↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います(編集中)  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第9章 天才王子とダンジョン攻略

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

357/365

第326話 魔力を喰らう魔石

 四体の魔導人形が同時に動き出した。

 正面から二体。

 左右から一体ずつ。

 さらに頭上では、八つの浮遊魔法具へ赤い光が集まっている。


 レオンは右目に映る未来を見ながら、魔導人形の群れへ向かって走った。

 正面にいた魔導人形が剣を振り上げる。

 その剣が振り下ろされるより早く、レオンは右へ身体を滑らせた。


 直後、背後から炎の弾が飛んでくる。

 レオンは避けない。

 未来で、その炎が自分へ当たらないことを知っていた。


 炎の弾がレオンの肩の横を通り過ぎ、正面にいた魔導人形の胸へ直撃する。

 爆発音が広間へ響いた。

 魔導人形の身体が大きく揺らぐ。

 レオンは、その横を通り抜けた。


 左から二体目が迫る。

 横薙ぎに振るわれた剣を低い姿勢で避け、魔導人形の足元へ滑り込む。

 レオンの頭上で、魔導人形の剣と炎の弾が交差した。

 炎を受けた剣が大きく弾かれ、その刃が別の魔導人形の肩へ食い込む。


 魔導人形同士が衝突し、動きを止めた。

 浮遊魔法具に、攻撃する相手を選ぶだけの判断力はない。

 侵入者へ向けて、決められた攻撃を繰り返しているだけだ。

 ならば、その攻撃を利用すればいい。


 レオンは床を蹴った。

 中央の魔石まで、あと十歩。

 頭上に浮かぶ八つの魔法具が向きを変える。

 赤い魔法陣がレオンへ向けられた。


 右目に複数の未来が映る。

 一歩目で右から炎。

 三歩目で正面と左。

 五歩目で後方から二発。

 その直後、残る三つが逃げ道を塞ぐ。


 右目の奥に鈍い痛みが残っている。

 だが、視界は滲んでいない。

 この程度なら、まだ使える。


 レオンは右へ一歩踏み込み、最初の炎を避けた。

 そのまま正面へ二歩。

 左右から飛んできた炎の間へ身体を滑り込ませる。

 熱が両側から迫り、旅装の袖を焦がした。

 それでも足は止めない。


 後方から放たれた二つの炎が背中へ迫る。

 レオンは急に進む方向を変え、近くにいた魔導人形へ向かった。

 魔導人形が迎え撃つように剣を振り上げる。

 レオンは剣を振るわず、その足元へ飛び込んだ。

 二つの炎が魔導人形の背中へ直撃する。


 大きな爆発が起こり、魔導人形の身体が前へ傾いた。

 レオンは倒れかけた魔導人形の膝へ足を乗せる。

 次に肩を踏み台として、さらに高く跳んだ。


 中央に浮かぶ青い魔石が目の前へ迫る。

 その瞬間、残る三つの浮遊魔法具から炎が放たれた。


 右。

 左。

 そして正面。


 空中では方向を変えられない。

 三方向から迫る炎を避ける場所もなかった。

 だが、それも未来で見ている。


 レオンは剣を振り上げ、僅かに魔力を流した。

 刀身に刻まれた無属性の魔法陣が白く輝く。

 床から離れたことで、魔力を奪われる感覚はなかった。

 アルマが刻んだ魔法陣がレオンの魔力を刀身全体へ流し、銀色の刃が淡い光を纏う。


 レオンは正面から迫る炎を斬った。

 炎の塊が左右へ分かれる。

 二つに割れた炎が、横から迫っていた炎と衝突した。

 三つの炎が空中で弾け、爆風が広がる。

 その爆風が、レオンの背中を押した。


 青い魔石へ向かう速度が上がる。

 レオンは両手で剣を握った。

 そして中央の魔石へ振り下ろす。

 強化された刃が、青い魔石の表面へ食い込んだ。


 硬い。


 剣が半ばまで入ったところで止まる。

 青い魔石の内部から、これまでに吸収した魔力が溢れ出した。

 床に刻まれた巨大な魔法陣が強く輝く。


 四体の魔導人形が一斉にレオンへ顔を向けた。

 さらに魔力を吸収し、魔石を守ろうとしている。

 レオンは剣へ流す魔力を増やした。

 刀身の魔法陣から放たれる光が一段と強くなる。


「壊れろ」


 レオンが剣を押し込む。

 青い魔石に亀裂が走った。

 小さな亀裂は瞬く間に全体へ広がり、内部の光が激しく明滅する。


 次の瞬間、青い魔石が砕けた。

 大量の破片が広間へ飛び散る。

 床の魔法陣から光が消え、魔力を奪われる感覚もなくなった。


 四体の魔導人形が動きを止める。

 頭上に浮かんでいた魔法具からも赤い光が消えた。

 それらは支えを失い、一つずつ床へ落ちていく。

