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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
帝国の頭脳と和平条約
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第230話 鬼人の技

ガンッ!!と鈍い音が訓練場へ響く

ガレスの斬撃をエミルは最小限の動きで受け流した

続く横薙ぎを放ちそこから踏み込み更に突きを放つ

ガレスの攻撃はどれも正確だった

だがエミルは慌てることなく捌いていく

無駄な動きは一つもない

呼吸も乱れない

表情も変わらない

まるで静かな湖のようだった

ガレスの強烈な殺気もエミルには通じていないように見えた

レオンは思わず呟く


「エミルには殺気が効いてない……」


その言葉にレックスが静かに首を横へ振る


「いいえ……そう見えているだけです」


アレクはレックスを見る


「レックス それはどういうことなんだ?」


レックスは二人から目を離さない


「ガレスは昔から対人戦を得意としていました 王国近衛騎士団にいた頃も 私が最も厄介だと思っていた相手です」


ルーカスが興味深そうに笑う


「そんなに強いのか?」


レックスは静かに頷いた


「普通の騎士は あれほどの殺気を放つことはできません 仮に放てたとしても 一定の強さが限界です……ですがガレスは違います 殺気の強弱を自在に操ることができるのです」


ジークハルトが目を細める


「強弱を……」


「はい わざと殺気の弱い場所を作るのです 相手は本能的に その場所が安全だと判断します そして無意識のうちに そこへ逃げる」


レオンはハッとして訓練場を見る

エミルは落ち着いて戦っている

ガレスの殺気にも動じていない

そう思っていた


「……あっ」


いつの間にかエミルは訓練場の端まで下がっていた

逃げ道は一方向しか残されていない

レックスは静かに続ける


「殺気で相手を怯ませるのではありません 殺気で相手を誘導するのです これがガレスの戦い方です あくまで"鬼人"と言われたガレスだからこそできる技です」


レオンは思わず息を呑む


「エミルは気付いてない……」


その時だった

ガレスの口元が僅かに緩む


「そろそろですな」


その一言と同時にガレスが大きく踏み込んだ


ガンッ!!


エミルは即座に受け流す

そのまま横へ飛び退く

だが そこには既にガレスがいた


「っ!」


初めてエミルの表情が僅かに動く

逃げ道を選んだつもりだった

だが その場所こそ ガレスが最初から用意していた場所だった

エミルの焦りをガレスは逃さない

ガレスは袈裟斬りを放つ

エミルは剣で受けた


ガンッ!!


凄まじい衝撃でエミルの体勢が崩れる

すぐに立て直そうとするエミルだった

しかし 次の瞬間はガレスの剣が目前まで迫っていた


「終わりです」


刃を潰した剣がエミルの喉元で止まる

訓練場が静まり返った

誰も動かない

エミルは喉元の剣を見つめ

静かに息を吐いた


「……参りました」


ガレスはゆっくりと剣を下ろす


「ありがとうございました」


エミルも一礼した


「こちらこそありがとうございました」


二人が互いに礼を交わす

レックスは満足そうに頷いた


「最後の一歩まで計算の内……昔と何も変わってないな ガレス」


ガレスは苦笑する


「いや 昔ほどじゃない 俺も歳を取ったからな」


レックスは静かに頷く


「久しぶりにお前の対人戦をみた……見事だった」


ガレスは苦笑した


「まだまだ上には上が居るからな」


そう言いガレスはゼムを見た

ルーカスは腕を組みながら笑う


「殺気をあそこまで上手く使う武人を初めて見た」


ジークハルトも静かに頷いた


「剣だけではなく 人の心理まで戦術へ組み込んでいる……実に興味深い」


エミルはガレスを見る


「本日は大変勉強になりました 教国へ戻りましたら この経験を騎士達にも伝えたいと思います」


ガレスは笑顔で頷く


「私も教国の戦い方を学ばせていただきました ありがとうございました」


その様子を見つめながら

レオンは静かに考えていた

王国は殺気で相手を制する

帝国は殺気を隠し必要な時だけ解き放つ

教国は殺気も感情も消し去る

同じ剣でも 国が違えばここまで戦い方が変わる

そして今日見た鬼人の技

あれもまた 長い実戦の中で磨き上げられた一つの答えだった

レオンは静かに拳を握る

まだまだ学ぶことは多い


「俺もまだ強くなれそうだな」


レオンは自分に足りないものが何なのか分かり始めていた

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