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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
フェルナードの聖女と覚悟
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第151話 港町ポートミル

馬車は石畳の道へ入った

窓から潮風が吹き込む

鼻をくすぐる塩の香り

遠くから聞こえるカモメの鳴き声

港で荷物を運ぶ人々の掛け声

今まで通ってきた街とはまるで違う活気だった


「到着しました」


御者台からブロドが声を掛ける

レオンとクロエは馬車を降りた

目の前には王国有数の港町ポートミルが広がっていた

港には大小様々な帆船が並び

荷役を行う人々が忙しそうに動き回っている

遠くには教国の旗を掲げた商船

さらに魔導王国の紋章が描かれた船も停泊していた

レオンは港を見渡す


「思った以上に大きいな」


ブロドは嬉しそうに頷いた


「ポートミルはエルグランド王国 最大の港町です 教国や魔導王国との貿易も盛んでございます 毎日多くの商人や船乗りが訪れます」


市場からは威勢の良い声が響いていた

海老

果物

香辛料

魔導具

様々な商品が並んでいる

レオンは思わず感心する


「商業で栄えているっていうのはこういうことか」


クロエは懐かしそうに微笑んだ


「ここは売る物さえあれば何でも売れる町だからね 商人なら一度は憧れる町だよ」


ブロドは二人へ向き直る


「私はこの後 商会へ戻らなければなりません明日の朝に宿へお迎えに参ります どうぞごゆっくり町をご覧ください」


レオンは頷いた


「ありがとうブロド」


クロエも軽く手を振る


「また後でね」


ブロドは深く一礼すると馬車へ乗り込み

そのまま商会の方角へ走り去っていった

残ったのはレオンとクロエの二人だけだった

クロエは大きく伸びをする


「さて……まずどこ行く?」


レオンは辺りを見回す


「特に決めてない 気になった店を見て回るか」


「賛成」


二人はゆっくり市場を歩き始めた

港町らしく魚屋が多い

どの店にも朝獲れの魚が所狭しと並べられている

ポートミルの町を歩き回っていると

その中の一軒の前でレオンは足を止めた

木箱の上へ綺麗に並べられた魚

透き通るような身

今にも跳ねそうなほど新鮮だった


「美味しそうだな」


その呟きを聞いた女性が顔を上げる

肩まで伸びた茶色い髪 優しい青い瞳 日に焼けた健康的な肌 明るい笑顔がよく似合う女性だった

女性は笑顔で魚を持ち上げる


「朝獲れだからね 今なら生でも食べられるよ」


「食べてみたいですね」


女性は嬉しそうに笑う


「買っていくかい?」


レオンは少し困ったように頭を掻いた


「買いたいんですが……料理する場所が無いんです」


「あー」


女性は納得したように頷く

クロエが口を開いた


「厨房借りたら?」


女性はクロエを見ると豪快に笑った


「ははは!魚買ってくれるなら好きに使っていいよ!裏に厨房があるからね」


「本当ですか?」


「もちろんさ その代わり……」


女性は木箱から二匹の魚を取り出した


「この二匹がおすすめだよ 今日一番脂が乗ってる」


レオンは魚を見比べる


「じゃあその二匹をお願いします」


「毎度あり!」


女性は手際よく魚を包み始めた

その様子を見ながらレオンが尋ねる


「味付けは何がおすすめですか?」


「焼くなら塩でも美味しいけど 生ならシャーユだね」


「シャーユ?」


女性は店の奥から小さな陶器の瓶を持ってきた

蓋を開けると香ばしい香りが漂う


「豆を発酵させて作る調味料さ 港町じゃ一家に一本は置いてあるよ 少し舐めてみるかい?」


レオンは頷いた

女性は小皿へ少量垂らす

レオンは指先へ付けて口へ運んだ


「……」


濃い旨味

程よい塩味

香ばしい風味

前世で食べた醤油によく似ていた


「美味しいですね」


思わず笑みが漏れる

女性は満足そうに笑った


「魚によく合うんだよ 一本持っていくかい?」


「お願いします」


レオンは即答した

