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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第3章 宿場町と怪しい商人
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第27話 王都への出発

グラニウス・ノルディアが亡くなってから一年三ヶ月

ノルディア領は少しずつ変わり始めていた

騎士団改革は軌道に乗り

レッドボア討伐の死者は激減し新人兵達も着実に育っていた

街には以前より活気が戻り始めていた

そしてレオン・ノルディアもまた変わっていた

辺境伯家の自室

喪が明けたレオンは王都へ向かうための正装へ着替えていた

ふと鏡を見る

そこに映る自分の姿に少しだけ驚いた

一年前より明らかに手足と長くなり背が伸びていた

毎朝の鍛錬と騎士団との訓練それから討伐への参加。

その積み重ねで身体は引き締まり、細身ながらもしっかりと筋肉が付いていた

十三歳としては恵まれた体格だろう

だが父とは全く違う

グラニウス・ノルディア

北の戦神

見上げるほど大きな身体で

分厚い肩と岩のような腕

黙って立つだけで周囲を圧倒する威圧感

武人という言葉がそのまま人の形になったような男だった

対してレオンは違い細身だった

同じ鎧を着ても父のような迫力は出ないだろう

武人というよりも御曹司に見えるかもしれない

それでも構わなかった

自分は父のようにはなれない

それは一年前から分かり切っている

ならば自分のやり方で領地を守ればいい

コンコンと扉が叩かれた


「おぼっちゃま」


自室に入ってきたのはゼムだった

ノルディア家に三代仕える老執事だ


「馬車の準備が整いました」


「ああ」


レオンは頷きそして部屋を出た

だが向かう先は正門ではない

出発前に一つだけ行く場所があった

ノルディア家の墓所

父グラニウスが眠る場所だった

丘へ続く道を歩く、見慣れた景色に見慣れた空

一年前ここへ帰って来た時にはもう遅かった

あと半日たった半日

その差で父に会うことは叶わなかった

今でも時々夢に見る

もし間に合っていたら

もし治療法が見つかっていたら

そんな「もし」を想像していた

だが現実は変わらない

やがて墓所が見えてくる

石造りの墓碑に周囲を埋め尽くす花々

レオンは前で立ち止まった


「……相変わらずだな」


思わず呟く

花が枯れていない

もちろん領民達が新しく供えた花もある

だがそれだけではない

一年前の葬儀の日に供えられた花の一部が未だに瑞々しさを保っていた

花弁は鮮やかで茎も青々としている

普通ではあり得ない

後ろからゼムがやって来る。


「不思議ですな」


「ああ」


レオンも頷いた

雨も雪も降った

季節も巡った

それなのに殆どは枯れない


「領民達は北の戦神様が見守っておられると言っています」


ゼムが苦笑しレオンも思わず笑った

ルーカス率いる使節団が【北の戦神】を領内で広めていたのだ

そんな事を父が聞いたら困った顔をしそうだ

英雄扱いされるのは好きではなかったからだ

レオンはポツリと呟いた


「父上らしいな」


花束を供え墓石へ手を置く

冷たい感触が掌へ伝わる


「父上」


静かに目を閉じる

返事はない

それでも言葉は自然と零れた


「行って参ります」


現領主が亡くなれば1年間喪に付きその後子息が任命される

つまり王都に行くのは正式な辺境伯の任命式だ

王都はゲームの舞台で未来の攻略対象達が集まる場所でもあった

乙女ゲームのヒロインも悪役令嬢のクラリスもいる

未来を変えるための新たな一歩だった


「まだ未熟ですが」


レオンは小さく笑う


「領地は守ってみせます」


風が吹き花が揺れる

まるで父上が返事をするように

レオンは踵を返し丘を下る

その先にはノルディア邸がが見える

守るべき領地

守るべき人々

そしてこれから向かう王都で新たな運命が待つ場所へ向けてレオンは歩き出した

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