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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
フェルナードの聖女と覚悟
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第152話 魚屋の夜

昼過ぎまでにはカミュの釣った魚は売れて無くなり

レオン達の手伝いもあり早めにマリナ達の家に行く事になった

魚屋の隣に建つ家は決して大きくはなかった

木造の温かみのある家

玄関先には小さな花壇があり

色とりどりの花が咲いている

カミュが勢いよく扉を開けた


「ただいま!って誰もいねぇけどな!」


そう言って豪快に笑う

マリナは呆れたように肩をすくめた


「あんたねぇ 昔からその癖直らないね」


「帰ったらただいまだろ!一人でも言う当たり前だ!」


「はいはい」


二人のやり取りにレオンとクロエは思わず笑みを浮かべた


「さあ入っとくれ」


「お邪魔します」


家へ入ると魚を焼く香ばしい匂いが広がっていた

決して豪華ではない

だが綺麗に掃除され

大切に使われていることが伝わってくる

レオンは部屋を見回した

壁には一本の古い釣り竿

大漁だった日の魚拓

そして一枚の家族絵が飾られている

幼い少女を真ん中にカミュとマリナが笑っていた

レオンは自然とその写真へ目を向ける

マリナも気付いたらしい

少しだけ懐かしそうに微笑んだ


「昔の写真さ まだあの子が小さかった頃だよ」


それ以上は語らない

レオンも深くは聞かなかった


「適当に座って待ってておくれ 今日は腕によりをかけるからね」


マリナは台所へ向かう

カミュも魚を持って後を追った


「俺も手伝うぞ!」


「邪魔だからあっち行っとくれ!」


「何でだよ!」


「味見ばっかりするからさ!」


「味見は大事だろ?!」


夫婦のやり取りにクロエは吹き出した


「ブッ……本当に仲良いね」


「ああ」


レオンも自然と笑う


「夫婦ってこんな感じなのかな……」


「どうだろ……」


クロエは少し考え小さく肩をすくめた


「僕も分かんないや」


レオンも苦笑する


「俺もだ」


二人が話している間にも

台所から包丁の音が響いてくる

トントントンと魚を捌く音

それとカランと鍋の蓋が鳴る音

香ばしい匂いが部屋いっぱいに広がっていく

クロエのお腹が小さく鳴った


ぐぅ……


「あっ……」


クロエは真っ赤になって俯く

レオンは思わず笑った


「腹減ったな」


「笑わないでよ……」


クロエは頬を膨らませる


「朝からずっと歩いてたんだから」


「それもそうだな」


そんな二人の様子を見ていたカミュが

台所から顔を出した


「もう少し待ってろ!今日は飛び切りうめぇ魚を食わせてやる!」


「期待してます」


レオンがそう返すとカミュは満足そうに笑った


「その返事が聞きたかった!」


再び台所へ戻っていく

クロエとレオンは静かに部屋を見回した

温かな家

笑いの絶えない夫婦

どこか懐かしさを感じる空間だった

気付けば自然と心が落ち着いていた

しばらくすると台所からマリナの声が聞こえた


「出来たよ!」


食卓へ次々と料理が並べられていく

焼き魚

煮魚

魚の汁物

そしてレオンが捌いた刺身

食卓いっぱいに海の幸が並んでいた


「さあ食べな!冷める前が一番美味しいよ」


四人は席へ着く


「いただきます」


レオンは刺身を一切れ取り

シャーユを少し付けて口へ運ぶ

魚の甘みと旨味が口いっぱいに広がった


「……美味しい」


思わず声が漏れる

マリナは嬉しそうに笑った


「だろ?朝獲れだからね」


クロエも焼き魚を頬張る


「これ 美味しい!こんな魚初めて食べた!」


カミュは豪快に笑った


「港町の魚は最高だからな!毎日食っても飽きねぇ!」


賑やかな食卓だった

料理の話

港町の話

ノルディアの話

笑い声は絶えない

食事も終わり

マリナがお茶を淹れる


「どうだった?港町の魚は」


レオンは頭を下げた


「とても美味しかったです ごちそうさまでした」


クロエも満足そうに息を吐く


「全部美味しかった また食べたいな」


マリナは嬉しそうに微笑んだ


「いつでもおいで たくさん食べさせてあげるよ」


するとクロエが立ち上がる


「それじゃボクは宿へ戻るね」


レオンは少し驚く


「もう戻るのか?」


「うん レオンは明日朝早いでしょ?それにブロドに迎えの時間ずらして貰う連絡もしないとだし まぁボクは漁に行かないしその後宿で寝るよ」


カミュは頷いた


「そうか また明日だな!」


「うん!」


クロエはレオンを見る


「寝坊しないようにね」


「分かってる」


「本当かなぁ」


クロエは笑いながら玄関へ向かう


「それじゃまた明日」


「また明日」


クロエはカミュとマリナへ一礼すると

夜の港町を宿へ向かって歩いて行った

その姿が見えなくなるとマリナは立ち上がる


「それじゃレオン君 部屋を案内するね」


二人は二階へ上がる

廊下の一番奥でマリナは扉を開けた


「ここだよ」


部屋の中は綺麗に掃除されていた

木製の机

本棚

窓際には花瓶が一つ

そして部屋の中央には一つのベッド

誰も使っていないはずなのに

今でも大切にされていることが伝わってくる


「今日はここを使っておくれ 娘の部屋だから少し女の子らしいけど」


マリナは照れくさそうに笑った

レオンは静かに頭を下げる


「ありがとうございます」


「明日は日の出前に起こすからね」


「はい」


マリナは優しく微笑み

静かに部屋を後にした

レオンは窓を開ける

夜の潮風が静かに吹き込み

港から船乗り達の話し声が微かに聞こえてくる


「明日は漁か……」


小さく呟くとレオンは静かにベッドへ横になった

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