第252話 眠れぬ朝
朝日がゆっくりと部屋を照らし始める
窓から差し込む柔らかな光が寝台を包んでいた
「ん……」
レオンはゆっくりと目を開ける
大きく欠伸をしながら体を起こした
「よく寝た」
レオンは ぐっと背伸びをする
その隣ではエミルが静かに起き上がっていた
「おはようございます レオン君」
「おはよう エミル」
レオンは笑顔で挨拶を返した
ふとエミルの顔を見る
少しだけ目元が眠そうだった
「眠れなかったのか?」
突然尋ねられ エミルの肩がぴくりと震える
「えっ……」
「少し眠そうだけど?」
「あ あの……少し寝付きが悪くて……」
レオンは納得したように頷く
「そうか 初めての帝国だからな 俺も少し緊張してる」
その言葉にエミルは苦笑する
(緊張の理由は違うのですが……)
エミルは心の中だけで呟いた
二人は身支度を整えると一階の食堂へ向かった
簡単な朝食を済ませ 宿の主人へ礼を告げる
「ありがとう世話になった」
「ありがとうございました お気を付けて」
主人は笑顔で二人を見送った
宿を出ると朝の澄んだ空気が二人を包む
帝都へ続く街道には 朝早くから多くの人々が行き交っていた
荷馬車を引く商人
旅人
冒険者
護衛の騎士
その光景を眺めていたレオンは ふと足を止める
「……王国とは少し違うな」
行き交う人々の容姿が目に入る
黒髪
銀髪
赤髪
髪色だけでも様々だった
肌の色も
白い肌
淡い黄褐色の肌
褐色の肌
目の色もルーカスの様な翡翠色の瞳や赤い瞳や黒い瞳
実に多種多様だった
王都でも他国の商人を見掛けることはある
だが これほど様々な容姿の人々が 同じ町で当たり前のように暮らしている光景は初めてだった
レオンは感心したように呟く
「帝国って面白い国なんだな」
エミルも周囲を見回した
「そうですね 教国でも巡礼者や商人が各国から訪れますので様々な人を見掛けます」
「ですが 一つの町でこれほど多くの人が暮らしている光景は私も初めて見ました」
レオンはもう一度周囲を見渡す
「帝都はもっと凄そうだな」
エミルは小さく微笑んだ
「私も少し楽しみです」
二人は再び帝都へ向けて歩き始めた
遥か前方には 巨大な城壁がうっすらと姿を見せ始めていた




