第十三録:遺恨怨恨 一節「もう一人の落とし子」
ドサッ……ネフィリムの遺体が地面に横たわり動かず再生もしない、その様子を見て戦闘が終わり同時に勝利が告げられる。
「疲れたー!」
「この様な戦いは久方ぶりですわね」
「ま、私たちにかかればこんなもんよね」
「ハハ!みんな怪我はないかい?」
ウルは仲間である皆に問いかけそれぞれ怪我はないことを伝える、敵がいなくなり俺たちは合流したのだが……。
「これで依頼は完了か」
「だね!あとはギルドへ─」
「待つんじゃ」
夜天羅が辺りを警戒している、彼女は深く周囲の様子を探りその様子に俺は刀に手をかけた。
レミリア、ネローズも辺りを警戒し探知を始める。
「…!こちらへ猛スピードで何かやってきますわ!」
「いや!そんな!?この魔力は…!!」
森から弾丸の様にこちらへ一直線、突進してきたそれは────ネフィリム。
驚きつつも全員が突進を回避、まさかの二体目にウルと顔を見合わせた。
「ハハ!まさかだね!史上初じゃないか?2体もネフィリムがいたなんてさ!」
軽口を叩きつつも全員が臨戦態勢んあり武器を構えて二体目はネフィリムと対峙、ウルが仕留めたネフィリムと形状が変わっていた…両腕が刃物の様に尖っており羽は虫のトンボを模した形で触手はなく下半身は二股に分かれていた。
「依頼料は上乗せだな」
「ハハ!ごもっともだね!」
イレギュラーな事態に俺と夜天羅も戦いに参加、ネフィリムを見据える…だが異常なことが起こり全員が驚愕する。
「はっ!?」
「これは…美しくないね」
ネフィリムは俺たちには目もくれずに一心不乱に一体目の遺体を貪り食い始めた、その悍ましい光景に全員が絶句…グチャグチャと血の滴る生の肉を咀嚼する不快音が響く。
眼前の光景に固まっていたがハッと何かを思い出したネローズは声を張り上げた。
「…っ!!ヤツを止めて!!」
声を聞き前衛である俺、ウル、ブランカは一斉に動き出しネフィリムを遺体から引き離す事を最優先にして連携を取る、まずはウルが突撃。
ネフィリムを深く抉り取るが両腕を地面に深く突き立て離れない様に抵抗。
俺は肩近くの腕を斬るも一刀両断とはいかなかった、ブランカもハンマーで叩くも動かない。
ダメージは入っているしかし全力で防御に徹している、攻撃を続ければ勝てはするだろう…問題はネローズの語った噂、"ネフィリム同士で融合するとか"それが目の前で現実味を帯び始めた。
是が非でもその場を離れようとせず俺たちという敵が攻撃をしても捕食をやめない、ネフィリムにとってこの捕食は何よりも優先されること。
その時、夜天羅の矢がネフィリムの顎にヒットし下顎が弾け飛び捕食が出来なくなる…チャンスだ、再生する前に叩く、俺たちは一斉に仕掛け斬り、叩き、貫く。
レミリア、ネローズの後衛組も援護射撃の準備を急ぎながらネフィリムの動きに注意を払うもまた予想外の行動。
突然、ネフィリムは自身の腹を裂き出した。全員が混乱した、思いもよらない自傷行動。
一体目のネフィリムならしなかった行動を何の躊躇いもなく行う…ネフィリムは遺体を巻き込んで前のめりに倒れた。
異常な行動の連続に足が止まる、次に何をしてくるのか予想すら立てることができない。
「集中砲撃魔術"インフェルノレイ"」
「アマリリス遺本、断章"アトミックダスト"」
魔術の準備が整った二人は容赦なく魔術を浴びる、レミリアはネフィリムの頭上から熱線を浴びせその後すぐにネローズは黒い球体をぶつけた、爆発と爆音二人の魔術により土埃が巻き起こる。
恐らく二人の高火力魔術、それを受けたネフィリムは──
「ハハ!よくないことが起こってるね!」
「…油断はなさらないで、まだ生きていますわ」
「あれでか!?」
「驚異的じゃな」
土埃が晴れ姿が顕になる。
ネフィリムは前のめりに倒れたまま焼かれズタズタにされてもはや生物か炭か判断がつかない、明らかに炭化して所々赤熱している…普通の生物なら生きているはずがない。
パキ…パキパキッ
軽い何かが剥がれ落ちる音が聞こえた、その音源はネフィリムの方からで全員が臨戦態勢を取り俺たちは静かに様子を伺う。
ウルとブランカ、二人に視線を送り武器を構え三人でネフィリムに近づく…音はしているが具体的な動きはないが気味が悪い、ただ体が炭化して崩れているだけなら納得できる。
しかしネフィリムは生きている、刀を握る手に力が入る──バギィッ!!一際大きな音がしてネフィリムの背中が裂けた。
「まさか…羽化をしようとしているのか?」
「その様だね」
なら俺たちの行動は決まっている、ウルはその場で構え俺とブランカはネフィリムに向かい走った。
裂けた背中から中身がゆっくりと起き上がり始めるが本格的に動き出す前に強襲をかけて叩く。
先に仕掛けたのはブランカ。
ネフィリムにハンマーを叩き込んだ、しかし──
ハンマーは当たる直前に止まった…いや止められた、恐らくネフィリムの未知の力で。
「え!?」
「ブランカ!退避しなさい!」
レミリアが声をあげた、その直後────
「うわ!!」
謎の力がブランカを俺たちの方向へ飛ばした、かなりの勢いがありブランカは受け身がとれない。
俺は近くにいたこともありすぐさま支援に向かう。
「ブランカ!」
「俺に任せろ!ウルはそのままやつを仕留めとくれ!」
「ッ!!…頼んだよ!!」
構えを解こうとしたウルを静止して俺は刀を納刀、ブランカを受け止めた、が────
「ッ!クソ!?」
確かに受け止めた、しかし勢いが止まらない踏ん張って減速をするも地面が抉れ続ける。
ついには足が地面から離れて俺も一緒に吹き飛ばされてしまう。




