第132話 魔法陣の違い
翌日 昼食を終えた二人は執務室で机を挟んで向かい合っていた
エミルは昨日贈られた
黒いリボンで長い赤髪を一つに結んでいる
高い位置で揺れるポニーテール
黒を基調としたリボンにはエメラルドグリーンの糸で繊細な刺繍が施され
鮮やかな赤髪をより一層引き立てていた
レオンはその姿を見ると自然と笑みを浮かべる
「付けてくれてありがとう」
エミルは一瞬目を丸くする
そして 嬉しそうに微笑んだ
「こちらこそ ありがとうございます とても気に入っています」
レオンも微笑み返した
「それじゃ……始めようか」
「はい」
机の上には
何枚もの魔法陣が広げられている
修正前
修正後
そして最初に別々で組み上げた魔法陣
レオンは腕を組みながら呟く
「起動はするようになった でも魔力が薄くなってしまった 何が違うんだ?」
エミルは一枚の魔法陣を手に取る
「レオン君 こちらを見てください」
レオンは席を立ち
隣へ移動した
エミルは一か所を指差す
「ここです この隙間とこちらの隙間です」
レオンも覗き込む
「少し広さが違うな」
「はい 抽出の強さはこの広さで調節します 少し広げれば強く 少し狭めれば弱くなります ほんの僅かな違いですが抽出量は大きく変わります」
レオンは感心したように頷く
「なるほど……」
エミルは続けて別の場所を指差した
「それと こちらです 右側の魔力草から抽出する魔力が少し小さく設定されています」
レオンは目を見開く
「そんなことまで分かるのか」
「……幼い頃に魔法陣を学びましたので」
エミルは穏やかに微笑んだ
そして別の紙を取り出す
「そもそもこの術式は回復薬を作るための魔法陣です す 魔力草から効力 魔力 色 風味 この四つを抽出する公式になっています」
レオンは首を傾げた
「風味?なぜ風味がいるんだ?」
エミルは小さく笑う
「回復薬かどうか分かるようにするためです 教国では魔力草特有の風味をあえて少し残しております 飲めば回復薬だとすぐ分かりますので」
「なるほど……」
レオンは感心したように頷いた
エミルはさらに続ける
「ですが 今回は水も媒体にしております 必要なのは効力と魔力だけです 色も風味も必要ありません……ですので四つの公式ではなく効力と魔力だけを抽出する 二つの公式を使った方が効率が良いと思います
レオンは目を見開いた
「そうか……最初の魔法陣の方が魔力が濃かった理由は 余計な術式が無かったからか」
「はい その可能性は高いと思います」
レオンは机の上の魔法陣を見つめ
静かに笑った
「一人だったら 絶対に気付かなかった」
エミルも優しく微笑む
「私も レオン君だからこそ ここまで解析できたのだと思います」
二人は顔を見合わせる
そして再び机へ向かった
新しい魔法陣を描き始める
より良い回復薬を作るための研究はまだ始まったばかりだった




