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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第4章 新事業と枢機卿
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間章 慈愛の聖人 前編

雪が降っていた教国西部の小さな村

教会の前へ 一つの籠が静かに置かれる

中には生まれて間もない赤ん坊

白い髪

紅い瞳

母親は震える手で赤ん坊の頬を撫でた


「ごめんなさい……」


涙が止まらない

この子を愛していた

だからこそ苦しかった

教国では白い髪と紅い瞳は不吉の象徴

周囲からは


「悪魔の子」


「災いを呼ぶ」


そう囁かれていた

このまま育てれば この子も 自分達も幸せになれない

そう言われ続けた

母親は最後に一度だけ赤ん坊を抱き締める


「どうか……幸せになって」


その言葉だけを残し

雪の中へ消えていった

やがて教会の扉が開く

一人の老神父が外へ出る


「こんな時間に……」


籠へ気付き ゆっくり近付く

中を見た瞬間 一瞬だけ目を見開いた

白い髪

紅い瞳

だが老神父は優しく微笑む


「そうですか……ここへ来ましたか」


そっと赤ん坊を抱き上げる


「安心しなさい 今日からここが君の家ですよ」


雪は静かに降り続けていた




それから六年

教会の孤児院で白い髪の少年は今日も一人だった

名前はセリオス

孤児院の子供達は近寄ろうとしない

教会に勉強しに来る子供達からいつも言われていた


「おい」


「化け物が来たぞ」


「白い髪だ」


「目も赤い」


「気味悪い」


笑い声が響く

セリオスは何も言い返さない

ただ俯くだけだった


「知ってるか?」


「こいつ親に捨てられたんだって」


「やっぱりな」


「こんな見た目じゃ仕方ないよ」


「ボクだってこんな子いらない」


「だから捨てられたんだ」


その言葉だけは胸へ深く突き刺さる

本当だった

父も

母も

ボクを捨てた

この姿だったから

だから皆は間違っていない

そう思ってしまう

俯いたまま歩いていると

突然 元気な声が響いた


「うるさーい!」


子供達が一斉に振り向く

栗色の短い髪の少女が腕を組んで立っていた


「リニア……」


「寄ってたかって一人をいじめるなんて恥ずかしくないの!?」


「本当のことだろ!」


少年が言い返す

リニアは少年の頭を軽く叩いた


「いたっ!」


「本当のことなら何言ってもいいの?そんなこと言われたら傷付くに決まってるでしょ!」


「でも……」


「でもじゃない!ほら!どっか行って!」


子供達は顔を見合わせる


「ちぇっ」


「行こうぜ」


悪態をつきながら去っていった

辺りが静かになる

リニアは大きく息を吐いた


「もう……弱いくせに人数だけは多いんだから」


セリオスは恐る恐る口を開く


「どうして……」


「ん?」


「どうして助けてくれたの?」


リニアは不思議そうに首を傾げる


「なんで助けるのに理由なんているの?」


セリオスは自分の白い前髪へ触れる


「ボクの容姿……嫌じゃないの?」


リニアはセリオスの顔をじっと見つめた

白い髪

紅い瞳

少し考えてから首を傾げる


「え?何が?」


「え……?」


「雪兎みたいで可愛いじゃない」


あまりにも当たり前のように笑った

その笑顔に

嘘も

同情も

気遣いもない

セリオスは目を大きく見開いた

生まれて初めてだった

自分の姿を見て可愛いと言ってくれた人は


「ボク……」


言葉が出ない

リニアはニコッと笑う


「私はリニア!」


「あなたは?」


「……セリオス」


「そっか!」


「よろしくね!」


そう言って手を差し出す

セリオスは戸惑った

自分が触れたら嫌がられる

そう思って動けない

リニアは笑ったまま言う


「大丈夫 私は逃げないよ」


震える手でその手を握る

温かかった

その温もりは

セリオスが初めて知った友達の温もりだった


それからというもの

セリオスはリニアと一緒にいることが増えた

食事も

勉強も

掃除も

気付けば隣にはいつもリニアがいた

そしてセリオスは気付く

リニアはじっとしていられない

小さな子が転べば真っ先に駆け寄る

重い荷物を運ぶシスターがいれば


「持つよ!」


と笑って手伝う

喧嘩を見つければ


「こら!」


と真っ先に止めに入る

自分より年上が相手でも関係ない

困っている人を見ると放っておけなかった


「危ないよ」


セリオスが心配して言う

するとリニアは笑う


「困ってる人がいるんだから仕方ないじゃない!」


その笑顔はいつも眩しかった

ある日も荷物を落とした老人のリンゴが坂道を転がっていく


「あっ!」


老人が困った顔をするより早く

リニアは走り出していた


「待ってて!」


転がるリンゴを夢中で拾い集める

服が汚れても

膝を擦りむいても気にしない

全部拾い終えると満面の笑みで老人へ返した


「はい!」


老人は何度も頭を下げる


「ありがとう、本当に助かったよ」


リニアは照れくさそうに笑う


「これくらい当たり前よ!」


その光景を見つめながら

セリオスは小さく呟いた


「どうしてそこまでするの?」


リニアは首を傾げる


「助かったって笑ってくれるでしょ?それだけで十分よ」


セリオスは老人の笑顔を見る

本当に嬉しそうだった

その笑顔を見たリニアも嬉しそうだった

その時セリオスは初めて思った

誰かを助けるって こんなにも素敵なことなんだと

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