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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
帝国の頭脳と和平条約
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第196話 教国という抑止力

帝国最南端 王国との国境へ続く街道

雪が静かに降り積もる中

数台の竜車がゆっくりと止まった

先頭の竜車から一人の青年が降り立つ

艶のある銀髪

知性を感じさせる翡翠色の瞳

ルーカスとは対照的な細身の体格

派手な威圧感はない

だが落ち着いた所作と穏やかな眼差しは

生まれながらに人の上へ立つ者の風格を漂わせていた

帝国第一皇子 ジークハルトだった

続いてルーカスも竜車から降りる

周囲では近衛騎士達が慌ただしく動き始めた

竜車から荷物を降ろし

待機していた馬車へ積み替えていく

護衛の騎士達も隊列を組み直した

ルーカスはその様子を見ながら尋ねる


「兄貴 ここで乗り換えるのか?」


「ああ」


ジークハルトは静かに頷く


「ここから先は王国だ 王国の紋章は"竜" 帝国の皇族が竜車で国境を越えれば 友好ではなく威圧と受け取られる可能性がある」


ルーカスは苦笑した


「そこまで考えるのか」


「外交とはそういうものだ」


ジークハルトは穏やかに答える


「不要な誤解は避ける それだけで防げる争いもある」


全ての積み替えが終わる

ジークハルトとルーカスは馬車へ乗り込んだ

やがて馬車は静かに走り始める

王国へ向かう街道

馬車の中では静かな時間が流れていた

ジークハルトは膝の上へ資料を広げる

表紙には ノルディア辺境伯領

そう記されている

向かいではルーカスが腕を組んでいた


「兄貴 まだ見てるのか?」


「ああ」


ジークハルトは短く答える


「調べれば調べるほど気になることが増える」


ルーカスは苦笑した


「レオンはそんな怪しい奴じゃないぞ」


「分かっている」


ジークハルトは穏やかに笑う


「私はレオン・ノルディアを疑っているわけではない」


「では何だ?」


ジークハルトは一枚の資料を取り出した


「教国だ」


「教国?」


「ああ」


「教国枢機卿セリオスがノルディアを訪れた その直後 今度は教国聖騎士団副団長が長期滞在している」


ルーカスは頷いた


「それはポーション事業だろ?俺も聞いた レオンと共同で進めてる事業だ」


「その可能性は高い」


ジークハルトは静かに頷く


「だが それだけとは限らない」


ルーカスは首を傾げた


「どういう意味だ?」


ジークハルトは資料を閉じ

静かに続ける


「仮に帝国がノルディアへ侵攻したとしよう その時教国はどう動く?」


ルーカスは腕を組む


「教国か……分からん」


「ああお前はそうだな…… ノルディアを攻めれば教国枢機卿セリオスが動く可能性がある そしてセリオスが動けば 動くのは教国だけではない 帝国にも王国にもセリオスを敬愛する信者は数多く存在する もしセリオスが帝国を非難すれば 帝国内の信者達が反発する可能性もある それは王国でも同じだ」


「つまり何だ?」


「その聖騎士団副団長の長期滞在そのものが帝国への抑止力として配置されている可能性もある」


ルーカスは少し考え込んだ


「なるほどな」


「本当にポーション事業だけかもしれない」


「でも兄貴は最悪の可能性まで考えてるってことか……」


「そうだ」


ジークハルトは静かに頷く


「可能性を一つに絞れば 視野も狭くなる 考え過ぎで済めば それが一番良い」


そう言って再び資料へ目を落とした

馬車は雪道を進み続ける

ノルディアまであと八日だった

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