第200話 変わらない空気
レオンは帝国の一行を邸の中へ案内した
廊下を歩きながら
ルーカスが懐かしそうに周囲を見回す
「懐かしいな」
レオンは小さく笑う
「三年ぶりだからな」
ルーカスも頷いた
「ああ 俺が十一歳の時以来か……あの頃とほとんど変わってないな」
レオンは廊下を見渡す
「父上が派手なのを好まなかったからな 必要なものだけを残してる」
ルーカスは笑った
「レオンらしい」
そのやり取りをジークハルトは静かに見つめていた
皇族と辺境伯 本来ならここまで気軽に話す関係ではない
だが 二人の間には身分を感じさせる壁がなかった
やがて一行は応接室へ到着する
使用人達がお茶を用意し
一礼して部屋を後にした
レオンは二人へ席を勧める
「どうぞ」
「失礼する」
ジークハルトが静かに腰を下ろす
ルーカスも隣へ座った
レオンの隣にはゼム
その後ろにはクロエとフローラが控えている
しばらくは他愛もない話が続いた
帝国での近況
ノルディアの冬
道中の雪
そんな話をしていると
ルーカスが突然笑い出す
「そういえば 前に来た時は毎日俺がレオンを叩きのめしてたな」
レオンは呆れたように笑う
「記憶を都合よく書き換えるな 毎日じゃない」
「そうだったか?」
「そうだ!それに今なら負ける気はしない」
ルーカスの口元が吊り上がる
「言うようになったな」
「望むところだ」
「今回こそ決着をつけよう」
レオンも笑みを浮かべた
「ああ 受けて立つ」
二人は笑い合う
その様子を見て
クロエも思わず笑みを浮かべた
ジークハルトだけは静かにレオンを見つめている
表情
受け答え
立ち居振る舞い
どれも自然だった
少なくとも 野心に取り憑かれた人間には見えない
だからこそ一つの疑問が残る
(何を見据えて 何を警戒している?)
その答えを知るために
ジークハルトはこのノルディアまで足を運んだ
まずはこの少年を知る
全てはそこからだった




