第253話 帝都
帝都へ向かって歩き続けて数時間
街道を進む人の数は次第に増えていった
荷馬車を引く商人
護衛を連れた貴族
旅人
冒険者
様々な人々が同じ方向へ歩いている
その先には巨大な城壁がそびえ立っていた
「……あれが帝都か」
レオンは思わず立ち止まる
王国王都にも引けを取らないほど高く
どこまでも続く城壁
その巨大さは王国の辺境で育ったレオンでも思わず息を呑むほどだった
「凄いですね……」
エミルも感嘆の声を漏らす
「教国の聖都ともまた違う迫力があります」
二人は再び歩き始め
人の流れに合わせて帝都の門へ近付いていく
門の前では帝国兵達が行き交う人々を見守っていた
しかし教国と王国ノルディアの使節である二人は 事前に伝達が行われていたため止められることはない
軽く敬礼を受けるとそのまま帝都の中へ足を踏み入れた
「…………」
レオンは自然と周囲を見回した
「これは……」
思わず言葉を失う
目の前に広がっていたのは王国とも教国とも全く違う街並みだった
重厚な石造りの建物
赤茶色のレンガ造りの家々
黒い瓦屋根が美しい木造建築
白い壁と平らな屋根を持つ建物
一つ一つの建物に統一感はない
それなのに 不思議と街全体は調和していた
異なる文化が長い年月を掛けて溶け合った
そんな街並みだった
「凄いな……」
レオンはゆっくりと呟く
「王国じゃこんな街並みは見たことがない」
エミルも周囲を見回しながら頷いた
「はい……私も驚きました 一つの街にこれほど様々な建物が並んでいるなんて……」
二人はゆっくりと大通りを歩き始める
街路は広く 何台もの馬車が行き交っていた
道路は綺麗に整備され
歩行者と馬車が互いに邪魔にならないよう工夫されている
道の両側には様々な店が並ぶ
鍛冶屋
仕立屋
魔道具店
武器屋
食堂
露店
どこも多くの客で賑わっていた
鉄を打つ音
商人達の呼び込み
子供達の笑い声
様々な音が混ざり合い
帝都全体が活気に満ちている
露店では王国では見掛けない香辛料が山のように積まれ
色鮮やかな布が風に揺れていた
木彫りの工芸品
金属細工
見たこともない形の陶器
店ごとに扱う品も大きく違う
「面白いな」
レオンは露店を見ながら笑う
「同じ帝国なのに店の雰囲気まで違う それぞれ別の国を歩いてるみたいだ」
エミルも小さく笑った
「本当にそうですね 見ているだけでも飽きません」
レオンは今度は建物へ視線を向ける
石造りの建物は重厚で堅牢
レンガ造りの家々は温かみがあり
黒い瓦屋根の建物は落ち着いた雰囲気を漂わせる
白い壁の建物はどこか異国情緒を感じさせた
「不思議な街だな 全部違うのに ちゃんと帝都としてまとまってる」
エミルも深く頷く
「はい 私も同じことを思いました」
二人が街並みに見惚れながら歩いていると
大きな広場へ出た
噴水の周囲には多くの人々が集まり
商談をする商人
大道芸を眺める子供達
談笑する家族連れ
帝都の日常がそこにはあった
その広場の中央一人の青年が腕を組み 堂々と仁王立ちしていた
銀髪が風に揺れ 周囲の人々より一回り背が高く人混みの中でもよく目立っていた
青年はレオンへ気付くと口元を大きく緩めた
「よう」
「やっと来たか レオン」
ルーカスだった
レオンも自然と笑みを浮かべる
「久しぶりだな ルーカス」
ルーカスは満足そうに頷く
「兄貴も皇帝陛下も待ってる 迎えに行けと言われたからな……さあ 行くぞ」
レオンは頷いた
「ああ」
エミルも一礼する
「よろしくお願いいたします」
「ああ」
ルーカスは豪快に笑う
「エミルそう固くなるな……帝国へようこそ」
その一言にレオンは改めて帝都を見上げた
王国とも教国とも違う様々な文化が息づく大帝国
これから始まる調停がこの国と王国の未来を左右する
そう思うと自然と気持ちが引き締まるのだった。




