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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: 蛙の子はお玉杓子
第9章 天才王子とダンジョン攻略

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第361話 輪廻樹王

 蔓に覆われた門の向こうは、これまでの区画とは全く異なる場所だった。

 森は途切れ、円形の広場が広がっている。

 周囲を囲むのは、空が見えないほど高く伸びた木々。

 地面には草も花も生えていない。

 黒い土の上を、幾つもの太い根が這っていた。


 広場の中央には、一本の巨木が立っている。

 これまでセルヴァリアで見てきたどの木よりも大きい。

 幹の太さだけでも、小さな屋敷ほどある。

 巨大な枝が周囲へ広がり、その先には緑色の葉と白い花が生い茂っていた。

 レオンは門の前で足を止めた。


 木の幹には、人の顔に似た窪みがある。

 閉じていた二つの目が、ゆっくりと開いた。


 大地が揺れる。

 地面を覆っていた根が持ち上がり、鞭のようにしなった。


 《輪廻樹王リヴァイヴ・トレント》


 《還命樹海セルヴァリア》の最深部を守る魔物。

 原作では、エリシアと攻略対象達が協力して倒したボスだった。

 リヴァイヴ・トレントは、セルヴァリアの森に存在する魔力を吸収し続けている。

 どれだけ傷つけても、森から魔力を得て再生する。

 ゲームでは炎属性の攻撃で再生を弱め、ほかの攻略対象達が一斉に攻撃することで倒していた。


 だが、今のレオンは一人だ。

 炎属性の魔法も使えない。

 それでも、ここまで来る間に再生の仕組みは理解している。


 レオンは《魔脈の片眼鏡》を通して、輪廻樹王の魔力を確認した。

 巨大な幹の内部が、眩しいほどの緑色に輝いている。

 そこから伸びる太い魔力が、地面を這う根へ続いていた。


 根の数は十四本。

 それぞれが、レオンの通ってきた区画へ伸びている。

 さらに幹の真下。

 地中深くへ、ほかの根より遥かに太い主根が伸びていた。


 セルヴァリアの魔脈へ直接つながっている。

 十四の区画から魔力を集める根。

 そして魔脈から直接魔力を吸い上げる主根。

 合わせて十五本。

 その全てが、輪廻樹王へ魔力を送り込んでいた。


「先に根を止める」


 レオンが広場へ足を踏み入れた。

 直後、地面を這っていた根が動いた。

 左右から二本。

 正面から一本。

 背後へ回り込むように、さらに二本が伸びてくる。


 右目に未来の光景が映る。

 左から迫る根を避ければ、正面から別の根に突き上げられる。

 後ろへ下がれば、門の前を根が塞ぐ。


 レオンは前へ踏み込んだ。

 左から振るわれた根を屈んで躱す。

 正面から伸びてきた根を剣で受け流し、その上へ飛び乗った。

 根を足場にして、輪廻樹王へ近づく。

 頭上から巨大な枝が振り下ろされた。


 レオンは根から飛び降り、地面を転がる。

 枝が地面へ叩きつけられ、黒い土が大きく抉れた。

 レオンは立ち上がると同時に、剣を振るった。

 地面を這っていた一本の根が切断される。

 切断面から青い液体が溢れ出した。


 だが、すぐに細い根が何本も伸び、切り離された根とつながっていく。

 僅かな時間で傷が塞がった。


「切るだけでは足りないか」


 レオンは再び剣を構える。

 今度は根を切断した直後、その断面を凍らせた。

 切り口から伸びかけていた細い根が凍りつく。


 再生が止まった。

