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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
フェルナードの聖女と覚悟
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第166話 ポートミルの観光

保温箱の共同事業が正式に決まった翌日

レオン達がフェルナード領を出発する日まであと一日となっていた

朝食を終えるとレイモンドが穏やかに口を開く


「レオン辺境伯様 本日はお時間がおありでしょうか?」


「ああ 何かあるのか?」


「せっかくフェルナード領までお越しいただいたのです 最後にフローラがポートミルをご案内したいと申しておりまして」


フローラは席を立ち


優雅に一礼する


「ご迷惑でなければご案内させていただけませんか?」


レオンは笑みを浮かべた


「もちろん構わない よろしく頼む」


「はい」


フローラも柔らかく微笑んだ

その時だった 隣にいたクロエがにっこりと笑う


「じゃあ私はブロド"さん"と契約書の最終確認をしてるね」


いつも通りの笑顔 そのはずだった


「…………」


何故だろう レオンの背中を冷たいものが走る

笑っている 確かに笑っている

だが目だけは少しも笑っていなかった

まるで


『あとでちゃんと説明してね』


そう無言で言われているような笑顔だった


「……ああ」


思わず返事をするとクロエは満足そうに頷いた


「うん……いってらっしゃい」


その笑顔は最後まで崩れなかった

レオンは内心首を傾げながら席を立つ


「じゃあ行こうか」


「はい」


二人は伯爵邸を後にした

一方 食堂へ残ったブロドは契約書を取り出しながら苦笑する


「クロエ……本当に契約書を確認するか?」


クロエは笑顔のまま答えた


「もちろんするよ?仕事は仕事だからね」


その笑顔を見たブロドはそれ以上何も聞かなかった

聞いてはいけない気がした





伯爵邸を出ると心地よい潮風が二人を迎えた

港町ポートミルは今日も活気に満ちている

港へ戻ってきた漁船

魚を運ぶ人々

威勢の良い掛け声

市場には新鮮な魚介類が並び

多くの人で賑わっていた

レオンは辺りを見回し感心したように頷く


「やっぱり港町は活気が違うな」


フローラは少し誇らしそうに微笑んだ


「フェルナード領で一番賑やかな街ですから 皆様この港のおかげで生活しているんです」


二人はゆっくりと港沿いを歩き始めた

潮の香りを乗せた風が優しく吹き抜け

港町は穏やかな時間に包まれていた

二人は港沿いをゆっくり歩く

潮風が心地よく頬を撫でる

港では漁を終えた船が次々と戻り漁師達が慌ただしく魚を運んでいた


「おーい!」


「今日のマグロだ!」


「こっちは朝獲れだぞ!」


威勢の良い声が飛び交う

レオンは思わず足を止めた


「活気が凄いな」


フローラは嬉しそうに頷く


「ポートミルは朝が一番賑わうんです なので漁師さん達もこの時間が一番忙しいですね」


レオンは市場を見回す

並べられた魚はどれも新鮮だった

銀色に輝く魚体

大きなカニ

貝や海老まで並んでいる


「ノルディアじゃ見られない光景だ……少し羨ましいな」


フローラはくすりと笑う


「その代わりノルディア領には雪があります 私はこちらの方が羨ましいです」


レオンは苦笑した


「またその話か」


「だって気になるんです 川や湖が凍るなんて どうしても想像出来ません」


レオンは少し考えてから答える


「見た方が早い 冬になったらノルディアへ来ればいい」


フローラは少し驚いた表情を浮かべる


「本当に伺ってもよろしいのですか?」


「ああ 歓迎する それに氷属性の訓練も出来るしな」


フローラは嬉しそうに微笑んだ


「ありがとうございます!今から楽しみです」


しばらく歩くとレオンは一軒の魚屋を探すように辺りを見回した


「そういえば 昨日話した魚屋がこの辺だったな……帰る前に寄っておこう」


フローラはその言葉に頷いた


「マリナさんのお店ですね……ご存じでしたか?あのお二人は港でも有名なんですよ…………とても仲の良いご夫婦ですから」


レオンは笑う


「前に少し世話になってな 皆への土産でも買おうと思っていた」


すると フローラが何か思い出したように小さく声を上げた


「あっ……でしたら その前にご案内したいお店があります」


「店?」


「はい マリナさんの魚屋が卸しているレストランなんです ポートミルでも一番人気のお店ですよ」


レオンは興味を示した


「そこまで勧めるなら行ってみたいな」


「ふふっきっと気に入っていただけます」


二人は港通りを少し歩く

やがて 木造二階建ての店が見えてきた

入口には船の舵輪が飾られ

潮風で揺れる看板には


【波風亭】


と書かれている

店の前には多くの客が並び

中からは香ばしく魚を焼く匂いが漂ってきた

レオンは思わず笑う


「これは期待出来そうだ」


フローラも嬉しそうに微笑む


「はい ポートミル自慢のお店ですから」


嬉しそうに微笑むフローラを見て

レオンは思わず目を奪われた

夕日に照らされた肩まで伸びる青髪は海のように美しく輝き

澄み切った蒼い瞳は穏やかで優しい光を宿している

整った顔立ちに柔らかな笑みが重なるその姿は思わず見惚れてしまうほど美しかった

ゲームでも『聖女』と呼ばれていた理由が

少しだけ分かった気がした

夕日に照らされた『波風亭』の看板を見上げ

二人は並んでゆっくりと店の入口へ歩き出す

港町の穏やかな時間が静かに流れていた

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