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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第2章 新しい領主と皇子
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間章 鍛えるべき力(後編)



翌朝まだ日も昇りきらない時間

二人だけでレオンとルーカスはノルディア領の森へ入っていた

護衛も騎士も連れてはいない

もっとも、ルーカスが「訓練だ」と言い張り、レオンも止めるのを諦めた結果である


「しかし本当に来たんだな」


レオンが呆れたように言う

するとルーカスは当然のような顔をした


「来ると言っただろう」


「言ったな」


「だから来た」


「そうか」


会話になっているようでなっていない

だが不思議と嫌ではなかった

森の中を進みしばらくするとルーカスが足を止めた


「いるな」


「ああ」


レオンも気配を感じていた

茂みの向こう大型の魔物の気配がした


「ブォォォォォォッ!!」


レッドボアが飛び出した


巨大な牙に分厚い皮膚

新人騎士なら逃げ出す相手だ

だが二人は臆する事なく剣を構えた


「行くぞ」


ルーカスが風が纏う


「右を取る」


「なら俺は左だ」


それだけだった作戦会議はない

だが十分だった

一体のレッドボアがルーカスに突進する

地面が揺れる殺気が放たれる


もう一体もレオン目かけて突進してきた

レオンは右目に魔力を未来が見を見た

一直線だがその後右へ向きを変える映像が流れた


「ルーカス殿!下がれ」


レオンが叫ぶとルーカスは即座に反応した

剣を引き半歩下がる

左側のボアの牙が空を切った


「助かった」


短い言葉だがその声には驚きが混じっていた

レオンはその隙に側面へ回り込み脚へ魔力を流し身体強化をする


1匹のボアの前脚を斬るが浅い

だが十分だった

1匹のボアが体勢が崩れる


「今だ!」


レオンが叫びルーカスが踏み込む

風の身体強化に風属性の付与それ帝国式剣術は速かった

風を纏った斬撃の一撃を一体のボアに叩き込む

ザシュッ!!と音と共に鮮血が舞う

一体のボアが首が飛んだ


しかしもう一体のボアが暴れ牙を振りかぶっていた


「下がれ!」


牙が左から振り上げられる映像の未来が見えた

レオンは反射的に叫ぶ

ルーカスが鮮やかに躱す

ボアの一撃は紙一重だった

その瞬間ルーカスは気付いた

迷わなかった

レオンが声を上げ自分が動く

ただそれだけでよかった

なぜか次に何をするべきか分かる


レオンが左へ回りルーカスは右へ

言葉を発せず自然に動いた

考える必要すらない


「レオン!」


今度はルーカスが叫ぶ

レオンが反応し未来が見えたのだが

それより先に身体が動いた

横へ飛ぶその瞬間

ルーカスの風刃がレオンの居た位置を通過する


ズバァァァッ!!


レッドボアの肩口が裂け怯む

一瞬の隙が生まれた


「今だ!」


二人の声が重なった

レオンが脚を狙いルーカスがレオンを飛び越し上から斬撃を与えた

体勢が崩しながら風を纏った剣が首筋へ叩き込まれた。

轟音と共にレッドボアが倒れた


森を戦闘が終わった知らせかの様に風が吹き抜けた


「終わったな」


レオンが息を吐く


「ああ」


ルーカスも剣を収めた

しばらく倒れたボアを見つめる

やがてルーカスが呟いた


「妙だな」


「何がだ?」


レオンが首を傾げる

ルーカスは少し考え込んだ


「楽だった」


「ボア狩りがか?」


「ああ」


レッドボアにしては大型個体でしかも二体だった

決して弱くはないむしろ普通ならもっと時間が掛かる


「俺一人でも倒せた」


ルーカスは続ける


「だが今日の方が速かった」


レオンは苦笑する


「俺が隙を作ったからだろう」


しかしルーカスは首を横に振った


「違う」


断言だった。


「隙だけではない」


しばらく言葉を探し答えた


「動きやすかった」


それが一番近かったのだろう


「お前がどこにいるか分かるし次に何をするか分かる」


少し間が空きルーカスがレオンに向き直す


「だから迷わず剣を振れる」


帝国でも数え切れないほど模擬戦をした

騎士団とも戦った

だがこんな感覚は初めてだった

ルーカスはその様に思っていた


「不思議だな」


ルーカスが笑う。


「俺まで強くなった気分だ」


レオンも少し笑う


「気分じゃないだろ」


「ああ」


ルーカスは頷く


「確かに強くなっている」


風が吹き銀髪が揺れた

そして、ルーカスは真っ直ぐレオンを見る


「レオン」


「なんだ?」


「今でも十分強い」


レオンは黙って聞く


「だが連携を鍛えればもっと強くなれる」


「お前とならな」


その言葉に嘘はなかった

帝国皇子ルーカス・ヴァルハイト

その男が心からそう思っているのが分かった


「それは光栄だな」


レオンが笑う

するとルーカスは少し呆れたような顔をした


「だからだ」


「?」


「ルーカス殿はやめろ」


レオンは思わず吹き出した


「結局そこに戻るのか」


「ああ」


ルーカスは当然のように頷く。


「耳が痒い」


「便利な言葉だな」


「事実だ」


真顔だった

しばらく見つめ合いレオンは苦笑する


「分かったよ」


初めて敬称を外した


「ルーカス」


その瞬間ルーカスは満足そうに笑った


「ああ」


帝国皇子と辺境伯家嫡男

国も立場も違う

だがこの日、二人は確かに友人となったのだった

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