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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第4章 新事業と枢機卿
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間章 慈愛の聖人 後編

倉庫の扉が勢いよく開いた

炎に包まれた男達が飛び出してくる


「クソッ!」


「誰だ!」


男達が辺りを見回した

その瞬間リニアが飛び出した


「セリオスはどこ!」


男達は驚く


「ガキだと!」


一人の男が鉄の棒を振り上げた

リニアは咄嗟に身を引く

だが二人目が横から襲い掛かる


「おい邪魔だ!」


ガンッ


鈍い音が響く

男の頭へ鉄の棒が直撃した

仲間を巻き込んだのだった


「なっ!」


隙ができる

リニアは落ちていた鉄の棒を拾い上げた


「えいっ!」


ガンッ


「ぐあっ!」


もう一人の男の頭へ振り下ろす

男はその場へ倒れ込んだ

二人とも動かない

リニアは荒く息を吐く


「セリオス!」


炎の中へ飛び込んだ

煙が視界を遮る

熱い

息が苦しい

それでも走る

奥の柱へ縄で縛られた少年が見えた


「セリオス!」


「リニア……」


リニアは急いでセリオスの縄をほどく


「立てる?」


「う、うん……」


セリオスを肩へ担ぎ出口へ向かう

その時だった

メキメキッと嫌な音が響く

燃えた柱が傾き天井が崩れ始めた


「危ない!」


リニアは咄嗟にセリオスを突き飛ばした

ドォンッと大量の瓦礫が落ちる


「リニア!」


セリオスは転がりながら叫ぶ

瓦礫の下にはリニアの姿があった


「リニア!」


セリオスは必死に瓦礫へ手を伸ばす

熱い

木が燃えている

それでも構わなかった

素手で瓦礫をどかす

手の皮が剥け血が流れる

それでも止まらない


「お願い!どいて!」


何度も何度も持ち上げる

ようやくリニアを引き出した

服は破れ全身が血だらけだった


「リニア!」


返事はない

セリオスは必死に肩へ担ぐ

炎の中を歩く

何度も転びそうになりながら外へ向かう

ようやく倉庫の外へ飛び出した

夜風が頬を撫でる

セリオスは息を切らしながら叫ぶ


「助けてください!」


「誰か!」


近くを歩いていた大人達が振り返る

だが白い髪に紅い瞳

皆その姿を見ると表情を変えた


「あの子……」


「不吉の子だ」


「関わるな」


誰も近付かない


「お願いです…………助けてください!」


何度叫んでも

誰も足を止めなかった

セリオスは震えながらリニアを抱き締める


「リニア……」


リニアはゆっくりと目を開いた


「……よかった……助かったね」


「喋っちゃ駄目だ……今助けるから!」


「もう無理よ」


リニアは小さく笑う


「そんなこと言わないで!」


涙が止まらない


「ボクのせいだ……ボクが捕まったから……」


リニアはゆっくり首を横に振った


「違うよ、セリオスは助かった…………それで十分」


少し息を整える


「そうだ…あとで……あの子にありがとうって言ってね」


「あの子?」


「昼のいじめっ子……あの子が勇気を出して教えてくれたから私は助けに来られたの……だから……ありがとうって伝えて」


セリオスは涙を流す


「どうして……どうして信じられるの?あんなに酷いことを言ってた人なのに」


リニアは優しく笑う


「人は変われるもの…でも……もし裏切られてもね悲しまなくていいの」


セリオスは黙って聞く


「私はね小さい頃…お父さんとお母さんが迎えに来てくれるって…信じてたの」


リニアは目を瞑った


「でも来なかった……孤児院へ預けられちゃった」


少し寂しそうに笑う


「それでも後悔してない」


「どうして?」


「信じた私は悪くないもの…悪いのは約束を守らなかった……大人……だからね…裏切られたら信じた自分を責めちゃ駄目人を信じられる優しい心を持ってる自分を誇るの…それって……すごく素敵なことだから」


セリオスは何度も頷く


「うん……約束する ありがとうって伝える ボク…リニアみたいになるから……」


リニアは嬉しそうに微笑んだ


「なれるよセリオスなら」


そう言ってリニアの手の力が抜けた


「リニア?」


返事はない


「リニア……?起きてよ……」


セリオスの泣き声だけが夜空へ響いた



数か月後、老神父が一枚の書類をセリオスへ差し出した


「セリオス君には回復魔法の才能があります、教国中央の学校へ行きなさい、そこで多くの命を救う力を学ぶのです」


セリオスは静かに書類を受け取る

脳裏に浮かぶのは

最後まで笑っていた少女


「ボク……行きます」


小さく拳を握る


「もう二度と大切な人を助けられずに泣きたくありません……リニアみたいに困っている人を助けられる人になります」


セリオスは教会を出る

白い雪が静かに降っていた

昔は嫌いだった雪景色

今は少しだけ違って見える

セリオスは空を見上げ、小さく微笑んだ


「見ていてねリニア、ボクは必ず誰かを助けられる人になるから」


幼い少年は一歩を踏み出す

その日から

誰よりも優しく

誰よりも多くの命を救う

後に「慈愛の聖人」と呼ばれる少年の物語が始まった

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