第128話 木漏れ日亭
夕焼けに染まる宿場町
レオンとエミルは並んで歩いていた
やがて一軒のレストランの前で足を止める
「ここです」
レオンが微笑む
店の看板には
【木漏れ日亭】
と書かれていた
「こちらが……」
「宿場町で一番人気のお店です」
「楽しみです」
エミルも小さく微笑む
レオンが扉を開ける
「こんばんは」
店内は夕食時ということもあり
多くの客で賑わっていた
「いらっしゃいませ!」
店員の元気な声が響く
その直後
「あ!レオン様!」
店員が笑顔になる
奥から店主も姿を現した
「レオン様!いらっしゃいませ!今日はクロエちゃんとは一緒じゃないんですね」
レオンは笑って頷く
「ああ 今日は教国から来られているお客様をご案内してるんだ」
店主はエミルへ視線を向ける
「これは失礼しました……ようこそ木漏れ日亭へ」
エミルは丁寧に一礼した
「本日はよろしくお願いいたします」
店主は笑顔で頷く
「こちらこそ!いつもの席が空いております!どうぞこちらへ!」
二人は窓際の席へ案内された
窓の外には夕焼けに染まる宿場町が広がっている
エミルは静かに周囲を見回した
「とても落ち着くお店ですね」
「料理も美味しいですよ」
レオンはメニューを開く
「ボア肉料理が名物なんです」
「リックさんも仰っていました ですので楽しみにしていました」
レオンは少し笑う
「では おすすめを頼みましょうか」
「はい」
店員が注文を取りに来る
「ご注文はお決まりですか?」
「香草焼きボアステーキを二つ頼むよ」
「かしこまりました!」
店員は笑顔で厨房へ向かった
料理が出来るまで穏やかな時間が流れる
エミルは窓の外を眺めながら口を開いた
「今日は本当にありがとうございました」
「いえ」
「僕も久しぶりに街をゆっくり歩けました」
レオンは穏やかに笑う
「最近は忙しくて街を歩く機会も減っていましたから」
エミルも微笑んだ
「ですが市場でも焼き菓子店でも皆さん本当に嬉しそうでした……レオン様はとても慕われていらっしゃるのですね」
レオンは照れたように笑う
「辺境だから距離が近いだけですよ」
エミルは静かに首を横へ振った
「それは違うと思います 慕われていなければあのような笑顔にはなりません」
レオンは少し困ったように笑った
「そう言われると照れますね」
その時 料理が運ばれてきた
香ばしい香りが店内へ広がる
こんがりと焼かれたボア肉
彩り豊かな野菜
焼き立てのパン
「お待たせしました!香草焼きボアステーキです!」
「美味しそうですね」
エミルは目を輝かせた
レオンも頷く
「冷める前に食べましょう」
「はい」
レオンはナイフとフォークを手に取る
一方 エミルは両手を胸の前で静かに組み小さく目を閉じた
今日も無事に食事を頂けることへ感謝し
静かに祈りを捧げる
数秒後 ゆっくりと目を開いた
ナイフとフォークを手に取り一口大に切り分ける
姿勢を崩さず 音一つ立てることなく口へ運ぶ
その所作は思わず見惚れてしまうほど美しかった
「……美味しいです」
思わず笑みがこぼれる
レオンも嬉しそうに笑った
「でしょう?宿場町で一番人気の店ですから」
エミルはもう一口食べる
「今日一日でノルディアがもっと好きになりました」
その言葉にレオンも穏やかに微笑んだ
「それは良かったです」




