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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第5章 白銀の聖剣と秘薬
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第117話 抗う事の理由

夜明け前 ノルディア城訓練場

静かな訓練場へ木剣を振る音だけが響いていた

音の出処はレオンだった

毎朝 ゼムやガレスが稽古を付けてくれるわけではない

ゼムには執事としての仕事がある

ガレスも騎士団長として騎士団の指揮 訓練 討伐隊の編成など多くの仕事を抱えている

だからこそ 一人で鍛える日も少なくなかった

レオンは黙々と木剣を振るう

父グラニウスから教わった王国式剣術

帝国第二皇子ルーカスから学んだ帝国式剣術

二つの剣術を反復し身体へ染み込ませていく

やがて鍛錬を終え静かに息を整えた


「今日はお一人なのですね」


穏やかな声が聞こえた

レオンが振り返るとそこにはエミルが立っていた


「エミルさんおはようございます」


「おはようございますレオン様」


エミルは木剣へ目を向ける


「いつもはゼムさんやガレスさんが稽古を付けておられましたので 今日はお一人なのかと思いまして」


レオンは苦笑した


「毎日相手をしてもらっている訳ではありませんよ ゼムには執事としての仕事がありますしガレスも騎士団長です 騎士団の指揮や訓練それに討伐隊の編成など仕事があります」


レオンは布で汗を拭った


「だから一人で鍛える日もあります」


エミルは静かに頷く


「責任ある立場ですものね」


少しの沈黙が流れる

朝の冷たい風が吹き抜ける

やがてエミルが口を開いた


「レオン様……もしよろしければ私と一本お願い出来ますでしょうか?」


レオンは少し驚く


「エミルさんとですか?」


「はい 監査だけでは分からないこともございますので」


レオンは笑みを浮かべた


「分かりました よろしくお願いします」


エミルは一礼する


「ありがとうございます それでは 今回は王国式でお願いいたします」


レオンは頷く


「身体強化なしですね」


「はい」


「純粋な剣技だけでお願いいたします」


「承知しました」


二人は距離を取る

木剣を構えた

静かな空気が流れる

エミルは小さく一礼する


「それでは 行きます!」


その言葉と同時にレオンが踏み込んだ


鋭い一撃をエミルは受け流す

すぐさま斬り返すがレオンは木剣で受け止め半歩だけ下がる

乾いた音が訓練場へ響いた

レオンは再び踏み込む

父グラニウスから教わった王国式剣術

無駄のない剣筋 流れるような連撃

一撃

二撃

三撃

守勢だったエミルは僅かな隙を見つけ踏み込み鋭い突きを放つ

だがレオンは身体を半身にずらし木剣を滑らせるように受け流す

そのまま手首を返した

カンッと木剣が弾かれる


「っ!」


エミルの体勢が崩れる

その瞬間レオンの木剣がエミルの喉元で静かに止まった

勝負ありだった

レオンはすぐに木剣を下ろす


「ありがとうございました」


エミルも木剣を納め深く一礼した


「ありがとうございました 流石でございます純粋な剣技では私の負けです」


レオンは首を横へ振る


「ギリギリでした エミルさんも強かったです」


エミルは静かに微笑む


「レオン様 一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「何でしょうか?」


「何故……そこまで抗うのですか?」


その問いにレオンは言葉を失った

心臓が大きく脈打つ


(まさか……転生者だと気付かれた……?)


前世の知識

未来を知っているからこその行動

普通の十五歳では到底できない改革の数々

そんな考えが頭をよぎる

静かな沈黙が流れ朝の風だけが二人の間を吹き抜けていく

やがてエミルは静かに続けた


「剣技の鍛錬 魔法の鍛錬 ポーションの研究 領主としての政務 まだ十五歳にもかかわらず 何故そこまでご自分を追い込まれるのですか?」


その言葉を聞いた瞬間レオンは心の中で安堵した


(そういう事か……)


転生者であることを疑われた訳ではない

純粋に自分の生き方を不思議に思っていただけだった

レオンは小さく息を吐きそして静かに口を開いた


「結果が全てだからです」


エミルは黙って耳を傾ける


「どれだけ努力しても どれだけ苦労があっても 救いたい人を救えなかったら 意味が無いんです」


レオンは木剣を見つめた


「結果は どうしても変わりません だから助けられる命は助けたい 守れる人は守りたい そのためならどんな事だってやります……今度こそ結果を変えるために」


エミルは静かに目を閉じた

その言葉に偽りはなかった

やがて ゆっくりと目を開く


「ありがとうございます レオン様のお気持ちよく分かりました」


少しだけ微笑む


「私も お話ししなければならないことがあります」


レオンは不思議そうに首を傾げた


「お話ですか?」


エミルは静かに頷く


「はい……ですが…少し長くなりそうです」


朝日が二人を照らす

エミルは決意を固めるように小さく息を吐いた。

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