第十二録:仲間 五節「ネフィリム」
煙を上げながら飛び出してきた物体。
その巨体は生物と呼ぶにはあまりにもチグハグだった上半身は人、肌は青白く生気はない。
人に似た、頭部と呼べる部分の目からは枝の様なツノが生え背中からは指を模した膜も羽もない翼が生えていた…下半身は無く芋虫を様な異形生物としての統一感がないあまりに不健全な形。
ネフィリムは苦しみながら奇声を上げてウルが見えていないのか一心不乱に前へ前進する。
衝突しそうになるも紫電を纏ったウルの突撃に阻まれネフィリムの右腕が吹き飛んだ。
断末魔、そう呼ぶに相応しい金切り声。
「ハハ!なかなかどうして!狙いが逸らされてしまったね!」
危険を察知したネフィリムは蛇の様にうねりかなりの速さで駆けずり木々の隙間を逃げ回る、それを確認した俺は木から降りて追いかける。
同じくウルとブランカも走り夜天羅は木々を飛びレミリア、ネローズは引き続き飛んで空中から追う、ネフィリムは再生させたであろう触手を振り回して牽制をする。
再生速度が速い、夜天羅の矢が当たり触手がちぎれるも即座に再生。
「…隙をつくりましょうか、ネローズ!」
「はいはい」
名を呼ばれたネローズは空中に手をかざすと虚空から一冊の黒い書物を取り出して開かれた書物に手をかざす。
「アマリリス遺本、序章”ペタル”」
「イグニッションフレア」
一言つぶやいた瞬間、全ての触手が細切れになったと同時にレミリアは杖を向けると炎が触手を根本から焼く。
上手い!傷口から再生するはずの触手その傷口を焼いて塞ぎ再生を阻害した。
「僕の出番だね!!」
まさに迅雷一閃、ウルはトップスピードになりネフィリムの横に躍り出た。
速度はそのままに直角にネフィリムに向かい突撃を繰り出し見事に横っ腹に命中、吹っ飛んでいく。
「ハハ!硬いね!」
「いっくよー!!」
不幸な事に…いやウルが意図して飛ばした場所には武器を構えたブランカが待ち伏せの様にそこにいた、彼女は小柄な身体に似つかわしくない巨大なハンマーを振り上げ地を強く踏み締め力を効率よく伝播そして全力で振りぬくと肉が鉄と激突する乾いた音が響く。
「かったーい!?」
ピンボールの様に跳ねて吹っ飛び木々を破壊しながら森の外へ強制的に排出され全員ネフィリムを追い草原に出る。
ウルたちの猛攻を喰らい流石に動くのもやっとの様子、しかし徐々に再生をしてる…やはり核を叩かないと倒せない。
「さすがはネフィリム…一等級でも上位の魔物なだけはありますわ」
「並の一等級ならもう終わってるはずよね」
「そこは堕天使の落し子と呼ばれるだけはあるね!」
恨めしげな視線をこちらへ向けるネフィリムは自分の命の危機を感じている…それには同情しようしかしだ、コイツらは確実に街に害を及ぼすそれに事前調査ですでに何人か犠牲になっている。
肉花を植えられて帰らぬ人に…。
「俺も手伝うか?」
「いや!今回は僕らに任せてもらおう!」
ウルは笑顔を俺と夜天羅向けて制止した。
確かに、今回の依頼は彼らの実力を見るのがメインだ俺は刀を鞘に納刀して夜天羅と共に下がる。
今までの攻防でウルたちが強い事は十二分にわかったが彼らは最後までやりきりたいんだろう。
ウルたちは敵であるネフィリムへ向き直る、この短時間でほとんどダメージは回復していた互いに臨戦体制。先に動いたのはネフィリム、新しく生やした右腕をウルたちの向かい振り下ろす。
「跳ね返すよー!」
ブランカが下からハンマーを振り上げ衝突する腕と鉄、宣言通りネフィリムの腕はひしゃげて跳ね返され間髪入れず触手を使い攻撃手段を変える。
「三章"ヴァリアブルニードル"」
ネローズの静かな声が響く、ウルたちに襲いかかってきた触手は現れた黒い棘に全て拘束された焦るネフィリムだが拘束を解くには自分で触手を引きちぎらねばならない。
その刹那の迷いが自身を窮地に追い込む。
「アッシュバインド…貴方はもう動けませんわ」
降り積もる魔力の白灰がネフィリムを覆い地面へ縛り付ける…レミリアとネローズによる二重の拘束。
身動きが取れないネフィリムは焦り暴れる、なぜなら──
「次は外しはしないよ」
ネフィリムと向き合ってからずっと静かに構え紫電をほとばしらせて集中していたウルがいる、その手に携えた槍は発光しバチバチと稲妻を纏っていた。
パリッ…小さな雷が爆ぜた瞬間、ウルが消える。
「速い!」
思わず声が出た、俺の目では追えないほどの速度そして遅れて雷轟が響き渡りネフィリムに視線を向けると上半身が消えていた…彼らの見事な連携によりネフィリムは討伐。




