第203話 氷の戦士
舞い散る氷が視界を覆う
ルーカスは木剣を構えたまま周囲を見渡した
(どこだ!?)
その瞬間未来予知の魔眼でレオンは数秒先の動きを見ていた
(右へ振り向く……そのまま左を警戒する……今だ)
レオンは氷の陰から一気に踏み込んだ
ドンッ!!
「そこだ!」
ガキィンッ!!
木剣同士が激しくぶつかる
「っ!」
ルーカスは咄嗟に受け止める
だが レオンは止まらない
一撃 二撃 三撃
連続で打ち込みルーカスも笑みを浮かべた
「そうだ!撃ち合ってこい!」
風属性身体強化
再び風の魔力が強まる
ドンッ!!
一瞬で間合いを詰め返す
ルーカス木剣が唸る
ガンッ!!
レオンは受け流しすぐに横へ回る
真正面からは戦わない
相手の速度を活かさせないように位置を変え続ける
「なるほど」
ルーカスは笑う
「また戦い方を変えたか!」
レオンは答えない
ただ木剣を振るう
押されれば離れる
隙があれば踏み込む
真正面から力比べはしない
ガキィンッ!!
互いの木剣が何度も交差する
レオンは戦いながら考えていた
(速さでは勝てない 力でも負ける なら…………戦い方で勝つ)
ルーカスが大きく踏み込む
レオンは半歩だけ引く
振り下ろされた木剣を受け流し
すぐ横へ移動する
「逃がさん!」
ルーカスは追うのだが レオンは追わせるように動いていた
右 左 後ろ と位置を変え 攻撃の角度も変える
ルーカスは笑みを浮かべた
「面白い!」
その瞬間だった ゾクリと全身を貫くような殺気
「正面!」
ルーカスは反射的に木剣を構えた
だが レオンは動かない
「……?」
ルーカスに違和感が走る
殺気だけが自分へ向けられている
「しまっ――」
気付いた時には遅かった
殺気が消え 同時にレオンは左へ踏み込んでいた
「そこだ!」
ガンッ!!
両者の木剣がぶつかる
レオンはそのまま木剣を滑らせるように絡め
手首を捻る
クルリとルーカスの木剣を絡め取る
「なっ!」
カランッ!!と いう音と共にルーカスの木剣が高く宙を舞った
木剣は地面へ転がる
レオンの木剣が 静かにルーカスの喉元で止まった
訓練場が静まり数秒の沈黙が流れた
ゼムが静かに前へ出て手を上げる
「そこまでです」
レオンは木剣を下ろす
ルーカスは大きく息を吐き 苦笑した
「参った……最後は完全に騙された」
レオンも苦笑する
「俺も数日前まで同じだった……何度もやられたからな」
ルーカスは木剣を拾い上げながら笑う
「まさか 王国の剣士に殺気のフェイントを使われるとは思わなかった 最後の最後で一本取られた」
レオンは木剣を肩へ担ぐ
「三年前のリベンジ 成功だな」
ルーカスは悔しそうに笑った
「ああ……だが 次は負けん」
二人は笑い合った
その様子を少し離れた場所でジークハルトは静かに見つめていた




