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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
フェルナードの聖女と覚悟
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第163話 保温箱

翌朝 レオン達はレイモンドに案内され

フェルナード領最大の鍛冶工房を訪れていた

工房へ足を踏み入れると熱気が全身を包む

赤く熱せられた鉄

絶え間なく響く槌の音

飛び散る火花

職人達は汗を流しながら鉄を打ち続けていた

レオンは工房を見回す


「凄いな」


レイモンドは微笑む


「この工房では港で使う錨や鎖 船具の多くを作っています フェルナード領でも一番の鍛冶工房です」


その時 レイモンドが一人の男へ声を掛けた


「ガング」


男が振り返る

五十代半ば

日に焼けた肌

鍛え上げられた太い腕

何度も火傷を負った跡が残る両手

長年鍛冶一筋で生きてきたことが一目で分かる男だった

レイモンドはレオンへ紹介する


「こちらが この工房の責任者 ガングです」


ガングは深く一礼した


「初めまして ガングと申します 本日はよろしくお願いいたします」


レオンも軽く頭を下げる


「こちらこそよろしく頼む」


挨拶を終えるとレオンは鞄から一枚の図面を取り出し机へ広げる


「今日相談したいのはこれだ」


ガングは図面へ目を落とす

細かな寸法まで確認しながら黙って眺める

やがてゆっくり頷いた


「面白い発想ですな」


レオンは尋ねる


「作れそうか?」


ガングは図面を指差した


「外側と内側を鉄で作ることは問題ありません」


「ですが このままでは冷気が鉄を伝わり 外へ逃げてしまいます」


レオンは静かに頷く

ガングは続けた


「鉄と鉄の間へ木材など熱を伝えにくい素材を挟めば 保温効果はかなり上がると思います」


レオンは感心したように笑う


「なるほど……そこはさすが専門家だな」


ガングは少し照れ臭そうに笑った


「長年鍛冶をしておりますので……ですが…」


図面の中央を指差す


「この空気の層は必要なのですか?」


レオンは頷いた


「ああ できればその空気も抜きたい」


ガングは思わず聞き返す


「空気を……抜くのですか?」


レイモンドも首を傾げた


「それはなぜでしょう」


レオンは少し考えてから口を開いた

前世の記憶での真空保温技術を思い浮かべるが説明に困る

なのでノルディアの事を代用した


「俺の故郷では窓ガラスが二重になっていた 膨張を防ぐ目的もあったらしい それと なるべく空気を抜いた方が熱が逃げにくくなると聞いたことがある」


ガングは腕を組んだ


「熱が逃げにくく……ですか?」


「どういう理屈なのでしょう」


レオンは小さく苦笑する


「理屈は知っている でも どう説明すれば伝わるか分からない 」


工房に静かな沈黙が流れる

レイモンドは穏やかに微笑んだ


「レオン辺境伯様はこれまで数々の新しい発想で結果を出してきました なので今回も信じてみましょう」


ガングは大きく頷いた


「承知しました……ですが 問題は空気をどう抜くかです その方法が思い付きません」


その時 レイモンドが静かに口を開いた


「風属性の魔法なら出来るかもしれません」


二人が同時に振り向く


「風属性は空気を操る魔法です 完全に空気を無くすことは難しいでしょう ですが 箱の中の空気を外へ押し出すことなら試せると思います」


ガングの目が輝く


「なるほど 鍛冶だけではなく 魔法も利用するのですか」


レイモンドは頷いた


「まずは試作品を作りましょう 」


「そうだな 結果はそこから考えればいい」


ガングも笑みを浮かべる


「面白い仕事になりそうです」


「鉄板の厚さ 間に入れる素材 風魔法を使う構造 一つずつ試しながら最適な形を探してみます」


レイモンドはレオンへ向き直った


「完成まで一週間ほどお時間を頂けますか?」


レオンは頷く


「構わない その間世話になる」


レイモンドも頷いた


「必ず形にしてみせます」


こうして レオンの知識 レイモンドの風魔法 そして責任者ガングの鍛冶技術

三人による保温箱の共同開発が始まった

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