第145話 フェルナード伯爵からの招待状
秘薬の製造を終えて数日
穏やかな昼下がり レオンは執務室で書類へ目を通していた
コンコンと扉が叩かれる
「入ってくれ」
「失礼いたします」
入室したのはゼムだった
その手には一通の封筒が握られている
「ぼっちゃま フェルナード伯爵家より書状が届いております」
レオンは顔を上げた
「やっと来たか」
ゼムは机の上へ封筒を置く
封蝋には三本マストの帆船 風を受けて帆が大きく広がる紋章が刻まれていた
フェルナード伯爵家の紋章だった
レオンは封を切り手紙を読み始める
しばらく目を通した後 小さく笑った
「レイモンド伯爵らしいな」
ちょうどその時クロエが執務室へ入ってきた
「あれ?手紙?」
「ああ」
「フェルナード伯爵からだ」
クロエは興味深そうに近付く
「何て書いてあるの?」
レオンは手紙へ目を落としたまま答える
「夜会のお礼と正式にフェルナード領へ招待したいそうだ あと港町ポートミルの視察と専属商人同士の商談」
レオンは少し笑う
「領内も案内してくれるらしい」
クロエも自然と笑顔になる
「ちゃんと準備して待ってくれてたんだね」
「ああ 日程も向こうで調整してある 都合が良ければいつでも歓迎するそうだ」
ゼムが静かに口を開く
「ぼっちゃま いかがなさいますか?」
レオンは迷うことなく答えた
「もちろん行く 約束したからな」
クロエも力強く頷く
「私も準備するよ 向こうの"専属商人さん"とも話したいことがいっぱいあるし」
「あぁ頼む」
レオンは頷いた
「ボア肉の取引だけじゃない 保冷方法の話もある 教国との交易にも関わる話だからな」
ゼムは一礼する
「承知いたしました それでは出発の準備を進めます 護衛はリック殿を隊長にして編成をお願いしておきます」
「ああ それで頼む」
レオンはもう一度手紙へ目を落とした
港町ポートミル 王国最大級の港
そして フェルナードの聖女 フローラ
新たな出会いと新たな技術
ノルディアの未来をさらに大きく変える旅がいよいよ始まろうとしていた




