表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第3章 宿場町と怪しい商人
38/291

第32話 怪しい商人

「だから金を出せって言ってんだろ!」


「荷物も置いていけ!」


王都の裏路地から怒鳴り声が響く

レオンは足を止めた

面倒事だ普通なら無視する

だがレオンの目が見開かれた

路地の奥で三人の男に囲まれている小柄な人物

灰色の髪

大きな荷袋

そして迷彩柄のフード付きマント

前世で何度も乙女ゲームの立ち絵で見た

怪しい商人がそこにいた


「本当にいたのか……」


レオンは思わず呟く

父を救えたかもしれない人物

ゲームで何度も見た重要人物

その本人が目の前にいた

しかも絡まれている

レオンは迷わず路地へ入った


「おい」


男達が振り返る


「あ?」


「その辺でやめとけ」


男達の顔が険しくなる


「なんだテメェ」


「関係ねぇだろ」


「いや!ある」


レオンは一歩前へ出た


「迷惑そうだ」


男の一人が殴りかかるが大振りのパンチなのが遅い

レオンは半歩避けそのまま足を払った

男は派手に転んだ

残り二人も顔色を変えた


「まだやるか?」


レオンは静かに言う

三人は顔を見合わせそして


「ちっ!」


慌てて逃げていった

路地裏には静寂が戻る

灰色の髪の少年がレオンを見る


「助かったー」


声は少年そのものだった


「怪我は?」


「ないよ」


短い返事

警戒しているのが分かる

レオンは苦笑した


「そんなに警戒するなよ」


「商人だからね」


即答だった

しばらく沈黙が流れる

やがて少年が口を開く


「君は?」


「レン」


レオンは偽名を名乗った先程クラリスに言ったのが良かった

すぐに偽名がでていた

怪しい商人は貴族嫌いらしい

辺境伯だと名乗らない方が良い


「レンか」


少年は頷きそしてゲームでいつもと同じ言葉を言った


「僕は怪しい商人」


レオンは内心で苦笑した


「そうか、怪しい商人か……なら商売の話をしないか?」


疑いの目を向けながら怪しい商売はコクリと頷いた

二人は近くの食堂へ移動した

奥の席へ腰を下ろすと、レオンは早速本題を切り出した


「早速だが俺は北で仕事をしている」


辺境伯領とは言わないだが嘘でもない


「そこで獲れるレッドボアの肉を売りたい」


クロエは興味を示したようだった


「レッドボア?」


「王都だと高級品だろ?」


「そうだね」


クロエは素直に頷く


「普通はあまり流通しない」


「魔物だからか?」


「それもある」


クロエは指を一本立てた


「一番の問題は輸送」


「輸送か」


「うん」


クロエはテーブルに指で線を描いた。


「北から王都まで馬車だと十日くらい?」


「そのくらいだな」


「生肉は厳しい」


レオンも頷く

それは分かっていただが販路を探していたのだ


「燻製や塩漬けは?」


クロエは首を横に振る。


「レッドボアは臭みが強くなる」


「やっぱりか」


レオンは苦笑した

ノルディア領では常識だった

だが王都の商人も同じ結論らしい

クロエは少し考えるそして口を開いた


「まぁ魔法だったら出来るよ?」


「魔法?」


「うん」


「ノルディアの領主が昔、魔法の氷を作ってたみたいなんだ、それを使って王都の祭りの日に届けていたらしいんだ」


レオンはノルディアの前の領主つまり父グラニウスを思い出した

確かにその通りだったこの前まで知らなかったが謎の商人は知ってた様だ


「その時のレッドボアの肉は一頭金額三枚で取引されていたとか何とか」


「ボア肉が金額三枚!?」


「まぁ辺境伯の領主が絡んでいるからその辺が妥当だと思うけどね」


確かに辺境伯と言う位は貴族の階級の中でも決して低くはない

その領主が絡んだ商売はそれなりの金額ではないと泊がつかない

レオンは少し考えた口を開いた


