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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
フェルナードの聖女と覚悟
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第154話 漁師の勘

朝日が海を黄金色に染めていた

穏やかな波が船をゆっくり揺らす

カミュとレオンは並んで竿を垂れていた

海の上は静かだった

聞こえるのは波の音と時折飛んでくるカモメの鳴き声だけ

グッと竿先が大きく沈む

レオンは落ち着いて竿を立てた

魚が勢いよく走が無理には引かない

魚の力に合わせ 糸の張りだけを保ちながら少しずつ距離を縮めていく


「いいぞ」


カミュは腕を組みながら頷いた

魚が弱った瞬間

レオンはゆっくりと巻き上げる

銀色の魚が海面へ姿を現した


「そのままだ!」


「はい!」


船際まで寄せるとカミュが素早く網を入れる


「よし!」


魚が船の上で勢いよく跳ねた


「二匹目だ!」


カミュは嬉しそうに笑う


「いい調子だな!」


レオンも小さく微笑んだ


「ありがとうございます」


魚を箱へ入れると

再び餌を付け海へ投げ入れる

それから十分ほど経った頃

また竿先が揺れた

コツッ

コツコツッ

グッ

レオンは迷わず竿を立てる

今度は先程よりも重い

魚は左右へ大きく走った

それでもレオンは焦らない

魚の動きを見ながら糸を送りそして巻く

また送り返す

無駄な力は入っていない

カミュはその様子をじっと見つめていた


「……」


やがて魚の動きが鈍くなる

レオンは静かに巻き上げ船際まで寄せた


「今だ!」


カミュが網を入れる


「三匹目!」


魚を箱へ放り込むとカミュは魚ではなくレオンを見ていた


「レオン坊」


「はい?」


「本当に海の漁は初めてなんだな?」


「はい…船には乗ったことがありますけど漁は初めてです」


カミュは顎を撫でる


「そうか……」


少し考え込んだあと魚を指差した


「普通はな 魚が掛かったら力任せに引くだから糸を切られたり針を外されたりする 最初はそんなもんだ」


レオンは静かに頷きカミュは続けた


「でもレオン坊は違う 魚を暴れさせるだけ暴れさせて弱ったところを取ってる しかも全然焦らねぇ」


レオンは少し考えた


「その方が確実だと思ったので無理に引くと糸が切れますし魚も余計に暴れますからなるべく落ち着かせた方がいいかなと」


カミュはしばらく黙っていた

そして突然 腹を抱えて笑い出した


「はっはっはっ!面白ぇ坊主だ!漁師ってのはな!何年も海へ出て 失敗しながらそれを覚えるんだ!それを初日でやっちまうとはな!」


レオンは照れくさそうに笑う


「そうなんですか?」


「ああ!」


カミュは大きく頷く


「レオン坊お前さん"漁師の才能"あるぞ!」


レオンは苦笑した


「ありがとうございます そう言ってもらえると嬉しいです」


カミュは満足そうに笑う


「今日はまだ始まったばかりだ!もっと大物を釣るぞ!」


カミュが餌を付け替えながら笑う


「この辺りはな 小物だけじゃねぇたまにとんでもねぇ奴が掛かる」


レオンも新しい餌を付ける


「大物ですか?」


「ああ」


カミュは海を見つめた


「五十キロを超えるような奴もいる そいつを釣り上げた日は港中の酒場で自慢話だ」


レオンは少し目を丸くした


「そんなに大きい魚がいるんですね」


「いるさ だから海は面白ぇ」


二人は再び竿を投げ入れた

穏やかな時間が流れる

波が船を揺らし潮風が頬を撫でる

その時だった


ググッ


レオンの竿先が僅かに震えた

小さな当たりだった

レオンはすぐには合わせない

魚が餌を飲み込むのを待つ


コツ


コツコツ


そして


グンッ!!


竿先が海面へ引き込まれた

レオンは静かに竿を立てる

その瞬間


ギィィィッ!!


リールが甲高い音を立てた

糸が勢いよく海へ引き出される


「でかい!」


カミュの表情が変わる

魚は一直線に沖へ走った

レオンは無理に止めない

糸が切れないように力を逃がす


「そのままでいい!」


カミュが叫ぶ


「無理に止めるな!」


「はい!」


魚は何度も方向を変え

船の下へ潜ろうとする

レオンは竿を左右へ動かしながら糸の角度を調整した


「落ち着いてるな」


カミュは感心したように呟く

普通なら慌てて力任せに引く場面だった

だがレオンは終始冷静だった

やがて十分ほど経った頃

魚の勢いが少しずつ弱くなる

レオンはゆっくりと糸を巻いた

巻いては止め

また巻く

少しずつ距離を縮めていく

海面に大きな影が浮かび上がった


「おお……!」


カミュが目を見開く

銀色に輝く巨大な魚だった


「これは……!」


魚は最後の力を振り絞るように暴れた

バシャァッ!!と海水が大きく跳ね上がる

だがレオンは慌てない

魚が再び弱るのを待ち

静かに船際まで寄せた


「今だ!」


カミュが大きな網を海へ差し入れる

魚をすくい上げ 勢いよく船へ引き込んだ

ドンッ!!と音が鳴り響き船が僅かに揺れる

巨大な魚が甲板の上で暴れ回った


「でけぇ!」


カミュは思わず叫ぶ

魚は一メートル近い大きさだった

しばらく暴れていたが やがて静かになる

カミュは魚を見つめ それからレオンを見た


「……初日でこんなの釣る奴があるか」


呆れたように笑う

レオンは困ったように頭をかいた


「運が良かっただけですよ」


カミュは首を横に振る


「違うな 運だけじゃここまで綺麗には釣れねぇ」


そう言って豪快に笑った


「港に戻ったら皆驚くぞ!今日の主役はレオン坊だ!」


レオンは苦笑しながら巨大な魚を見つめた

潮風が心地よく吹き抜け

穏やかな海には再び静かな時間が流れ始めていた

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