 レオンも空中から落下する。

 床へ着地すると同時に膝を曲げ、衝撃を逃がした。


 広間に静寂が戻る。

 先ほどまで動いていた魔導人形は、糸を切られた人形のように立ち尽くしていた。

 レオンは剣を振り、刀身へ付着した青い破片を落とした。

 アルマが刻んだ魔法陣へ目を向ける。

 これまでより多く魔力を流したが、どこにも異常はない。

 魔法陣も刀身も壊れていなかった。


「流石だな」


 測定用の剣を壊した時とは違う。

 この剣なら、まだ多くの魔力を流せる。

 どこまで耐えられるのか試してみたい気持ちはあったが、今は迷宮の攻略中だ。

 壊れないと分かっていても、無闇に魔力を流す必要はない。


 レオンは砕けた青い魔石の破片を拾った。

 中央にあった魔石には、魔力を吸収して蓄える性質がある。

 破壊したことで価値は下がっているだろうが、それでも珍しい素材には違いない。

 大きな破片だけを選び、アイテムバッグへ収める。


 続いて魔導人形へ近づいた。

 胸部を調べると、中から拳ほどの魔石が見つかった。

 最初に倒した魔導人形より大きい。

 四体分の魔石と、床へ落ちた浮遊魔法具もアイテムバッグへ入れる。

 壊れていても、魔法具に使われている金属や魔石は売却出来る。


「これだけでも、それなりの金にはなりそうだな」


 B級ダンジョンの素材だけあり、街の周辺で倒した魔物とは質が違う。

 アルカナ迷宮を完全攻略する頃には、かなりの量になるはずだ。

 素材を回収し終えると、広間の奥から低い音が聞こえた。


 壁の一部が左右へ開いていく。

 その先に現れたのは、地下へ続く階段だった。

 レオンは階段の前まで進み、右目を閉じた。

 鈍い痛みはまだ残っている。

 指先で瞼の上を軽く押さえる。

 以前なら、これほど連続して未来を見れば、立っていることさえ難しいほどの頭痛に襲われていた。

 今は僅かな痛みと疲労があるだけだ。

 少し休めば、すぐに治まるだろう。


 レオンは壁際へ腰を下ろした。

 アイテムバッグから水と干し肉を取り出し、簡単に食事を済ませる。

 その間も周囲への警戒は怠らない。

 動きを止めた魔導人形が再び動く可能性もある。

 だが、何も起きなかった。


 十分ほど休むと、右目の痛みはほとんど消えていた。

 レオンは立ち上がり、地下へ続く階段を下り始める。

 階段は長く続いていた。

 壁の魔石が放つ青い光が、下へ進むほど弱くなっていく。


 やがて階段が終わり、広い通路へ出た。

 先ほどまでの区画とは、明らかに造りが違う。

 壁や床は黒い石で作られ、至る所に細い魔法陣が刻まれている。

 通路は少し進んだ先で、三方向へ分かれていた。

 レオンは足を止める。


 ゲームのアルカナ迷宮にも分かれ道はあった。

 正しい道を選ばなければ同じ場所へ戻され、攻略に時間が掛かる仕組みだった。

 だが、記憶にある迷宮と、目の前の迷宮では形が違う。

 ゲームでは画面に収まるよう簡略化されていたのだろう。

 今の記憶だけで正しい道を選ぶことは出来ない。

 レオンは右目へ意識を集中させようとして、やめた。

 魔眼を使っても、見られるのは数秒先だ。

 長い通路の先までは確認出来ない。


 レオンは三つの通路を順番に調べる。

 左の通路からは、僅かに風が流れていた。

 正面の通路には、多くの足跡が残っている。

 右の通路には足跡がない代わりに、壁の魔法陣が強く光っていた。


「正面か」


 迷宮へ入った冒険者の多くが選んだ道なのだろう。

 レオンが正面の通路へ足を向けた、その時だった。

 遠くから何かが爆発する音が響いた。


 迷宮全体が僅かに揺れる。

 天井から細かな石の欠片が落ちてきた。

 レオンは正面の通路を見る。

 音が聞こえたのは、右側だった。

 足跡のない通路の奥。

 再び爆発音が響く。

 今度は先ほどより近い。


 続いて、何か重い物が壁へ衝突するような音が聞こえた。

 魔物同士が戦っている可能性もある。

 だが、それにしては爆発の間隔が一定ではない。

 誰かが魔法を使って戦っているように聞こえた。


 アルカナ迷宮への単独挑戦を許可されたのは、自分だけではないらしい。

 レオンは正面の通路から右の通路へ視線を移した。

 完全攻略だけを考えるなら、余計な戦いを避けて正面へ進むべきだ。

 しかし、戦っている冒険者が追い詰められている可能性もある。


 三度目の爆発音が響いた。

 その直後、微かに人の声が聞こえる。

 レオンは右の通路へ向かって走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。