第100話 二人の案内役
「初めましてエミルです よろしくお願いいたします」
「うん!よろしく!」
クロエは笑顔で頷いた
二人は軽く一礼を交わす
そのまま自然に互いを見つめた
(綺麗な人だな……)
クロエは内心で驚く
腰まで届く赤髪
澄んだ蒼い瞳
凛とした立ち姿
いかにも騎士という雰囲気だった
一方 エミルもクロエを見つめていた
灰色の髪
自分と同じ青い瞳
幼さの残る顔立ち
商人らしい動きやすい服装
そしてレオンとの距離が近い少女
(この方がクロエさん……専属商人とは伺っていましたが思っていたよりお若いですね)
その時クロエがレオンへ向き直る
「レオン 市場の仕入れ終わったよ」
「あぁ ありがとう 何か問題はあったか?」
「ううん 今日も順調!」
「なら良かった」
レオンは安心したように笑う
その様子を見てエミルは少し驚いた
辺境伯を呼び捨て
それだけではない
レオンも自然に受け入れている
そこに上下関係による壁は感じられなかった
「クロエ ちょうど良かった エミルさんに宿場町を案内しようと思ってたんだ」
「本当?」
クロエの表情が明るくなる
「じゃあ僕も行く!商売のことなら僕が説明するよ!」
「頼んだ」
「任せて!」
クロエは胸を張った
その姿を見てエミルが口を開く
「クロエさん」
「はい?」
「先程 商人の皆様がお話しされていました 商売のことはほとんどクロエさんへ任せていると」
クロエは照れくさそうに頭を掻いた
「そんなことないよ 僕一人じゃ何もできないし…まぁ交渉は僕がやるけど運ぶのは商人さん達それに売るのも商人さん達 だから皆のお陰だよ」
エミルは静かに頷く
「ですが商売をまとめることは容易ではありません」
クロエは少しだけ笑った
「レオンが信用してくれたから僕も頑張ろうって思えたんだ」
その言葉にエミルはレオンを見る
レオンは少し照れくさそうに笑った
「クロエが頑張った結果だ 俺はきっかけを作っただけだ」
「違うよ」
クロエは首を横に振る
「レオンがいなかったら僕は今ここにいない」
一瞬だけ静かになる
エミルはそのやり取りを見つめていた
(深い信頼関係ですね)
主従という言葉だけでは表せない
互いを信頼し合う仲間
エミルはそんな印象を受けた
「それで」
クロエが明るく話題を変える
「次はどこへ行くの?」
レオンはエミルを見る
「次は宿場町をご案内しようと思っています その後は事業についても詳しく説明する予定です」
エミルは頷いた
「分かりました それでよろしくお願いいたします」
「それなら僕が案内するね!」
クロエは一歩前へ出る
「宿場町のことなら誰にも負けないから!」
レオンは苦笑する
「そうだな じゃあ頼む」
「うん!」
クロエは嬉しそうに歩き始めた
その後ろをレオンが歩く
さらにその後ろからエミルが続く
二人の背中を見つめながら
エミルは静かに思う
(仲の良い主従ですね……ですが監査役として見るべきものは人柄だけではありません……この領地の全てを見極めましょう)
白銀の聖剣は改めて心を引き締めながら二人の後を歩いた