 片眼鏡で確認すると、その根から輪廻樹王へ流れていた魔力も途切れている。

 倒し方は間違っていない。

 だが、根は残り十四本ある。

 一本ずつ相手にしている間に、輪廻樹王は別の根を使って攻撃してくる。


 広場全体が揺れた。

 黒い土から無数の細い根が飛び出す。

 レオンは氷壁を作った。

 正面から迫った根が氷へ突き刺さる。


 一本。

 二本。

 続けて何本もの根が同じ場所へ衝突し、氷壁へ亀裂が走った。

 レオンは壁を厚くしながら横へ走る。

 その行く手を塞ぐように、巨大な根が地面から突き出した。


 未来視を使う。

 根が現れる場所を先に読み、一歩手前で方向を変える。

 直後、先ほどまで進もうとしていた場所が大きく隆起した。

 レオンは次々と根を避けながら、広場を回った。


 輪廻樹王へつながる十四本の根。

 その位置を片眼鏡で一つずつ確認していく。

 全ての根を同時に止めなければならない。

 だが、最初から広場全体を凍らせれば、輪廻樹王も警戒する。

 地面の下へ根を逃がされれば、追うことが難しくなる。


 レオンは氷柱を放った。

 一本目は輪廻樹王の幹へ。

 二本目は頭上に広がる枝へ。

 三本目は、顔に似た窪みの右目へ向ける。


 氷柱が幹へ突き刺さる。

 だが、深くは入らない。

 輪廻樹王の樹皮は、魔力によって硬化していた。

 右目へ向かった氷柱は、枝によって叩き落とされる。

 輪廻樹王の意識が、レオンへ向いた。


 巨大な腕のような枝が持ち上がる。

 その間にも、足元から細い氷が地面の下へ伸びていた。

 輪廻樹王へつながる根の周囲を、少しずつ囲んでいく。


 表面からは見えない。

 黒い土の下。

 片眼鏡で確認した魔力の流れに沿って、十四本全ての根へ氷を伸ばしていた。

 輪廻樹王が両方の枝を振り下ろす。

 未来視に、左右から押し潰される光景が映った。


 レオンは前へ走った。

 二本の枝が背後で衝突する。

 大きな音と共に、木片が飛び散った。

 レオンは輪廻樹王の幹へ接近する。


 剣へ大量の魔力を流し、横薙ぎに振るった。

 分厚い樹皮が切り裂かれる。

 青い液体が噴き出した。

 幹の奥にある魔力の核が僅かに見える。

 だが、傷口はすぐに塞がり始めた。

 周囲の根から、膨大な魔力が流れ込んでいる。


「まだだ」


 レオンは傷口へ氷柱を放ち、再生を遅らせる。

 輪廻樹王の幹から、無数の枝が伸びてきた。

 剣で斬り払う。

 だが、切断された枝から新しい芽が伸びる。


 数が多過ぎる。

 一本を切れば、二本に増える。

 レオンは後ろへ跳び、距離を取った。

 追うように根が地面を這う。

 右目に、幾つもの未来が映った。


 前へ避ければ根に足を取られる。

 右へ避ければ枝に身体を貫かれる。

 後ろへ下がれば、地面から突き出した根に吹き飛ばされる。

 残された場所は一つしかない。


 レオンは左へ跳んだ。

 頬を枝が掠める。

 浅い傷から血が流れた。

 着地した直後、足元の土が盛り上がる。

 レオンは剣を地面へ突き刺した。


「凍れ」


 土の下へ広げていた氷へ、一気に魔力を流す。

 広場全体が白く染まった。

 輪廻樹王へつながっていた十四本の根が、同時に凍りつく。


 地面の上だけではない。

 土の下まで氷が広がり、根の内部を流れていた魔力を止める。

 輪廻樹王の身体が大きく震えた。

 葉が一斉に落ちる。

 幹へ流れ込んでいた十四本分の魔力が途切れた。

 残るのは、魔脈へ直接つながる主根だけだ。



 輪廻樹王が咆哮する。

 人の声とも、木が軋む音とも違う。

