第97話 支える者達
解体場を後にしたレオン達は再び宿場町を歩いていた
朝の宿場町は一層賑わいを見せている
商人達が荷物を積み込み
馬車が次々と出入りしていた
エミルはその様子を見渡す
「活気がありますね」
「以前とは別の町のように成りました」
レオンは小さく笑った
「二年前まではここまでではありませんでした しかしボア肉事業が始まってから一気に変わりました」
「なるほど」
エミルは頷く
その時 一人の商人がレオンへ気付いた
「レオン様!」
「おはようございます!」
「おはよう」
「商売は順調か?」
「はい!」
「クロエさんのお陰で毎日忙しいですよ!」
その言葉に周囲の商人達も笑顔で頷く
「値段交渉は全部クロエさんですから!」
「俺達じゃ太刀打ちできません!」
「今日も朝から市場ですよ!」
「そうか」
レオンは苦笑した
「相変わらず働き過ぎだな クロエに無理はするなって伝えておいてくれ」
「分かりました!」
商人達は元気よく答えた
その様子を見ていたエミルが口を開く
「クロエさん……ですか」
「はい 私の専属商人です 商売関係はほとんど彼女に任せています」
エミルは少し驚いた
「辺境伯が商売を一任されているのですか」
「餅は餅屋です」
レオンはあっさり答える
「私は商人ではありません 商売は商人の方が詳しい だから任せています」
エミルはレオンを見る
(信用しているのですね)
商売とは利益が絡む
裏切りも少なくない
それを一人へ任せると言う事は 簡単に出来ることではない
その時 別の商人が笑いながら口を開いた
「クロエさんは凄いですよ!」
「金貨一枚も絶対に損しません!」
「逆に俺達が値切られますからね!」
周囲から笑いが起きる
レオンも思わず苦笑した
「確かにな 商売でクロエに勝てる人はそういないだろう」
商人達も大きく頷いた
「俺達も勉強になります!」
「まだまだ敵いません!」
エミルは静かにその光景を見つめる
領主
商人
領民
上下関係はある
だが互いに信頼し合っていることが伝わってきた
(珍しい領地ですね)
歩みを進めると やがて一際大きな建物が見えてきた
建物の前では大量の荷物が運び込まれている
「こちらです」
レオンが足を止める
「ボア肉を保管する倉庫になります」
「解体場とは別なのですね」
「はい」
「解体した肉は一度ここへ集めます その後は商人達が各地へ運びます」
エミルは静かに頷いた
「物流まで整備されているのですね」
「事業は作るだけでは続きません 運ぶ人 売る人 買う人 全員がいて初めて成り立ちます」
その言葉にエミルは少しだけ目を見開いた
(十五歳で……そこまで考えているのですか…)
レオンは倉庫の大きな扉へ手を掛ける
「では 中をご案内します」
重い扉がゆっくりと開いた
その瞬間 ひんやりとした冷気が外へ流れ出した
「……え?」
エミルは思わず目を見開く
倉庫の中は真夏とは思えないほど冷えていた




