第十三録:遺恨怨恨 三節「強襲」
堕天使との戦闘が続く、変わらず防戦一方。
僕たちの攻撃は当たらず堕天使の攻撃も当たらない。
「…そろそろ均衡を崩そうかな!」
「どうするんじゃ?」
「こうするのよ!」
ネローズは手を掲げると黒い渦が堕天使を囲む、堕天使にも魔力を見えるようにして相手の視界を塞ぐ。
方法はごく単純で堕天使は視界に収めた相手に対して不可視の壁や攻撃をする、なら視界を塞いでやればいい。
ブランカと僕は一斉に攻撃を仕掛けるも攻撃は止められた。
堕天使はこの事態を想定していたんだろう、3つの頭を使い殆ど視界を補っていた。
「いいのかい?僕を見つめていて?」
先程と同じセリフを堕天使に言ってやる、頭の一つがヤテンラを注視する警戒…ま、僕の狙いはそこじゃない。
ザシュ…右頭部の両目に斧が突き刺さる、僕の狙い通り命中した。
「!?ガッ…アァアア!!」
初めて声を上げる堕天使は混乱している、何故切られたのか。
そこで挑発も込めて種明かしをしてあげた。
「おや?目が6つもあるのに見逃したのかい?」
言葉が通じている堕天使を煽る、僕は堕天使に攻撃を仕掛ける前に斧をブーメランの様に視界外から当たる様に投擲、当然魔力の篭っていない。
そんな危険度の低いただの斧に堕天使は気が付かなかったんだろう。
煽りが効いたのか冷静さを失い四つの目が僕を恨めし気に怒気を隠しもせず睨む。
「ハハ!だから見ていていいのかい?」
再三の忠告、そんなものを聞く気はないと言わんばかりに僕に攻撃を仕掛けるも────堕天使は僕の視界から消えた。
どこに消えたのか?答えは頭上。
優しく忠告をしてあげたと言うのに、ヤテンラが鞭を絡ませていたことに気が付かなった堕天使はその驚異的な膂力で空中へ振り上げられる。
「わしの旦那様を傷つけた報いじゃ」
そのまま振り回して勢いよく地面へ叩きつけた、不可視の壁でガードしようにも叩きつけられれば一緒だ…僕とブランカは衝撃に備えて退避。
地鳴りがするほどの衝撃、地面は割れ堕天使は地にめり込む。
「レミリア、奴は生きているかい?」
「そうですわね、健在ですわ」
「えー!?ヤテンラちゃんの一撃でも!?」
ブランカが驚くのも無理はない、普通なら終わっているほどの一撃。
しかし相手は堕天使、レミリアとネローズの火力を耐えただけはある。
「魔法の解析も難航してるわ、流石は神代の技術…せめて魂に触れられればね」
ネローズは現状を伝えてくれた、確かに彼女の能力なら突破口になりうるが能力の使用に厳しい条件がありそれは────
「ネローズ、堕天使の魂はどこに?」
「…それが二つあるのよ、あの左右の頭部に宿っているわそれに主導権は右のほうね左はか弱いわ」
実質的な右頭部による支配、そうなると左頭部に宿る魂は一体だれだ?考えを巡らせているとヤテンラが戻ってくる。
「なんじゃ、手応えがありゃせんかったのう」
「ハハ!頑丈だね!」
爛れた羽を羽ばたかせ態勢を戻す堕天使。
右顔面に刺さった斧がポロリと抜け落ちる…先程とは雰囲気が違う。
「どうやら本気にさせてしまったようだね!」
「ッ!来るわよ!!」
レミリア、ネローズへ放たれ不可視の魔法を僕は斧で弾く。
…よし、感覚を掴めてきた。
「ウル!わかるの!?」
「なんとなくね!」
「キ、貴様ラノヨウナ劣等種ニ…コ、コノ'ケルビム'ガ…!!」
ケルビム…それがこの堕とされた天使の名…知恵を追求し、神の怒りふれた愚か者の一人。
随分と御大層な態度で僕たちを見下ろす。
「振り出しだけど左の頭部を狙うよ」
前衛のブランカとヤテンラに指示を出し3人で再びケルビムに向かい戦闘を再開、今度は相手も本気しかもアトミックダストの副次効果が切れた中、勘と薄い気配だけで攻撃を捌かねばならない。
だがメリットもある今度はレミリアとネローズの支援が追加される。
ケルビムは3つの頭を駆使して僕たちに狙いを定め猛攻を仕掛ける、だがこちらも3人いる一人に対して一つの頭部、本来なら3つを巧みに駆使して攻撃を仕掛けるはずが後衛の支援もあり対処されもどかしいだろう。
ケルビムは一つ失念している事がある、こちらには前衛がもう一人いることを。
「神ノ奴隷ドモガァ!!」
「それが知を司っていた者のセリフかい?哀れだね」
「減ラズ口ヲ!!」
ケルビムは右目を動かし僕から視線を外したその瞬間、斧が飛んできた。
それを避けてキャッチ、僕の手に再び戻って来た。
「ハハ!ありがとう」
「さぁ!ケルビム、君は頭ひとつだけで僕の攻撃を防げるのかい?」
この不可視の魔法は対象を見ることで発動…そして、見つめている瞳の数だけ強化され6つ全てなら槍の最大火力と言っていい突撃を防ぐほど。
しかし今は見ての通り、ブランカは真ん中、ヤテンラは左、僕は右の頭部の相手をしている、そんな本来の三分の一の出力で斧を防げるはずがない──パリィ…紫電が斧を覆う。
そして、雷撃と共にケルビムへ振り下ろす。
受け切れないと判断したケルビムは僕の斧を逸らす事に注力する。
「ッ!!」
「ハハ!いつまで持つかな!」




