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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
フェルナードの聖女と覚悟
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第138話 港町の伯爵

アルベルト・ローゼンベルク公爵は静かにグラスを置くと二人へ穏やかな視線を向けた


「では私は失礼しよう また機会があれば話そう レオン殿」


レオンは深く一礼する


「本日はありがとうございました」


アルベルトは小さく頷くとその場を後にした

レオンは改めて目の前の男性へ向き直る


「改めまして ノルディア辺境伯 レオン・ノルディアでございます」


男性も胸へ手を添え一礼した


「フェルナード伯爵 レイモンド・フェルナードでございます 本日はお話しする機会をいただきありがとうございます」


「こちらこそ お声を掛けていただきありがとうございます」


二人は穏やかに笑みを交わした

レイモンドは静かにレオンを見つめる


「レオン様 一つだけ 年長者として忠告させていただいてもよろしいでしょうか?」


「はい」


レオンは素直に頷いた


「先ほどから私へ敬語を使ってくださっておりますが その必要はございません」


レオンは少し驚いた表情を浮かべる


「ですが レイモンド様は年上でいらっしゃいますし 伯爵でございます」


レイモンドは穏やかに首を横へ振った


「年齢は私の方が上です……ですが 爵位はレオン様の方が上でございます」


レオンは目を丸くした


「辺境伯は 伯爵位と同等ではないのですか?父上からもそのような話は聞いたことがありません」


レイモンドはゆっくりと頷く


「ご存じない方も少なくありません ですが 辺境伯は特別な爵位です」


レオンは静かに耳を傾けた


「辺境伯は他国との国境を預かる領主です 王国最前線の防衛を任される存在 もし辺境伯が敵国へ寝返れば 王国は防衛線を一つ失うことになります それほど重要な役目だからこそ 辺境伯は伯爵よりも高く 公爵と侯爵の間に位置する特別な爵位として扱われております」


レオンは驚きを隠せなかった


「……そうだったのですか 初めて知りました」


レイモンドは小さく微笑む


「グラニウス殿らしいですね ご自身の爵位を誇るようなお方ではありませんでした だからこそ お話しにならなかったのでしょう」


少し間を置きレイモンドは続ける


「礼節を重んじられることは素晴らしいことです……ですが レオン様はノルディア辺境伯であり ノルディア家当主でもございます 必要以上に伯爵である私へ敬語を使われますと 周囲の貴族の中にはノルディア家を軽く見る者が現れるかもしれません 領主とは ご自身だけではなく 家の威厳も背負う立場です どうかご自身の立場にも自信をお持ちください」


レオンは深く頭を下げた


「ご忠告ありがとうございます 勉強になりました」


レイモンドは満足そうに頷く


「それではどうか 私にはお気遣いなく普段通りお話しください」


レオンは少し苦笑した


「分かった それじゃあ お言葉に甘えさせてもらう ありがとう レイモンド伯爵」


レイモンドは穏やかな笑みを浮かべた


「はい その方が私も話しやすくございます」


二人は改めて向かい合う

レイモンドはグラスを静かに置いた


「まずはボア肉事業の成功 おめでとうございます 王都でも大変話題になっております」


レオンは少し照れくさそうに笑う


「ありがとう 思った以上に上手くいったよ 討伐するだけだった魔獣が金になるとは 俺も驚いた」


レイモンドは穏やかに頷く


「魔獣討伐を産業へ変える 私には思い付きませんでした さすがはレオン様です」


レオンは首を横に振る


「俺一人じゃない 専属商人や領民のみんなのおかげだ」


レイモンドはその言葉に小さく微笑んだ


「そのようなお考えだからこそ 領民から慕われるのでしょう」


少し間を置き レイモンドは本題へ入る


「実は本日 お話ししたかったことがございます」


「何だ?」


「フェルナード領では "私の専属商人"がボア肉の買い付けを希望しております 可能であれば ノルディアまで直接伺い 継続して取引をさせていただきたいのです……もちろん価格は正式に協議いたします………それと 保存方法などの技術も ご教授いただけるのであれば 相応の対価をお支払いいたします」


レオンは腕を組み 少し考える


「専属商人が取りに来るなら問題ない 価格はその専属商人とノルディアのクロエで相談して決めてもらう」


レイモンドは安堵したように微笑んだ


「ありがとうございます 必ず双方に利益のある取引にいたします」


レオンはふと尋ねる


「そういえば フェルナード領は港町が有名だったな」


「はい」


レイモンドの表情がさらに柔らかくなる


「領都フェルナードの先には ポートミル港町がございます 王国最大級の港を有し 教国や魔導王国との交易で栄えております 港には毎日のように大型船が入港し 多くの商人で賑わっております」


「羨ましいな……ノルディアには海がないから 港町には少し憧れる」


レイモンドは微笑む


「ぜひ一度お越しください 新鮮な魚介をご馳走いたします」


「魚介か……それも羨ましい」


レオンは興味深そうに頷く


「王都でも食べられるが やっぱり違うのか?」


「ええ 鮮度がまるで違います 本来であれば 王都でも港町と変わらぬ味を楽しんでいただきたいのですが」


レイモンドは少しだけ苦笑した


「距離がございますので どうしても鮮度が落ちてしまいます それが長年の悩みなのです」


レオンは静かに頷く


「なるほど」


レイモンドは穏やかな表情のまま続けた


「娘が水属性なのです しかも 水属性でも珍しい 回復魔法を扱えます その力を応用すれば 魚の鮮度を保てないかと考えております ですがまだ 上手くはいっておりませんが……」


レオンの表情がわずかに変わる


「娘さんが 水属性で回復魔法を?」


「はい 今年で十五歳になります 領民からは フェルナードの聖女 と呼ばれております」


その言葉を聞いた瞬間 レオンの心臓が大きく脈打った


(聖女 フローラ………間違いない 乙女ゲームで選ばれなかった攻略対象と結ばれるキャラだ)


本編では大きく物語へ関わることはない

だが 攻略対象達の未来を支える重要な存在だった

レイモンドはそんなレオンの様子に気付かず話を続ける


「機会がございましたら 娘にもお会いいただければ幸いです」


レオンはすぐに表情を戻した


「ああ…………ぜひ会ってみたい」


レイモンドは嬉しそうに頷く


「ありがとうございます きっと娘も喜びます」


夜会の喧騒は今も続いている

この出会いがノルディアとフェルナード

二つの領地を結ぶ始まりになることを まだ誰も知らなかった

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