第157話 フェルナード領都
魚屋の片付けが終わる頃
一人の男が店へ歩いて来た それはブロドだった
レオンを見つけると一礼する
「お二人共 お迎えに上がりました」
レオンは頷く
「分かりました」
マリナは少し寂しそうに笑った
「もう行っちゃうんだねぇ……またいつでもおいで!」
カミュも豪快に笑う
「レオン坊!次はもっとデカい魚を釣ろうぜ!」
レオンも笑顔で頷いた
「はい 帰る時にまた寄らせてもらいます」
クロエも手を振る
「また来るね!」
マリナは優しく微笑んだ
「待ってるよ」
レオン達は二人へ頭を下げ魚屋を後にした
ブロドの案内で人気の少ない路地へ入る
そこには一台の馬車が止まっていた
ブロドが扉を開く
「どうぞ」
レオンとクロエは馬車へ乗り込むと扉が閉まる
クロエは肩へ掛けていた迷彩柄のマントを外した
認識阻害の術式が解かれ
伯爵邸を訪れる正式な装いとなる
一方 レオンは荷物から辺境伯の礼服を取り出した
平民風の服を脱ぎ
黒を基調とした辺境伯の正装へ着替える
着替えを終える頃 馬車は静かに走り始めた
港町を離れ フェルナード領都へ向かう
窓の外には石造りの建物が並び始める
広い街道の両脇には海産物を扱う商店 船具を扱う店 帆や縄を作る工房が建ち並んでいた
港町で水揚げされた魚は この領都へ運ばれ王国各地へ流通していく
さらに進むと巨大な造船所が姿を現した
何隻もの船が建造され
多くの職人が忙しそうに働いている
木材を切る音
金槌を打つ音
職人達の威勢の良い掛け声
海運国家として栄えるフェルナードを象徴する光景だった
クロエは窓の外を見つめる
「やっぱりすごいね 港町とは全然違う」
ブロドは静かに頷く
「ここがフェルナード領都です 港町を支える商業の中心地でもあります」
レオンも街並みを見つめる
ノルディアは山の恵みで栄え
フェルナードは海の恵みで栄える
互いに足りないものを補い合えれば さらに発展出来るはずだ
馬車は街の中心部へ入る
広い石畳の道
整えられた街路樹
中央には大きな噴水広場
港町の活気とは違う
落ち着いた上品な空気が流れていた
その先に 一際大きな屋敷が姿を現す
白い石造りの壮麗な伯爵邸
美しく手入れされた庭園
正門には三本マストの帆船が描かれたフェルナード家の紋章が掲げられていた
馬車は正門前で静かに止まりブロドが扉を開いた
「到着いたしました」
レオンはゆっくりと馬車を降りた
今からは旅人ではない
ノルディア辺境伯としてフェルナード伯爵との商談へ臨む