 森全体を震わせるような音だった。

 凍りついた根を無理やり動かそうとする。

 氷へ亀裂が走る。


「長くは持たないか」


 十四本全てを止めても、輪廻樹王は魔脈から魔力を吸い上げ続けている。

 主根を断たなければ、いずれ氷を破壊される。

 レオンは片眼鏡を通し、魔力の流れを追った。

 主根は幹の真下にある。

 地上から剣を届かせることは出来ない。


 レオンは地面へ右手をついた。

 輪廻樹王の足元から、巨大な氷柱を突き上げる。

 地面が割れた。

 氷柱が根を押し退け、輪廻樹王の巨体を僅かに持ち上げる。

 幹の下から、太い主根が露出した。


 人が何人も並ばなければ抱えられないほどの太さ。

 表面には緑色の光が走り、魔脈から膨大な魔力を吸い上げている。

 輪廻樹王が氷柱を砕こうと、枝を振り下ろす。

 レオンは右目に映った未来を確認した。


 氷柱が砕かれるまで、数秒。

 それだけあれば十分だった。

 レオンは主根へ走る。

 剣へありったけの魔力を流した。

 刃が青白い光を放つ。


 最初の一撃。

 分厚い主根の三分の一まで刃が入る。

 輪廻樹王が枝を振るう。

 レオンは剣を引き抜き、横へ跳んだ。


 枝が地面を抉る。

 再び主根へ近づき、同じ場所へ剣を振り下ろす。

 亀裂が広がった。

 主根の傷口から新しい根が伸び始める。


 レオンは傷口を凍らせた。

 再生が止まる。

 輪廻樹王の枝が氷柱へ何度も叩きつけられた。

 一本目の氷柱が砕ける。

 レオンは新しい氷柱を地面から突き上げ、巨体を支え直す。

 主根が再び露出する。


 三度目の斬撃。

 魔力を込めた刃が、主根を完全に切断した。

 輪廻樹王へ流れ込んでいた最後の魔力が途切れる。

 巨体が傾いた。

 だが、まだ倒れない。


 幹の内部には、これまで吸い上げた魔力が蓄えられている。

 輪廻樹王の目がレオンへ向いた。

 全ての枝が持ち上がる。

 残された魔力を使い切るつもりなのか、枝の先へ緑色の光が集まっていく。


 未来視に、無数の枝が広場全体へ降り注ぐ光景が映った。

 避ける場所はない。

 レオンは輪廻樹王の幹へ走った。

 逃げるのではなく、さらに距離を詰める。

 頭上から枝が降り注ぐ。


 氷壁を作る。

 一本目の枝が氷へ突き刺さる。

 続いて二本目。

 三本目。

 氷壁が砕ける前に、新たな氷を重ねる。

 砕けた破片がレオンの頬や腕を切り裂いた。


 それでも足を止めない。

 幹へ残された傷口。

 先ほど剣で切り裂き、氷柱で再生を遅らせていた場所へ辿り着く。

 片眼鏡を通して、その奥を見る。


 輪廻樹王の中心。

 膨大な魔力を蓄えた核が、幹の奥で脈打っている。

 レオンは傷口へ剣を突き刺した。

 刃へ魔力を流す。

 だが、核まで届かない。

 輪廻樹王の樹皮が刃を止めている。


 背後で氷壁が砕ける音がした。

 次の攻撃が来る。

 レオンは剣を握る両手へ力を込めた。

 さらに魔力を流す。

 魔剣の刃が強い光を放つ。


 樹皮が裂ける。

 剣先が幹の奥へ進み、緑色の核へ触れた。

 輪廻樹王が大きく身体を震わせる。

 レオンは最後まで剣を押し込んだ。


 核へ亀裂が走る。

 緑色の光が亀裂から漏れ出す。

 次の瞬間、核が砕けた。

 輪廻樹王の枝が止まる。

 レオンの背後まで迫っていた一本も、触れる寸前で動きを失った。


 幹の中から光が消えていく。

 葉が落ちる。

 白い花が枯れる。

 輪廻樹王の巨体が、ゆっくりと後ろへ傾いた。


 レオンは剣を引き抜き、その場から離れる。

 地面を揺らす音と共に、巨大な樹木が倒れた。

