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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第4章 新事業と枢機卿
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第90話 旅立ち

しばらく誰も言葉を発しなかった

風だけが静かに吹いている

セリオスは胸元へしまった賢者の秘薬へそっと触れた

そして穏やかに笑う


「本当に最後まで驚かされました」


レオンは苦笑した


「そうですか?」


「ええ」


セリオスは頷く


「普通なら秘薬など渡しません……普通なら魔力侵食症の患者へ希望を与えません……普通なら他国の人間をそこまで信じません」


そう言って小さく笑う


「ですが、レオンさんはそういう人でした」


レオンは肩を竦めた


「褒めてます?」


「褒めています」


即答だった

クロエが吹き出す


「そこは迷わないんだ」


「迷う理由がありませんから」


セリオスは笑った

それから皆を見渡す

ゼム

リック

シスター

孤児院の子供達

短い滞在だった

だが忘れられない時間だった

セリオスはシスターへ向き直る


「孤児院の事をお願いします」


シスターは深く頭を下げた


「お任せ下さい、子供達も立派に育ててみせます」


セリオスは満足そうに頷く

次にラッツを見る


「魔力草をお願いしますね」


ラッツは真剣な顔で頷いた


「はい」


「任せて下さい」


セリオスは笑顔になる

そしてリンを見る

リンは何故か胸を張っていた

嫌な予感しかしない


「リンさんもお願いしますね」


「はい!」


元気な返事だった

そして


「次に来る時までにレオン様が愛妾にしてくれなかったらお嫁さんになってあげるね!」


セリオスが固まり、クロエが吹き出す

ラッツが頭を抱え、ゼムは空を見上げた

レオンは即答した


「リン!困らせるな」


「なんで!?」


「なんでもだ」


リンは納得していなかった

だがセリオスは困ったように笑う


「それはその時に考えましょう」


「はい!」


なぜかリンは満足した

ラッツは申し訳なさそうに頭を下げる


「すみません……」


「いえ」


「元気で良いと思います」


セリオスは苦笑した

そして最後にレオンを見る


「レオンさん」


「はい」


セリオスは一歩前へ出た


「ありがとうございました」


その一言には様々な意味が込められていた

魔力草

回復薬

孤児院

賢者の秘薬

そして病を打ち明けられた事

全部だ

レオンも静かに頭を下げる


「こちらこそ」


セリオスは微笑んだ

そして馬車へ乗り込み聖騎士達も続く

御者が手綱を握った出発の時だった

セリオスは窓を開ける


「二ヶ月後にはエミルが来ます、彼女をよろしくお願いします」


レオンは頷いた


「お任せ下さい」


セリオスも頷く

そして最後にもう一度笑った


「また来ます」


レオンも小さく笑う


「お待ちしています」


御者が馬を走らせる

馬車がゆっくりと動き出した

子供達が手を振る


「ばいばーい!」


「また来てねー!」


「約束だぞー!」


セリオスも窓から手を振り返した

やがて馬車は少しずつ遠ざかっていく

教国の旗が小さくなる

そして

見えなくなった

静寂が訪れる

誰もすぐには動かなかった

レオンは馬車が消えた先を見つめる

人身売買の疑いから始まった出会いだった

だが気付けば多くの物を残していった

魔力草

回復薬

ポーション

ハイポーション

そして人との繋がり

レオンは小さく息を吐いた


「……さて」


クロエが隣に並ぶ


「帰る?」


「ああ」


やる事は山ほどある

魔力草事業

ポーション事業

二万枚の目標

そしてクラリスを救う未来

立ち止まっている暇はない

レオンは歩き出した

前を向いて次の未来へ向かう為に

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