第114話 監査の終了
翌日エミルは最後の資料へ目を通していた
机の上には契約書 運送計画 栽培記録 製造管理表 収支予定表 と これまで確認してきた資料が整然と並べられている
執務室には紙をめくる音だけが響いていた
レオンも
クロエも
ゼムも
誰も口を開かない
監査の邪魔をしないためだった
やがて最後の一枚を読み終えたエミルは静かに資料を閉じた
「確認が終わりました」
レオンが姿勢を正す
「いかがでしょうか?」
エミルは三人を見渡した
そして穏やかに微笑む
「現時点では問題ございません」
その一言に執務室の空気が少し和らいだ
クロエもほっと息を吐く
「良かったぁ……」
レオンも小さく笑った
「ありがとうございます」
エミルは頷く
「栽培場所 製造拠点 管理体制 運送計画 どれも十分に考えられております 特に誰が管理するのか 責任の所在が明確になっている点は素晴らしいですね」
ゼムは静かに一礼した
「ありがとうございます」
「ですが……これはあくまで事業開始前の監査です 事業が始まれば 品質 収支 在庫 帳簿 全て改めて確認させていただきます」
レオンは迷いなく頷いた
「もちろんです!そのために来ていただいたのですから」
その返答にエミルは少し驚いたように笑う
「監査を歓迎される領主は初めてです」
レオンは苦笑した
「隠し事がありませんから それに監査がある方が安心できます 私達では気付けないこともありますから」
エミルは静かに頷く
「ありがとうございます そのお言葉だけでもこの事業は成功すると感じました」
クロエも嬉しそうに笑った
「僕も頑張らないとね」
レオンは三人を見渡す
「では 事業開始の準備を進めましょう」
「はい」
三人が頷いた
こうして長かった事業開始前の監査は全て終了した
あとは魔力草の収穫を待つだけ
ノルディアの新たな産業はいよいよ動き始めようとしていた




