第142話 現在の資産
執務室には静かな空気が流れていた
レオンはセリオスからの手紙を丁寧に畳み机へ置く
「定期的に作るしかないな…俺の分とセリオスさんの分はこれからは切らさないようにしよう」
クロエは安心したように微笑む
「それが一番だね」
レオンは小さく頷いた
「そうだな」
するとゼムが一冊の帳簿を机へ置いた
「ぼっちゃま こちらは王都滞在中までの収支報告でございます」
レオンは帳簿を開く
ボア肉事業
宿場町
魔力草事業
ポーション事業
それぞれの利益が綺麗にまとめられていた
しばらく数字を追っていたレオンは小さく息を吐く
「順調だな」
ゼムは頷く
「はい 全て予定以上の利益となっております」
クロエも嬉しそうに笑った
「王都での取引もかなり順調だったよ ボア肉も評判だったし魔力草の話も広まってきてる これからもっと忙しくなりそう」
レオンは帳簿を閉じた
「それで現在の資産は?」
ゼムは迷うことなく答える
「金貨一万〇一四二枚でございます」
レオンは少し目を見開いた
「一万枚を超えたのか」
ノルディアを継いだ頃には想像もできなかった金額だった
クロエも嬉しそうに頷く
「やっとここまで来たね」
「ああ」
レオンは静かに頷く
「でも……まだ半分だ」
目標は金貨二万枚
クラリスを救うために必要な金額
残り九八五八枚
まだ決して少ない数字ではない
クロエは真剣な表情になる
「でも半分まで来たんだよ ボア肉も魔力草もポーションもまだ始まったばかり フェルナードとの取引が始まれば もっと増えると思う」
ゼムも静かに続ける
「現在は全ての事業が軌道に乗り始めた段階です 今後は利益も安定し さらに伸びるでしょう」
レオンは窓の外へ目を向けた
春が終わり 夏が近付くノルディア
雪解けを終えた大地には鮮やかな緑が広がっている
父が命を懸けて守り続けた領地
そして 自分が必ず豊かにすると決めた領地
「二万枚」
レオンは静かに呟く
「必ず貯める」
その声に迷いはなかった
するとクロエが何かを思い出したように手を叩く
「あっ……フェルナードへ行くなら 手土産も考えないとね」
レオンは苦笑する
「また その話か」
「商談だからこそだよ 第一印象は大事なんだから それに ポートミルには珍しい物もいっぱいあるし」
レオンは笑みを浮かべた
「その辺はクロエに任せる」
クロエは胸を張る
「任せて 絶対成功させるよ」
レオンも力強く頷いた
「ああ」
フェルナードとの新たな商談
そして 港町ポートミルへの訪問
ノルディアの未来を大きく変える新たな一歩が
静かに近付いていた




