第177話 お祖父ちゃん
数年前のポートミル
「お祖父ちゃん!」
元気な声が小さな家へ響いた
勢いよく扉が開く
青い髪を揺らした少女が飛び込んできた
まだ幼いフローラだった
家の奥では一人の老人が本を読んでいる
白髪交じりの髪
穏やかな笑み
水属性魔法の使い手のフローラの祖父 エドガーだった
「おう!今日も元気じゃな」
フローラは満面の笑みで頷く
「うん!今日は何して遊ぶ?」
エドガーは優しく笑う
「そうじゃな……まずは魔法でも見せてやろうか」
「うん!」
フローラは目を輝かせた
エドガーがゆっくりと手を前へ出す
すると空中に小さな水の玉が現れた
その水は形を変え魚になる
魚は空中を泳ぐように動き回る
「わぁー!」
フローラは手を叩いて喜ぶ
「すごーい!今日はお魚なんだ!」
エドガーは笑いながら今度は鳥を作る
水の鳥は羽ばたきながら部屋を一周した
「わぁ!かわいい!お祖父ちゃん!もう一回!もう一回見せて!」
エドガーは苦笑する
「仕方のない子じゃ よーく見ておくんじゃぞ」
「うん!」
フローラは真剣な顔になる
エドガーは鳥を消し
今度はフローラの前へ小さな水の玉を浮かべた
「今日はフローラもやってみるか?」
「やる!」
フローラは両手を前へ出す
魔力を集中させる
ぽちゃんと小さな水滴が一つだけ落ちた
「あっ……」
悔しそうに俯くフローラ
エドガーは笑った
「焦らん焦らん最初は皆そんなものじゃ」
「もう一回!次は出来るもん!」
フローラは何度も挑戦する
十回 二十回 三十回 何度失敗しても諦めなかった
すると 小さな水の玉がふわりと浮かぶ
「できた!……お祖父ちゃんできたよ!」
エドガーは目を細める
「うむ やはりお前には才能がある」
頭を優しく撫でた
フローラは嬉しそうに笑う
「えへへ もっと教えて!もっと上手になりたい!」
「もちろんじゃ魔法は"人を傷付ける"ためではない 人を助けるために使うものじゃ」
フローラは元気よく頷いた
「うん!フローラもお祖父ちゃんみたいになる!たくさんの人を助ける!」
エドガーは嬉しそうに笑った
「その優しい心を忘れなければ きっと立派な魔法使いになれる」
その日からフローラは毎日のように祖父の家へ通った
水魔法を教わり
一緒に笑い
一緒にご飯を食べ
一緒に夕日を眺めた
そんな幸せな日々がずっと続くと信じていた
だがある日のことだった
「ゴホッ……ゴホッ!」
突然激しく咳き込むエドガー
胸を押さえその場へ膝をつく
「お祖父ちゃん?」
フローラは慌てて駆け寄る
エドガーの顔色は青白く
苦しそうに息をしていた
「お、お祖父ちゃん!しっかりして!」
フローラの叫び声を聞き
外にいたカミュとマリナが慌てて家へ飛び込んできた
幸せだった日々はこの日を境に大きく変わり始めるのだった