 しばらく待っても、再生する様子はない。

 《魔脈の片眼鏡》にも、魔力の流れは映らなかった。


「終わったか」


 レオンは剣を鞘へ戻した。

 頬と腕に出来た傷へ回復魔法を使う。

 淡い光が傷を塞いでいった。

 輪廻樹王を倒したことで、広場を覆っていた黒い土にも変化が起きている。

 森から集められていた魔力が解放され、地面の下へ戻っていく。


 先ほどまで凍らせていた十四本の根も、魔力を失って枯れ始めた。

 レオンは倒れた輪廻樹王へ近づいた。

 協会へ提出するため、核の欠片と樹皮、白い花を採取する。

 素材はどれも、大型の魔物を討伐した証明になるものだ。


 アイテムバッグへ収めた後、幹の近くに露出した岩へ目を向ける。

 輪廻樹王の主根によって隠されていた場所だ。

 岩の中には、濃い緑色の魔鉱石が幾つも埋まっている。

 片眼鏡を使うと、魔脈から流れる魔力が魔鉱石へ蓄えられていることが分かった。


 最下層の魔鉱石。

 カイルが求めていた物だ。

 レオンは採取用の道具を取り出した。

 魔鉱石だけではなく、周囲の岩と土も一緒に切り取る。

 途中の区画で採取した物とは、色も含まれている魔力量も明らかに違う。

 それぞれ別の箱へ入れ、アイテムバッグへ収めた。


 広場の奥には、地上へ戻るための転移魔法陣が現れていた。

 輪廻樹王を倒した者は、そこから外へ出られるのだろう。

 だが、レオンはすぐに魔法陣へ向かわなかった。


「杖はどこにある?」


 原作では、この最深部で《還命の杖》を手に入れることが出来た。

 しかし、広場を見渡しても杖はない。

 倒れた輪廻樹王の中にも見当たらなかった。

 ボスを倒せば自動的に手に入る物ではないらしい。


 レオンは片眼鏡を使い、広場全体を見直した。

 転移魔法陣。

 枯れた根。

 周囲を囲む木々。

 その中で、一か所だけ魔力の流れが不自然な場所があった。


 輪廻樹王が立っていた場所の奥。

 太い根と岩に覆われた壁。

 壁の向こうへ、僅かな魔力が流れている。

 レオンは枯れた根を切り払い、岩へ近づいた。


 表面の土を手で払う。

 その下から、小さな窪みが現れた。

 窪みの中には、枯れた芽が一本だけ残っている。


 入口の魔石とは違う。

 魔法陣も、鍵穴もない。

 ただ、完全に枯れた小さな芽があるだけだった。

 レオンは原作の光景を思い出す。

 エリシアが枯れた植物へ回復魔法を使う場面。

 ゲームでは短い映像だった。


 何のために回復魔法を使ったのかまでは、詳しく描かれていなかった。

 レオンは枯れた芽へ手を触れた。

 回復魔法を使う。

 淡い光が芽を包んだ。

 だが、何も起こらない。


 入口の門を開いた時よりも、多くの魔力を流す。

 枯れた芽が僅かに動いた。

 まだ足りない。

 レオンはさらに回復魔法を強めた。

 大量の魔力が芽へ流れ込む。

 茶色く枯れていた茎へ、少しずつ緑色が戻っていく。

 小さな葉が開いた。


 根が岩の内部へ伸びる。

 芽は瞬く間に成長し、一本の白い花を咲かせた。

 直後、壁全体へ魔法陣が浮かび上がる。

 岩が左右へ分かれ、隠されていた通路が現れた。


「ここか」


 レオンは通路へ入った。

 奥には、小さな石室がある。

 壁や床に苔はなく、長い間閉ざされていたとは思えないほど綺麗だった。

 石室の中央には、一本の杖が浮かんでいる。


 白い木から作られた杖。

 先端には、淡い緑色の魔石が埋め込まれていた。


 《還命の杖》


 半径五百メートル以内にいる、全ての生物へ回復魔法を発動する魔法具。

