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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第3章 宿場町と怪しい商人
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第35話 約束と嘘

最初の取引から三ヶ月が経ち

レオンは再びグランツの宿場町へ向かっていた

今度は馬車ではないグランツ商会で購入した走竜と竜車だ

二頭の走竜が街道を駆け抜ける

馬車なら六日

走竜なら二日

改めてその価値を実感していた


「良い買い物でしたな」


ゼムが言いレオンは苦笑した


「金貨二百五十枚は痛かったけどな」


「ですが時間は買えました」


「あぁそうだな」


それは間違いない

商売をするなら移動時間は重要だ

特にボア肉のような生鮮品なら尚更だった

レオンは帳簿を開く

兵士改革

ボア肉事業

領地収支

様々な数字が並んでいる

兵士改革による経費削減

年間金貨百二十枚

以前なら討伐の度に死者が出ていた

遺族への補償

新人の補充

装備の買い直し

領地にとって大きな負担だった

だが今は違い

新人は弓と罠と回復

中堅は槍と牽制

ベテランが前衛や盾役

それに帝国製大盾も導入した

その結果、死者はほぼゼロになった

そしてボア肉事業では初回の取引は十頭分だった

それが金貨四十枚で売れたそうだ

今回は二十四頭分で量は倍以上になっている


「順調ですな」


「ああ」


ゼムが言いレオンは頷いた


「まだ小さいけどな」


それでも前進している

何もしなければ増えなかった金だ

レオンは帳簿の最後を見る。

そこに書かれた数字

目標 金貨二万枚

現在 金貨六十五枚


「先は長いな……」


思わず呟きゼムが横を見る


「二万枚ですか、大きな数字ですな」


「まだ全然足りない」


レオンは苦笑した。


「何に使うおつもりで?」


ゼムが聞くがレオンは少し考えるそして


「将来必要になる」


それだけ答えた

ゼムはやれやれと首を横に振った


「相変わらず秘密主義ですな」


「そのうち話すさ」


本当の理由はまだ話せない

六年後までに必ず集める

レオンは静かに決意を固めた


二日後にグランツの宿場町に到着した

いつもの広場そこには既にクロエがいた

灰色の髪迷彩柄のフード付きマント

見慣れた姿だった


「久しぶり」


クロエが手を振る


「久しぶりだな」


レオンも手を上げた

クロエの視線が荷台へ向く

そして少し驚く


「増えてる」


「前に倍以上でもいいって言っただろ?」


「十頭からかなり増えたね」


「今回は二十四頭だ」


クロエは感心したように頷いた。


「凄いね」


「走竜のおかげだな」


輸送量が増え輸送速度も上がり利益も増えた

高い買い物だったが間違ってはいなかった


「じゃあ僕も頑張らないと」


クロエは笑う


「全部売るんだから」


取引は順調だった

前回より早く引き渡せるので長く鮮度がたもつその上量が多いので

王都に以外の別の販売先の開拓、値段の設定など話し合う内容も増える

気付けば夕方になっていた

帳簿を閉じ今回の取引も無事終了した

しばらく互いが沈黙しそしてレオンが口を開いた


「そういえば」


「ん?」


クロエが顔を上げる


「今日は空いてるか?」


クロエが固まった


王都でした食事の約束

前回は商談が長引いて流れた

今日は行けると思っていた

クロエは少し視線を落とした


「……ごめん」


レオンが首を傾げる


「仕事か?」


クロエは少しだけ迷う


「うん、ちょっと予定があるんだ」


レオンはそれ以上聞かなかった


「そうか」


「なら仕方ないな」


クロエは少しだけ申し訳なさそうに笑った


「ごめんね」


「気にするな」


レオンも笑った


「商人は忙しいからな」


クロエは少しだけホッとした


「そういう事」


本当は違い仕事ではない

だけどまだ話せなかった


「じゃあ次だな」


「うん」


クロエも頷く


「次は絶対に行くよ」


「あぁ約束だ」


二人は取引を終えてすぐに別れた



その夜クロエは一人で王都近郊を歩いていた

目的地は無い

正確にはもう存在しない

四年前、大切な家族を失った場所

今では何の変哲もない広場になっている

人々は行き交い

子供達が遊び

誰も気にしていない

クロエだけが覚えていた

クロエは静かにしゃがみ込み花束を置く


「ただいま」


返事は無い

墓は無い

石碑も無い

名前すら残っていない

それでも四年間毎年ここへ来ていた


「お母さんレンに誘われたんだ」


少しだけ笑う


「レンって変な人でさ」


風が吹く誰も答えない

ふと脳裏にレンの顔が浮かぶ


「今日は断っちゃった……ごめんね」


少し沈黙するそして


「でも」


空を見上げる。


「次はちゃんと行くから」


その言葉だけは少し恥ずかしかった

だから誰もいないこの場所でしか言えなかった

クロエはしばらくその場に座り続けた

失った家族を想いながら

そして気付いていなかった

次の約束の日、レオンが断る事になるとは

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