第229話 王国の剣
ゼムの右手が振り下ろされる
「始め」
その瞬間 ガレスが一気に踏み込んだ
一瞬の速さで距離を詰める
エミルも同時に地を蹴る
ガンッ!!
鈍い衝突音が訓練場へ響く
刃を潰した剣同士が激しくぶつかり合い火花を散らす
前回とは違い一撃当てても終わらない
エミルはすぐに距離を取ろうとする
しかしガレスはそうはさせなかった
「甘いですな」
ガレスは間髪入れず追撃した
ガンッ!ガキンッ!
と次々と斬撃が襲い掛かる
エミルは全て受け流しながら後退する
レオンは目を見開いた
「ガレスが攻め続けてる」
リックが笑う
「これが王国式ですよ 一度流れを掴んだら相手に考える暇を与えないんです」
ガレスの剣は止まらない
袈裟斬り
横薙ぎ
突き
全てが途切れることなく繋がっていく
エミルは受け続けるしかなかった
ガンッ!!
と再び激しく剣がぶつかる
エミルは身体を捻り距離を取る
その瞬間だった
ゾクリとした殺気で訓練場の空気が変わる
ガレスから強烈な殺気が放たれた
まるで巨大な魔物と対峙したかのような圧力
王国の剣士は剣だけでは戦わない
殺気すら武器として相手を圧倒する
レオンは思わず息を呑んだ
「これが……鬼人の技か」
しかし エミルの表情は変わらない
静かに剣を構えたまま そこに立っていた
感情は見えない
殺気も感じない
まるで何も存在しない空間に剣士だけが立っているようだった
ジークハルトが静かに呟く
「消えた……」
ルーカスも目を細める
「いや 最初から何も感じない」
エミルは殺気を消していた
怒りも
焦りも
闘志も
全てを心の奥へ沈める
相手へ何一つ悟らせない それが教国の剣
ガレスは笑みを浮かべた
「なるほど……これが教国式ですか」
「感情を読まれれば 一撃を防がれます それが教国の教えです」
ガレスは嬉しそうに笑った
「面白い ならばこちらは王国らしく参りましょう」
再び殺気が膨れ上がる
エミルはなおも無表情のまま
静かに剣を構え続けた
王国と教国 互いに正反対の戦い方が再び激突した




