第271話 未来への和平
エピソード300話になりました。
読んでいただき、ありがとうございます。
ブックマークも200人を超え、リアクションも2000を超えました。
評価も50人と、とても多くの人に読んでもらい嬉しい限りです。
6年前から物語事態は考えていましたが、性格的に毎日投稿とか出来ないだろうと思い執筆しなかったのですが、皆様の感想やリアクションを励みに書かせて頂いています。
本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
皇帝の言葉を合図に、一人の文官が前へ進み出た。
両手には、一枚の羊皮紙が抱えられている。
「こちらが、新たな和平条約でございます」
静かな声が、謁見の間へ響く。
文官は羊皮紙を広げ、条約の内容を読み上げ始めた。
「第一条。
王国ノルディア辺境伯領と帝国は、互いの領土を尊重し、不可侵を誓うものとする。
第二条。
両国において有事の際、領民の生命を脅かす事態が発生した場合、双方は可能な限り援軍を送り、互いに支援するものとする。
第三条。
両国の商人は、互いの領内で自由な商取引を行うことを認める。
第四条。
武具及び物資の売買は、双方の合意の下で行う。
また、価格が変動する際は、交渉の猶予を設けるものとする。
第五条。
両国は定期的に協議の場を設け、友好関係の維持に努める」
読み上げが終わると、謁見の間は静まり返った。
皇帝は、ゆっくりと口を開く。
「レオン・ノルディア辺境伯よ、異論はあるか?」
レオンは一歩前へ出る。
「ございません、ノルディアとしても望むところであります」
皇帝は満足そうに頷いた。
「そうか……では、署名を」
文官が条約を皇帝の前へ運ぶ。
皇帝は羽ペンを手に取り、迷うことなく署名を書き記した。
『ジーカス・ヴァルハイト』
署名を終えると、皇帝は隣に立つ第一皇子へ視線を向ける。
「ジークハルト」
「はい」
ジークハルトは一歩前へ進み、羽ペンを受け取る。
そして、静かに自らの名を書き記した。
『ジークハルト・ヴァルハイト』
羽ペンを置くと、皇帝は静かに頷く。
「これで、帝国皇室の総意として本条約を認める」
文官は条約を丁寧に持ち上げ、今度はレオンの前へ差し出した。
レオンは羽ペンを受け取る。
そして、迷うことなく自らの名を書き記した。
『レオン・ノルディア』
署名を書き終えると、静かに羽ペンを置いた。
皇帝は三人の署名が並んだ羊皮紙を見つめ、満足そうに頷く。
「これより、王国ノルディアと帝国は新たな友好条約を締結する。この条約は、本日をもって発効する」
その瞬間、謁見の間に大きな拍手が響き渡った。
左右に並ぶ帝国の重臣達も、惜しみない拍手を送る。
エミルは静かに一歩前へ出た。
そして、胸へ手を当て、深く一礼する。
「教国を代表いたしまして、本日、王国ノルディアと帝国が新たな友好条約を締結されましたことを、心より祝福いたします。また、教国は立会人として、本条約を正式に承認いたします」
皇帝は穏やかに頷いた。
「エミル殿、感謝する。身に余る言葉だ」
エミルも静かに頭を下げる。
レオンは、目の前の条約を見つめた。
祖父ヴァルグが結んだ不可侵条約。
父グラニウスが結んだ和平条約。
そして今日、レオンが結んだ新たな友好条約。
貿易、魔獣討伐への共同対応、定期協議。
これまで築かれてきた両国の関係は、今日、さらに強いものとなった。
祖父から父へ。
父から自分へ。
ノルディア家が繋いできた想いは、確かに次の世代へ受け継がれた。
レオンは静かに微笑む。
これから先も、この友好が続くことを願いながら。




