第148話 街道を南へ
ノルディア邸を出発して六日が過ぎた
竜車はフェルナード領へ続く街道を順調に進んでいた
青く澄んだ空 街道の両脇には緑豊かな森と草原が広がる
春を終え夏が近付いた王国は暖かな風が吹き抜けていた
前方ではリックを先頭に騎士達が周囲を警戒しながら進んでいる
後方にも数名の騎士を配置し 三台の竜車を囲むように護衛していた
「思ったより商隊が多いな」
レオンが窓の外を眺めながら呟く
リックは振り返り頷いた
「旦那 この街道はフェルナード領へ続く交易路です 教国や魔導王国から運ばれてきた荷もここを通ります」
「なるほど」
レオンは静かに頷いた
荷馬車には小麦
木材
布
魔導具
様々な荷物が積まれている
商人達も忙しそうに街道を行き交っていた
クロエも外を眺めながら笑う
「もうフェルナードの影響が出てるね」
「ああ」
「まだ領地にも入ってないのにな」
その時 前方を走る騎士が大きく手を上げた
「リック隊長!前方に大規模な商隊です!」
リックはすぐに前方を確認する
「速度を落とせ!追い越さず最後尾へ付く 周囲の警戒も続けろ」
「「はっ!」」
騎士達は素早く動き始めた
その様子を見ていたクロエが思わず吹き出す
「リックがちゃんと隊長してる」
リックは呆れたように振り返った
「お嬢 俺はこれでも第一部隊隊長ですよ普段の旦那の前が緩いだけです」
レオンは苦笑する
「否定はできないな」
クロエは肩を震わせながら笑った
「いつもは
『旦那 今日の昼ご飯は何ですか?』
『旦那 今日も書類多いですね』
そんなことばっかり言ってるもん」
リックは頭を掻いた
「仕事と普段は別です 任務中くらい格好付けさせてください」
その返事に竜車の中は笑いに包まれた
やがて前方の商隊へ追い付く
荷馬車は十数台
多くの護衛に囲まれ
整然と街道を進んでいた
クロエは荷馬車へ描かれた紋章を見て目を見開く
「あっ フェルナードの商会だ」
レオンも視線を向ける
三本マストの帆船
風を受けて大きく帆を広げた紋章
フェルナード伯爵家の紋章だった
「伯爵家直属の商隊か?」
「うん 多分 王都へ向かう荷物だと思う」
クロエは感心したように眺める
「すごい量だね」
「毎日こんな商隊が行き来してるんだな……物流で栄える領地か……実際に見ると迫力が違うな」
リックは前を見据えたまま口を開く
「旦那 あと四日ほどでフェルナード領です その頃にはもっと商隊も増えるでしょう」
レオンは静かに笑みを浮かべた
「ますます楽しみになってきたな」
王国最大級の港町 ポートミル
レオン達を乗せた竜車は
多くの商隊と共に南へ向かって走り続けた




