第144話 秘薬の補充
王都から戻り約一か月が過ぎていた
ノルディア領は今日も慌ただしく動いている
ボア肉事業
魔力草事業
ポーション事業
全てが順調に進み
領内には以前より活気が溢れていた
執務室ではレオンが書類へ目を通している
コンコンと静かなノックが響く
「入ってくれ」
扉が開きエミルが一礼した
「失礼いたします レオン君 お時間よろしいでしょうか」
「ああ どうした?」
エミルは机の前まで歩み寄る
「秘薬についてです」
その言葉にレオンは書類から顔を上げた
「もうそんな時期か」
「はい 現在保管しております秘薬も残り少なくなって参りました そろそろ新たに製造した方がよろしいかと思います」
レオンは静かに頷く
「そうだな 俺の分だけじゃない セリオスさんへ送る分も作らないといけないな」
エミルも頷いた
「はい 教国へ送る分も考えますと 本日製造するのがよろしいかと」
そこへ書類を抱えたクロエが執務室へ入ってきた
「あれ?何の話?」
「秘薬だ」
レオンが答える
「そろそろ補充する」
クロエは納得したように頷いた
「もう一か月だもんね 切らしたら大変だ」
レオンは立ち上がる
「作れる量はいつも通りか」
エミルは静かに答えた
「はい 秘薬は非常に大量の魔力を必要とします 現在製造できるのは レオン君と私だけです」
レオンは苦笑する
「やっぱりそうか」
エミルは続けた
「ラッツとリンもポーションの製造は立派にこなしております ですが秘薬を製造するだけの魔力量にはまだ届いておりません 無理をすれば魔力切れを起こす危険もございます」
レオンは迷わず頷いた
「だったらやらせたら駄目だな……あいつらはまだ子供だ無理をさせる必要はない」
エミルは安心したように微笑んだ
「私も同じ考えです」
クロエも笑顔で頷く
「ポーションはラッツとリン 秘薬はレオンとエミル ちゃんと役割分担できてるもんね」
「ああ」
レオンは小さく笑った
「それじゃあ作るか」
四人は孤児院へ向かう
工房では ラッツとリンが今日も真剣な表情でポーションを製造していた
レオン達に気付くと二人は嬉しそうに頭を下げる
「レオン様!」
「おはよう!」
レオンは笑みを浮かべる
「頑張ってるな 今日は秘薬を作りに来た」
ラッツとリンは尊敬の眼差しでレオンとエミルを見つめた
二人だけが作れる秘薬
それはノルディアだけではなく遠く離れた教国で暮らす一人の青年の命も支える大切な薬だった




