第136話 王都の夜会
夜会当日 王都の王城は数え切れないほどの灯りに照らされていた
巨大なシャンデリア
磨き上げられた大理石の床
色鮮やかなドレスと礼服を纏う貴族達
王国中の有力貴族が集う年に数度の夜会だった
その入口へ一台の馬車が止まる
扉が開き一人の少年が降り立った
黒髪
青い瞳
黒を基調とした礼服
腰には儀礼用の細身の剣
北の辺境を治める十五歳の領主 レオン・ノルディアだった
クロエは今回同行していない
商人である彼女は夜会へ出席する立場ではなく 王都で商談の確認を行っていた
レオンは一人 会場へ足を踏み入れる
扉が開いた瞬間 周囲の視線が集まった
「ノルディア辺境伯だ」
「まだ十五歳だったな」
「北の戦神の息子か」
小さな囁きが広がる
だが以前とは違う
そこに侮りの視線は少なかった
ボア肉事業や教国との共同事業
ここ一年ほどでノルディアの名は王都でも知られるようになっていた
レオンは気にする様子もなく歩く
まず向かったのは国王の元だった
「陛下 お久しぶりでございます」
レオンが一礼すると 国王は穏やかに笑った
「久しいな レオン!元気そうで何よりだ」
「ありがとうございます」
短く近況を報告し終えると 国王は頷く
「今日は色々な者と話してくるといい 若い頃の繋がりは いずれ必ず財産になる」
「はい」
レオンは再び一礼し その場を後にした
その時だった後ろから声を掛けらた
「レオン殿」
落ち着いた老人の声が聞こえる
振り向くと 一人の老人が立っていた
長い白髪
深い皺
しかし瞳には鋭い知性が宿っている
"王国宰相"
オズワルド・アルカディア公爵だった
レオンはすぐに頭を下げる
「アルカディア公爵閣下」
オズワルドは優しく笑う
「そんなに畏まらなくても構いません……お久しぶりです」
「はい」
少し沈黙が流れる
オズワルドはふと笑みを浮かべた
「そういえば 最近は庶民の服を着て女性と二人 下町へ行っておられるそうですね」
レオンは少し驚いた
「ご存知だったのですか?」
「ええ 王都で多少耳に入りましてね」
オズワルドは楽しそうに続ける
「領主自ら街を見る……とても良いことです 民の暮らしは書類だけでは分かりませんから」
レオンは頷いた
「私もそう思います 実際に歩いてみると色々見えてきます」
オズワルドは満足そうに微笑んだ
「グラニウス殿とはまた違う良き領主になられそうですな」
レオンは少し照れたように笑う
「父上にはまだまだ及びません」
「いえ」
オズワルドは静かに首を振る
「貴方には貴方の良さがあります それを大切になさい」
その言葉にレオンは深く一礼した
「ありがとうございます」
オズワルドは軽く頷くと 別の貴族に呼ばれ歩いて行った
レオンも再び会場を歩き始める
次に向かう先は"ローゼンベルク公爵"だった。




