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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
帝国の頭脳と和平条約
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第189話 王国式

「始め!」


ゼムの合図と同時にレオンは地面を蹴った

今まで積み重ねてきた帝国式の踏み込み

最短距離で一気に間合いを詰める


ガキィンッ!!


鋼と鋼が激しくぶつかり合う


「……っ!」


レオンはそのまま剣を流し横へ回り込もうとした

だが ガレスは動かない

大剣で受け止めたまま微動だにしなかった


「甘いです」


ガレスの低い声

その瞬間 ゾクリ と再び全身へ寒気が走る

ガレスの鋭い視線

重苦しい殺気

その全てがレオンへ向けられていた


「くっ!」


一瞬 動きが止まる

その隙だった

ガレスは大剣を押し返した


ガンッ!!


レオンは数歩後ろへ下がる


「まだです!」


間髪入れず ガレスが踏み込んだ

大剣とは思えない速度

重い一撃が振り下ろされレオンは受け止める


ガキィィンッ!!


腕へ凄まじい衝撃が走る


「重い……!」


そのまま剣を受け流そうとする

だが また身体が止まる


「しまっ……!」


その一瞬をガレスは見逃さない

大剣の横薙ぎ

レオンは辛うじて後ろへ飛ぶ


ブォンッ!!


鼻先を大剣が通り過ぎた


「危なっ……」


距離を取り呼吸を整える

頭では理解している

ガレスの動きは見えている

剣筋も読める

なのに 身体だけが一瞬遅れる


「どうしました?」


ガレスは構えを崩さない


「若様の剣はその程度ではないでしょう」


レオンは歯を食いしばる


「まだだ!」


再び踏み込む

今度は左右へ揺さぶりながら間合いへ入る

フェイントを入れ 下段から切り上げる

ガレスは大剣で受ける


ガキンッ!!


その瞬間 レオンは身体を捻り背後へ回る


「もらっ――」


そこまでだった

ガレスは振り返りもせず

肘を後ろへ打ち込む


ドンッ!


「ぐっ!」


腹へ衝撃が走る

息が止まった

そのまま 大剣がレオンの首元で止まる

訓練場に静寂が流れた

そして ゼムが静かに試合の終わりを告げた


「そこまでです」


ガレスはすぐに剣を下ろした


「失礼いたしました」


レオンも剣を納め

大きく息を吐く


「完敗だ」


ガレスは首を横へ振る


「剣技では若様が上です ですが私は若様が動きを止める瞬間を狙っただけです」


レオンは苦笑する


「そこなんだよな……頭では分かってる でも身体が勝手に止まる」


ゼムが静かに前へ出た


「それが殺気です ぼっちゃまは殺気へ身体が反応しております 経験が少ないのもありますが 殺気を本能が危険を察知し 一瞬身体を止めてしまうのです」


レオンは小さく頷く


「あの黒マントの時も同じだった あの時も身体だけが遅れた」


ゼムは答える


「はい 対人戦とは 剣や魔法だけではございません 心も戦うのです」


レオンはゆっくりとガレスを見る


「ありがとう ガレス ようやく原因が分かった」


ガレスは穏やかに微笑んだ


「お役に立てたなら幸いです」


その様子を見ていたエミルが静かに口を開く


「教国では逆に その殺気を消します」


レオンはエミルへ視線を向けた


「消す?」


「はい 相手へ何も悟らせないためです……次は私がその違いをレオン君に見せましょう」

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