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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第1章覚醒と別れ
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間章 民の為に生きたグラニウス

執務室の扉が勢いよく開かれた


「辺境伯様!」


騎士が飛び込んでくる

グラニウスは書類から顔を上げた

慌てるのかノックや作法まで飛ばしてる新人兵の方へ目を向けた


「どうした?」


「レっレッドボア討伐隊がグレイムベアと遭遇しました!」


部屋の空気が変わる

グレイムベアは山脈周辺に縄張りを持つ大型魔獣だ

レッドボアとは格が違う


「被害は?」


「現在目立った被害はありません撤退中です!」


「なら問題あるまい」


そう答えた瞬間だった

騎士の顔色がさらに悪くなる


「進路上に孤児院の子供達がおります!」


一瞬の沈黙にグラニウスの目が細くなる

『薬草採取』

あの仕事は自分が許可した、少しでも孤児院の足しになるようにと

孤児院の子供達に働いて得る金の大切さを知って欲しかっただから認めた

ゼムは今レオンと王都に向かって不在だ

グラニウスは立ち上がった


「 私の武具を用意しろ!」


騎士達が凍り付く


「辺境伯様!」


慌てて執事の男性が止めに入る


「なりません!お身体が……」


メイド長がグラニウスの前に立ち行動を制ししようとした

《魔力侵食症》医師からも魔力を使う事を止められている

グラニウス自身もそれは理解しているのだが


「子供達がいる……これは命令だ!」


それだけだった

反論は許さない辺境伯命令

従者達は頭を下げる


「はっ!」


グラニウスは剣を手に取った

まだ動く

まだ戦える。

なら行くそれだけだ


⸻◇⸻


子供達は泣いていた目の前にはグレイムベアの巨大な牙、巨大な爪に怯え誰一人動けないかった

その時、空気を裂く音が鳴り響く

鋭い氷柱がグレイムベア目掛けて飛んできた

氷柱がグレイムベアの顔面へ突き刺さる

魔獣が咆哮した

そしてグレイムベアの標的が子供たちから変わる氷柱の張本人になっでいた

もう子供達ではない


「今の内に子供達を守れ」


低い声

次の瞬間

グレイムベアが突進してきた


「盾隊!前へ!」


ガレスが叫ぶ

重装兵達が飛び出し大盾を並べる


「受けろぉぉぉ!」


大盾とグレイムベアが衝突した

衝撃で数人が吹き飛ぶ

それでも騎士団達は耐える

押し返されながらも必死に時間を稼ぐ

その間グラニウスは動かない

剣を地面へ突き立て魔力を練る

冷気が広がり初めた近くの団員達の息が白くなっていく

騎士達の額に汗が浮かぶ

まだかまだかと誰もがそう思った

そしてグラニウスが目を開き剣を抜いた


「離れろ」


ガレスが叫ぶ


「総員後退!」


盾兵達が飛び退きグレイムベアが自由になる

その瞬間空が暗くなった

空には巨大な氷塊

城壁ほどもある氷の塊が上空に浮かんでいた

グラニウスが剣を振り下ろす


「落ちろ」


その短い一言で氷が急落下した。



ドゴーンと轟音が鳴り響く

森が揺れ大地が沈む

衝撃波が吹き荒れ冷気と砂埃で視界が遮られた

時間が経つと見え始め

そこには巨大な氷の下敷きになったグレイムベアがいた

子供達は助かったと騎士達も安堵する


だがまだ終わっていなかった

上空から影が落ち一人の騎士が空を見上げ叫んだ


「ワ……ワイバーン!」


空を埋める五体のワイバーン

一体でも災害級の魔獣が五体翼を広げ空を旋回していた

羽を広げればま屋敷ほどのその巨体な竜が咆哮をあげ空気が震えた

森の木々が揺れ遠くで避難していた子供達が怯えた声を上げている

グラニウスは剣を握り静かにそして目を閉じた

体内に残された魔力をかき集めていた

全て……一滴残らず

魔力侵食症の身体の負担を考える事をやめ溜めた魔力を更に剣へ流し込む

大地が軋む

空気が凍り始め草木が白く染まる

避難していた騎士達が息を呑んだ。


「まさか……」


ガレスの顔が青ざめる

止めなければならない

だがもう遅い

グラニウスの周囲に膨大な魔力が渦巻いていた

剣から氷が伸びる

さらに伸びる

さらに

さらに

やがてそれは城壁すら見上げるほどの巨大な氷剣となった

まるで神話に登場する巨人の武器

大地へ突き立つだけで山を割りそうなほどの質量

騎士達は言葉を失う誰も見たことがない

全盛期のグラニウスですら滅多に使わなかった奥義

そして今の身体で使えば何が起こるのかも

皆分かっていた

グラニウスは空を見上げる

ワイバーン達がグラニウス目掛けて迫る

あと数秒……その時、グラニウスは小さく呟いた


「砕け散ろ」


次の瞬間巨大な氷剣が振り下ろされた

轟音が鳴り響き世界が白く染まる

剣圧と共に放たれた絶対零度の斬撃が前方へ走る。

地面が凍り森が凍り空気そのものが凍る

巨大な氷河が世界を飲み込むように広がっていく。

逃げる暇などもうない、先頭のワイバーンが凍結する

続いて二体、三体、四体、五体

空中で完全に凍り付いた魔獣達はそのまま砕け散った

氷像となった巨体が粉雪のように崩れていく

一瞬だった本当に一瞬

五体のワイバーンは跡形もなく消滅した

静寂の風の音だけが響く

誰も言葉を発せないただ目の前の光景を見つめる

前方数百メートル森そのものが巨大な氷原へ変わっていた

それはまるで《冬の神》が剣を振るった跡だった

そしてカラン――と金属音が響く

グラニウスの剣が手から落ちその巨体がゆっくり傾く

ガレスが目を見開いた


「閣下!」


駆け出すのだが間に合わない

グラニウスはその場に膝をつきそして前へ倒れた

雪のような氷の欠片が舞う

ガレスはグラニウスを仰向けに動かした

呼吸はあるだが弱いあまりにも弱い

魔力は完全に枯渇していた

ガレスは震える手で主君を抱き起こす

グラニウスは薄く目を開いた

青い空を見上げる

そして小さく呟いた


「……無事か」


その言葉にガレスは唇を噛み締める

自分の身体ではない戦果でもない

最後まで気にしたのは子供達や騎士達それに領民の事だった


「全員無事です……!」


声が震える


「子供達も……騎士達も……全て全員無事です!」


グラニウスは小さく頷いた

それを聞いて安心したようにほんの少しだけ

口元が緩んだ

そして再び目を閉じる

その姿を見ながらガレスは理解した

だがその代償はあまりにも大きかった

本当は2話で死ぬはずでしたがあれよあれよと書いてたらこんなことに……ごめんなさい

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