女性は嬉しそうに頷く


「それじゃ裏へおいで」


三人は店の裏へ回った

そこには漁師町らしい広い厨房があった

大きなまな板によく手入れされた包丁に焼き台

そして流し場まで揃っている

レオンは包丁を手に取った

刃を軽く確かめる


「良い包丁ですね」


「毎日使うからね」


女性は腕を組んで笑う

レオンは魚をまな板へ置いた

包丁を静かに入れる

迷いの無い動きだった

鱗を落とし腹を開き内臓を取り出す

血合いを丁寧に洗い流す

そして骨に沿って包丁を滑らせる

スッと美しい切り口だった

クロエは目を丸くする


「レオンって料理出来るの?」


レオンは首を横へ振った


「捌くだけだから料理じゃないだろ」


女性は感心したように何度も頷く


「いやいや 大したもんだよ 魚は毎日見てるけど ここまで綺麗に捌ける人はそうそういない」


レオンは照れくさそうに苦笑した


「そんなに褒められるほどじゃありませんよ」


「謙遜するねぇ」


女性は笑いながら切り身を眺める


「この腕なら十分商売になるよ」


その時 店の表から大きな声が響いた


「マリナー!戻ったぞー!」


女性は笑顔になる


「帰ってきたね」


「うちの旦那だよ」


厨房の外から重たい荷物を下ろす音が聞こえる

「おーい マリナー!戻ったぞー!」


威勢の良い声と共に一人の男が店へ入ってきた

青い髪 日に焼けた肌 鍛えられた体

黒い瞳には海の男らしい力強さが宿っている

肩には大きな魚を担いでいた

男は厨房を覗き込み目を丸くする


「おっ?……客か?」


マリナは笑って頷く


「そうさ 魚を買ってくれたお客さんだよ あーそう言えば自己紹介がまだだったね」


マリナはレオン達へ向き直る


「私はマリナこの魚屋を旦那と二人でやってるんだ」


レオンは軽く頭を下げた


「レオンです こちらはクロエ」


クロエも頭を下げる


「よろしく」


男はレオンの前まで歩いてくる

そしてまな板の上を見る

綺麗に三枚へ下ろされた魚

骨にはほとんど身が残っていない

男は驚いたように目を見開く


「坊主が捌いたのか?」


「はい」


男は魚を手に取り断面を眺める


「初めて見る魚じゃねぇよな?」


「初めてですよ?ポートミルへ来るのも初めてなので」


男はしばらく魚を眺め

やがて豪快に笑った


「はっはっは!初めてでこれか!大した腕だ!」


男は右手を差し出す


「俺はカミュ マリナの旦那だ」


レオンも手を握り返した


「よろしくお願いします」


カミュは満足そうに頷く


「礼儀もいいじゃねぇか!」


マリナは笑いながら口を開く

レオンはカミュの担いでる魚に目を向けた


「これは釣って来た魚ですか?」


「網か釣りか分かるのかい?」


マリナが驚いた表情を見せた

カミュは嬉しそうにレオンを見る


「そうだ俺は大体釣りの漁をしている!興味あるのか?」


「はい!一度見てみたいと思っていました」


「だったら明日一緒に来るか?見るより乗った方が面白ぇぞ?」


突然の誘いだった

レオンは少し驚いたがクロエを見る

クロエは頷いていた


「ぜひお願いします」


レオンは笑顔で答えた


「決まりだな!」


カミュは豪快に笑う

するとマリナが何かを思い出したように言う


「朝は日の出前だからね 宿から来るのは大変だろ?今日はうちに泊まっていきな 娘の部屋が空いてるから使えばいいさ」


レオンは少し首を傾げた


「娘さんがいるんですか?」


マリナは一瞬だけ言葉を止める

そして少し頬を掻きながら微笑んだ


「ああ……今は王都で暮らしてるんだ」


それだけ言うと笑顔で手を叩く


「さあ!今日は腕によりをかけて料理を作るよ!あんた達も食べていきな!」


カミュも豪快に笑った


「今日は大漁だったからな!港町の魚を腹いっぱい食わせてやる!」


「やったー」

クロエは飛び跳ねて喜んだ

レオンは頭を下げた


「ありがとうございます それではお言葉に甘えます」


こうしてレオンは港町で出会った漁師夫婦の家へ泊まることになった

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