第238話 約束の代わり
串焼きを食べ終えた二人はそのまま祭りの中を歩き始めた
露店から漂う甘い香り
大道芸人へ送られる拍手
子供達の笑い声
祭りはますます賑わっていた
「あっ!」
少女は露店を見つけるたびに足を止める
「あれ可愛い!あっちは美味しそう!」
楽しそうにはしゃぐ姿を見て
アレクも自然と後を歩いていた
しばらく歩くと広場の中央にある大きな噴水が見えてくる
少女は噴水の縁へ腰を下ろした
「いっぱい歩いたね」
「ああ」
アレクも隣へ腰を下ろす
噴水の水音が心地よく響いていた
少し沈黙が流れた後 少女が口を開く
「私ね お母さんと二人で暮らしてるの!お母さんがパン屋さんをやってるんだ!」
アレクは静かに頷いた
「そうなのか」
少女は嬉しそうに笑う
「うん!最近は私もお店のお手伝いしてるの!今日は建国祭だからってお母さんがお給金をくれたの!銅貨五十枚も!」
そう言って大切そうに財布を抱きしめた
「それでね お母さんが "新しいパン"を考えてもいいよって言ってくれたの!」
少女は少し困ったように笑う
「でも全然思いつかなくて……毎日考えてるんだけど 難しいんだ」
アレクは少し考え込む
ふと以前王城で昼食に出た料理を思い出した
柔らかいパンに焼いた肉と野菜が挟まれた料理
「ああ それなら一ついい案あるぞ?」
少女は目を輝かせた
「本当?」
アレクは頷く
「パンに肉と野菜を挟むんだ 手で持って食べられるし 美味かったぞ」
少女は目を丸くする
「お肉をパンに?……野菜も?」
「ああ」
少し想像した後
少女はぱっと笑顔になった
「それ!すっごく美味しそう!」
勢いよく立ち上がる
「お母さんに話してみる!」
そして照れくさそうに笑った
「ねぇ 今日の串焼きのお礼 そのアイデア貰ってもいい?」
アレクは少し驚く
「そんなのでいいのか?」
少女は何度も頷いた
「うん!すごくいい案だもん!」
アレクは少し照れくさそうに笑う
「なら好きに使え」
少女は嬉しそうに頭を下げた
「ありがとう!」
二人は顔を見合わせ 自然と笑い合った
その時間は初めて会った二人とは思えないほど
穏やかで心地よいものだった