「魔法なら大丈夫かもしれない」


「どうして?」


「知り合いに魔法陣を研究している奴が居るそいつに頼むば出来るかもしれない」


レオンはゼムの顔を思い浮かべた

毎日夜中にゼムとの魔法陣や魔法の研究は今も行われていたのだ


「じゃ……あとは量だね!最初は少なくていいと思うよ」


クロエは即答した


「むしろ少ない方が高く売れる」


レオンは感心する

供給を絞り価値を上げる

商売の基本だ


「なるほど」


「ただ問題は受け渡し場所」


クロエは続ける


「北まで行く商人は少ない」


「そうなのか?」


「魔物が多いからね」


レオンは納得した


ノルディア領では見慣れた光景だが、他領から見れば危険地帯だクロエは地図を思い浮かべるように視線を上げた


「グランツの宿場町が良いと思う」


「グランツ?」


「王都と北の中間地点そこでの受け渡し」


レオンは少し考える

悪くないむしろかなり良い


「確かに丁度いいな」


「でしょ?」


クロエは少し得意そうに笑った


「僕もそこなら寄りやすい」


本当は違う

ノルディア領へ近付きたくないだけだ

だがレオンは知らない


「分かった」


レオンは頷いた


「最初は試験的にやろう」


「うん」


「利益が出るなら続ける」


「それがいいと思う」


クロエも頷く

商談はこれでまとまったていた

予想以上に早かった

レオンは茶を飲みながらふと思う


(やっぱり有能だな)


ゲームではただの怪しい商人だった

だが実際に話してみると違う

輸送

販路

需要

利益

全てを理解している


レオンが欲しかったのはまさにこういう人材だった

クロエはそんな視線に気付かず紅茶を口に運ぶ

そして小さく呟いた


「レンって北で商売してる割には詳しいね」


「まあな」


レオンは曖昧に笑った

辺境伯領の領地経営をしているとは言えない

だから適当に誤魔化す

クロエも深くは追及しなかった

まだお互い探り合いの段階だった


商談も終わり店の外にでると停まる竜車が見える

それを引くのは二頭の走竜は立派な個体だった

レオンは思わず目を向ける


「走竜か……」


怪しい商人が振り返る


「欲しいの?」


「まあな」


レオンは苦笑した


「便利そうだ」


ノルディアからグランツまで六日

走竜なら二日

今後取引をするなら欲しい

すると怪しい商人の目が少しだけ輝いた


「知り合いがいるんだけど……」


「知り合い?」


「僕が最初に取引した商人」


レオンは首を傾げる


「走竜も扱ってるの……紹介しようか?」


思わぬ申し出だった


「いいのか?」


「うん」


怪しい商人は頷く


「助けてもらったお礼」


本人も気付いていないのだがら

また会う理由が欲しかっただった


「ありがとう」


レオンは素直に頭を下げた


「助かる」


すると怪しい商人は少し笑った


「じゃあ……宿場町でご飯奢ってね」


レオンも笑う


「それだけでいいのか?」


「うん」


「分かった」


「約束だ」


「約束ね」


「今日はいい話ができた、ありがとう怪しい商人」


そう言い、レオンが立ち去ろうとした時だった

後ろから声が掛かる


「待って」


振り返ると怪しい商人は少し迷っていた

そして、意を決したように口を開く


「クロエ」


「ん?」


「僕の名前」


レオンは少し驚く

さっきまで怪しい商人としか名乗らなかったからだ

原作でも何度聞いても答えなかった名前だった


「クロエって言うんだ」


レオンは笑った


「そうか……よろしく、クロエ!」


クロエは少しだけ嬉しそうに笑った


「うん」


夕陽が王都を照らしていた

こうしてレオンは怪しい商人――クロエと出会った

そして数ヶ月後にグランツの宿場町で再会する約束を交わしたのだった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