 一度に大勢の傷を治療出来る。

 ただし、味方だけを選ぶことは出来ない。

 効果範囲に敵がいれば、その傷も同時に治してしまう。


 欠損した腕や脚を元に戻すことは出来ない。

 病気を治すことも出来ない。

 それでも、戦場や魔物の氾濫で大勢の負傷者が出た時には、他に代えられない力を持つ。

 原作では、魔力を完全に蓄えた状態なら二十回ほど使用出来た。


 だが、一度の使用で消費する魔力が大きい。

 通常の魔法使いが魔力を補充しながら使う場合、一日に二回程度が限界だった。


 レオンは杖を手に取った。

 先端の魔石が淡く光る。

 内部には、ほとんど魔力が残っていない。

 一度使うにも、先に魔力を蓄える必要がある。

 レオンは少しずつ杖へ魔力を流した。

 空だった魔石の一部が、緑色の光で満たされていく。

 一度に大量の魔力を流して壊すわけにはいかない。

 内部の構造を確かめながら、慎重に魔力を注ぐ。


 完全に満たすには時間がかかる。

 ここで全て補充する必要はない。

 レオンは魔力を流すのを止めた。


 《還命の杖》を布で包み、アイテムバッグへ収める。

 目的の物は手に入れた。

 石室を出ると、成長した白い花が静かに揺れていた。

 隠し扉が閉じる様子はない。

 次にここまで辿り着いた者が、同じ場所を見つける可能性はある。

 だが、枯れた芽へ大量の回復魔法を流さなければ、扉は開かない。

 輪廻樹王を倒すだけでは、《還命の杖》の存在に気づくことも出来なかっただろう。


 レオンは広場の奥にある転移魔法陣へ向かった。

 中央へ立つ。

 魔法陣が光を放つ。

 森の景色が白い光に包まれた。


 次に視界が戻った時、レオンはセルヴァリアの入口前に立っていた。

 背後には、最初に回復魔法で開いた巨大な門がある。

 門は閉ざされていた。


 入口近くに建てられた詰所から、協会職員が走ってくる。


「レンさん!」


 レオンの姿を確認し、職員が目を見開く。


「ご無事だったのですね。お一人で入られてから、三日が過ぎています」


「三日か」


 森の中では空の明るさが変わっていた。

 だが、実際の時間までは分からなかった。


「どこまで進まれたのですか?」


「最深部までだ」


 職員の動きが止まった。


「……最深部?」


「ああ。輪廻樹王を倒した」


 レオンはアイテムバッグではなく、腰へ下げた素材袋から白い花を取り出した。

 輪廻樹王の枝に咲いていた花。

 最深部のボスを倒した証明となる素材だ。


 職員は両手で花を受け取り、言葉を失った。

 レオンは続けて、布へ包んでいた二枚の冒険者証を差し出す。


「途中で、二人の冒険者を見つけた」


 職員の表情が変わる。


「生存は?」


「していなかった。魔物に身体を操られていた」


「……分かりました。こちらで身元を確認します」


 職員は冒険者証を大切そうに受け取った。


「討伐素材や詳しい記録については、ミストレアの協会本部で提出します」


「はい。すぐに連絡を送ります」


 レオンはセルヴァリアの門を振り返った。

 原作で攻略対象とエリシアが力を合わせて進んだダンジョン。

 それを一人で攻略することが出来た。

 魔鉱石も手に入れた。

 《還命の杖》も見つけた。


 残るダンジョンは、一つ。

 空へ届く巨大な魔導塔。

 その最奥に《叡智の首飾り》が眠る、S級ダンジョン。


 《天環魔導塔アストラリオン》。


 だが、今のレオンにはまだ入る資格がなかった。

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