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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第1章覚醒と別れ

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間章 父親としての思い出

父グラニウスの記憶

レオンが五歳になった日だった。

私は珍しく仕事を休んだ。

討伐

視察

会議

陳情

全て後日に回した。

家臣達は驚いていたが、構わない。

息子の五歳の誕生日くらいは、父親でいたかった。

妻はレオンを産むと、そのまま力尽きて亡くなった。

母親の愛情を受けずに育ってきたレオンには、普段から我慢をさせていた。

そして私は、レオンを肩車して領都を歩いた。


「父上!」


「なんだ?」


「高い!」


「そうか……」


「人が小さい!」


「そうだな」


何がそんなに楽しいのか、レオンはずっと笑っていた。

通りを歩けば、領民達が寄ってきて声を掛けてくる。


「おめでとうございます、若様」


「もう五歳ですか。早いですね」


「ご立派になられましたな」


レオンは、その度に胸を張った。

しばらく二人で、領内の店が並ぶ道を手を繋いで歩いた。

私は息子を見ながら、思いついたように尋ねた。


「レオン」


「うん?」


「もし、最強の剣があるとする」


「さいきょう?」


「ああ、最強の剣だ。どんな魔物でも一撃で倒せる剣だ」


レオンの目が輝く。

本当は少し期待していた。


『民を守るために使う』


『父上を超える剣士になる』


そんな答えを。


「レオン、お前ならどうする?」


レオンは腕を組み、真剣に考え始める。

あまりにも悩むので、私は苦笑した。


「そんなに深く考えるな、ただの戯れ……遊びだ」


しばらくして、レオンは何かを閃いたように明るい顔をした。


「父上!」


「なんだ?」


「四人で順番こ!」


予想外の答えだった。

剣は一本なのに、四人で交代するという。

子供の考えることは、なかなか分からない。


「四人で順番に使うのか?」


「うん! だって、ご飯を食べるもん! それに寝るし、トイレにも行く! だから順番! そうすれば、ずっと戦えるでしょ?」


私は思わず目を瞬かせた。

自分にはない考えだった。

私なら自分で剣を握り、もっと強くなることを考える。

武人の極みを目指したいと思うのが普通だと、勝手に決めつけていた。

だが、この子は違う。

皆で使うことを考え。

皆で守ることを選んだ。

思わず笑みがこぼれる。


「はははっ……なるほどな。確かに、その方が多くの魔物を倒せるな」


その時、甘い匂いが漂ってきた。

レオンが通りの菓子屋を指差す。


「父上! あのお菓子、食べたい!」


最近、王都から帰ってきた料理屋の倅が継いだ店だった。

王都では甘い菓子が人気だそうで、故郷であるノルディアの皆にも食べてもらいたいと、作り始めたのだという。

だが、小麦や砂糖などを多く使うため、どうしても価格が上がってしまっている。


「今日は誕生日だからな……好きなものを買ってやろう」


「ほんと!?」


「ああ。どれでも好きなものを選びなさい」


レオンはその場で飛び跳ね、大喜びした。

そして、突然何かに気付いたように声を上げた。


「あっ!」


「どうした?」


「やっぱり五人!」


「五人?」


レオンは満面の笑みで言った。


「今日の父上みたいに、お休みを作らないと! ずっと働いたら疲れちゃうもん!」


私は一瞬、呆気に取られた。

そして、腹の底から笑った。


「ははははははは!」


領民達が振り返るほどの大声で。

交代制だけでも面白かった。

だが、更に一人増やして休みを作る。

そんな発想は、本当に思いつかなかった。

私は戦うことばかり考えていた。

強くなることばかり考えていた。

だが、この子は違う。

休むことを考えた。

皆が長く働けることを考えた。

皆が無理をしないことを考えた。

その時、私は確信した。

この子はきっと、私よりも良い領主になると。

一人で領地を守る英雄ではなく、皆で守れる仕組みを作る領主に……。

嬉しそうに菓子を抱えて笑うレオンを見ながら、私はそんな未来を思い描いていた。

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― 新着の感想 ―
 今更ここの感想を見てくれるか分かりませんが、心にぐっと来ました。知識チートがあっても助けられないものがある。他とはまた違う物語をありがとうございます。続きも読ませて貰いますね。
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