第131話 天罰
翌朝 ノルディア騎士団訓練場では
騎士達が朝の訓練を終え一度休憩へ入っていた
その時 訓練場の入口から一人の老執事が静かに歩いて来る
「ゼム殿?」
ガレスが少し驚いた
ゼムは穏やかに一礼する
「おはようございます ぼっちゃまから頼まれまして 本日はリック様へ剣術をご指導させていただきます」
その瞬間リックの表情が固まった
「え?……俺ですか?」
「はい」
ゼムは優しく微笑む
リックは慌てて首を横へ振った
「いやいやいや!俺なんかゼムさんとなんて無理ですって!本当 勘弁してください!」
ガレスは苦笑する
「そこまで嫌なのか……」
リックは真剣な表情で頷いた
「当たり前じゃないですか!ゼムさんの剣って見えないんですよ!?気付いたら負けてるんです!俺まだ死にたくないです!」
訓練場から笑いが起こる
「ははは!」
「また始まった!」
「リックらしいな!」
エルンも呆れたようにため息を吐いた
「お前はもう少し根性を付けろ」
ゼムは穏やかに口を開く
「安心してください 本日はぼっちゃまから理由も伺っておりますので」
リックは首を傾げた
「理由?」
ガレスも不思議そうにゼムを見る
「若様が?」
ゼムは静かに頷いた
「昨日……ぼっちゃまとエミル様がお二人で街を歩かれました その際 最後に恋人同士が泊まる宿をご案内されたそうです」
訓練場が静まり返る
リックは数秒固まった
「……あ」
昨日の出来事を思い出す
ガレスはゆっくりとリックを見る
「リック……お前まさか……」
リックは冷や汗を流しながら笑った
「いやぁ……最後の宿だけは余計でしたかね」
ガレスは額へ手を当てた
「余計どころではない…ゼム殿 私も参加してよろしいでしょうか?」
ゼムは一礼した
「もちろんでございます ぼっちゃまも その方が良いだろうと仰っておりました」
リックは一歩後ろへ下がる
「待ってください!悪気は無かったんです!……エミルさんが……どこへ連れて行く予定だったんですかって聞くから!」
リックの顔から血の気が引く
「俺……てっきり俺とのデートの予習をしてるんだと思って!」
訓練場が静まり返る
数秒後 騎士達が一斉に吹き出した
「ぶっ!」
「はははは!」
「勘違いだったのか!」
「お前本当に馬鹿だな!」
エルンは腹を抱えて笑った
「リックらしい」
ガレスも堪え切れず笑う
「なるほどそれなら仕方ない……」
リックは安堵した
「ですよね!?許してくれますよね!?」
ガレスは木剣を手に取る
「勘違いは仕方ない…………だが 若様を恋人用の宿へ案内した事実は変わらん」
リックの笑顔が消えた
「……え」
ゼムも静かに木剣を構える
「それでは始めましょう」
「ちょっと待ってください!話が違います!」
ガレスは豪快に笑う
「来い!」
ガンッ!!
「ぎゃああああ!」
ガンッ!!
「痛い!」
ガンッ!!
「ゼムさん速い!ヤメテ!」
ガンッ!!
「団長!……待って!……二人同時は反則ですぅぅぅ!」
その日 リックの悲鳴は夕方まで訓練場中へ響き渡ったという




