第140話 ノルディアへの帰路
翌朝 王都は朝から多くの人で賑わっていた
市場には商人達の威勢の良い声が響き
荷馬車や竜車が忙しそうに行き交う
レオンは宿へ戻ると部屋の扉を開けた
「戻ったぞ」
机へ向かって帳簿を見ていたクロエが勢いよく振り返る
「レオン!夜会終わった?」
「ああ 特に問題もなかった」
クロエは立ち上がりレオンの前まで歩いてくる
「どうだった?面白い話あった?」
レオンは軽く頷く
「あったぞ!フェルナード伯爵と話をしてきた」
その名前を聞いた瞬間
クロエは少し驚いた表情を浮かべた
「レイモンド様?」
「ああ 知ってるのか?」
クロエは呆れたように笑う
「僕は元公爵令嬢だよ?中立派革新派の中心人物ぐらい知ってる それに昔 "潜伏"していた時にもフェルナード領には何度か行ったし ポートミルにも行ったことあるよ」
レオンは納得したように頷いた
「そうだったな それで ボア肉を専属商人が直接買い付けたいらしい あと保存方法についても教えてほしいそうだ」
クロエはすぐに商人の顔になる
「なるほど……フェルナードなら欲しがるね 魚介類が名産だから」
「ああ それで一度フェルナード領へ来てほしいって誘われた 俺も港町を見てみたいと思って引き受けた 商売の話もあるし クロエも一緒に来てほしい」
クロエは嬉しそうに笑った
「もちろん!レイモンド様は話の分かる人だから 商談もしやすいと思うよ」
少し考え込んでから口を開く
「それに フェルナードの聖女様にも会うことになるかもしれないね」
レオンは平静を装いながら尋ねる
「そんなに有名なのか?」
「うん!水属性で回復魔法が使えることで有名 領民からはフェルナードの聖女って呼ばれてるんだよ」
レオンは静かに頷いた
「………そうか」
(原作通りだ)
心の中でそう確信する
するとクロエはじっとレオンを見つめた
「…でもね……聖女様に会っても プレゼントとかしちゃ駄目だからね?」
レオンは不思議そうに首を傾げた
「何でだ?」
「……え?」
「親しくもない相手に 何でプレゼントするんだ?そんなこと普通しないだろ?」
クロエは一瞬言葉を失う
確かにその通りだった
レオンが今まで贈り物をした相手は
父グラニウス
セリオス
エミル
そして自分
どれも理由があった
クロエは少しだけ頬を赤くする
「そ そうだけど……約束だからね!」
レオンは苦笑した
「商談に行くだけだぞ? 分かった 分かった」
クロエはようやく笑顔になる
「なら安心」
レオンは荷物を手に取る
「そろそろ帰るか」
「うん!」
二人は宿を後にした
王都を出た竜車は北へ向かって走り始める
フェルナード領との新たな商談
港町ポートミル そしてフェルナードの聖女
様々な出会いが待つ未来へ向かって
レオン達はノルディアへの帰路についた




