ話じゃねぇ」


レオンが眉をひそめる

ブロドはクロエへ視線を向けた

その瞬間クロエの肩が小さく震えた


「お前ら何も知らねぇのか?」


レオンは黙る

クロエも何も言わない

ブロドは乾いた笑いを漏らした


「この世に五つしか存在しないアイテムバッグ」


部屋の空気が変わる


「その一つを持ってる」


「それだけでも異常だ」


レオンは黙って聞いていた


「だから調べた、徹底的にな」


そしてブロドはクロエを指差した


「調べたら出て来たんだよ、一家が処刑された公爵家の生き残りがな」


クロエの身体が震える

レオンの目が細くなった


「理由は王家の紋章だ」


ブロドは吐き捨てるように言う


「他家の紋章を勝手に使っただけでも重罪だ!ましてや王家の紋章だぞ、死刑にならない方がおかしい、反逆者として処刑された……それがお前の家だ」


クロエは俯き拳を強く握る

知られた

最も知られたくなかった過去を

だが、レオンは何も言わなかった

ただ黙って前に立つ

それだけだった


「だから依頼が来た」


ブロドは続ける


「依頼?」


レオンが聞く


「ああ」


ブロドは頷いた。


「誰かは分からねー名前は知らねー」


レオンは睨む


「だが逆らえる相手じゃなかった」


「そのために攫ったのか!?」


「そのためだ!」


ブロドが叫ぶ


「俺だって好きでやった訳じゃねぇ!」


初めて感情を露わにした


「平民だった俺が!何十年も商売して!宿場町を作って!」


ブロドの顔が真っ赤に染まる


「ここまで大きくした!それでも平民だ!」


息が荒い


「だが!男爵位が手に入るはずだった!男爵だぞ!俺の代で終わらねぇ!」


レオンは顔を歪ませた


「娘も!息子も!孫も!貴族になれるんだ!」


欲望

執念

長年抱えてきた願い、それが全てが滲み出ていた

そしてレオンを睨み付ける


「お前らさえいなければ!俺は男爵だったんだ………全部台無しだ!」


叫びが部屋に響く

しばらくの沈黙が続く

やがてレオンが口を開いた


「金や地位が欲しいのは分かる」


ブロドが顔を上げる


「俺も欲しいもののために金を稼いでいる」


静かな声だった

だが真っ直ぐだった


「でも……」


レオンは一歩前へ出る


「そのために誰かを不幸にしていい理由にはならない」


ブロドの顔が歪む

反論しようと口を開く


「綺麗事だ!」


ブロドが怒鳴る


「何も持たない商人のガキに何が分かるってんだ!」


部屋に怒声が響く

その時だったゼムが一歩前へ出る


「ところでブロド殿、一つ付け加えさせて頂きましょう」


ゼムは静かに剣を見せる


「王家は剣に刻まれた紋章の偽りを最も重く見ます」


ブロドが眉をひそめた

だがゼムは穏やかに続ける


「何故なら剣の紋章とは、その者の忠誠と誇りを示すものだからです……故に偽る事は決して許される事はありません」


穏やかな声だった

ブロドがゼムに顔を向ける

ゼムは静かに剣を持ち上げる

そして、剣の柄頭をゆっくりとブロドへ向けた

月明かりを受けた金属が淡く輝く

そこに刻まれていたのは【咆哮するグリフォン】

翼を大きく広げ、天へ向かって吠える守護獣


「……っ」


息が止まる

見間違えるはずがない

北部最大の軍事貴族

ノルディア家の紋章だった

ゼムは穏やかな笑みを崩さない


「先ほど仰いました他家の紋章を偽れば重罪、ましてや王家の紋章なら死罪だと」


ブロドの額から汗が流れる

ゼムは静かに続けた


「長年商売をされてきた貴方様なら、その意味はよくご存知でしょう」


ブロドの唇が震える


「ま、まさか……」


ゼムは優雅に一礼した


「改めましてこちらは、レオン・ノルディア辺境伯閣下にございます」


ブロドの顔から血の気が引いた

辺境伯

王国北部最大の軍事貴族

北の戦神グラニウス・ノルディアの跡継ぎ

男爵位

貴族への道

息子の未来

孫の未来

全てが音を立てて崩れ落ちる

終わった

そう理解した


自分は決して敵に回してはいけない相手を敵に回したのだと

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