第127話 花咲く丘
市場を歩き
焼き菓子店へ立ち寄り
雑貨屋を見て回る
レオンとエミルは他愛もない話をしながら街を歩いていた
気付けば日は大きく傾いていた
二人は宿場町の公園へやって来る
夕焼けに染まる公園
遊んでいた子供達も少しずつ家路へ着き
ベンチでは夫婦や老人達が穏やかに談笑していた
どこかゆったりとした時間が流れている
「良い場所ですね」
エミルが静かに呟く
「領民の憩いの場です 皆仕事の合間によく来ます」
レオンも穏やかに答えた
二人はゆっくりと公園の中を歩く
やがてエミルの足が止まった
視線の先には一つの丘
夕日に照らされた丘一面が無数の花で埋め尽くされている
「綺麗ですね……」
思わず見惚れる
夕風が吹くたび花々が優しく揺れ
まるで黄金色の絵画のようだった
「ええ」
レオンも静かに丘を見つめる
「あそこには父上が眠っています」
「グラニウス様ですか?」
「はい」
レオンは小さく頷いた
「父上が亡くなってから 領民の皆が毎日のように花を供えてくれて 気付けばあんな景色になっていました」
エミルは驚いたように丘を見る
「あの花は……」
「全部献花です」
レオンは少しだけ微笑んだ
「最初は数本だけだったんですが 毎日誰かが花を供えてくれて少しずつ増えていって……今では丘全体が花で埋め尽くされました」
エミルは静かに目を細める
「本当に……皆さんに慕われていたのですね」
少し間を置いて続けた
「教国でも北の戦神 グラニウス様のお名前は有名でした 【敵国である帝国の兵まで助けた英雄】そう伺っております」
エミルは少し間を置いて話を続けた
「名実共に慕われた方だったのですね」
レオンは少し驚いた表情を浮かべた
「帝国を……ですか?」
「はい」
エミルは静かに頷く
「帝国軍が魔物討伐の際 討伐隊が魔物に押されノルディア領まで流れてしまったそうです 当時は戦争も終わっていましたが両国の関係はまだあまり良くなかったと聞いております……それでもグラニウス様は敵味方を問わず救われたと教国では語り継がれています」
レオンは花で埋め尽くされた丘へ視線を向けた
「知りませんでした……父上は自分の武勇を語るのがあまり好きではない性格だったので」
エミルは穏やかに微笑む
「レオン様と似ていらっしゃいますね」
レオンは少し照れたように笑った
「そうでしょうか?」
「はい……きっとそういうところも受け継がれたのでしょうね」
穏やかな風が吹き抜ける
夕日に照らされた献花が静かに揺れていた
その時 近くのベンチへ座っていた若い男女が笑い合う声が聞こえた
手を繋ぎ楽しそうに話している
公園には そんな恋人達の姿が何組もあった
エミルはその光景を眺め
小さく微笑む
(お似合い……)
市場で言われた言葉を思い出す
自然と頬が少し熱くなった
レオンは空を見上げる
いつの間にか空は茜色へ染まっていた
「もう夕方ですね」
「そうですね」
エミルも夕焼け空を見上げる
「ではそろそろ夕食にしましょうか」
「はい」
エミルは嬉しそうに頷いた
二人は公園を後にし
宿場町で人気のレストラン『木漏れ日亭』へ向かって歩き始めた




